ふたりの窓の外 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
火葬場で出会った男と女の、一年間の物語。 事故死した恋人の葬儀に浮気相手が乗り込んでくる、って。もうそれだけで人生のすべての不幸カード全て出しでしょう。 抜け出した喫煙所で出会った、不仲な父親の火葬中の男性となぜかお互いの境遇を語り合ってしまう、という日常ではちょっとお目にかかれないような始まり。 絶対に重なることのなかった二人の時間がひょんなことから交わり、そしてこれまた不思議な縁で三か月ごとに旅に出ることになるという。 真面目で、多分世間知らずな藤間さんと、売れない役者の鳴宮くんの、目的のない、世間というリアルから少し外れた旅がとてもとても心地よい。 お互いにお互いのことを全く知らないのに、なのに最悪の状況だけは共有してしまった始まりだから、心の鎧を脱いで自分のままでいられる時間だったのだろう。 社会という枠の、対角線上にいるような二人の距離が、少しずつ、少しずつ近づいていく。 臆病で、弱くて、だけどまっすぐな二人。ひとりで生きていく道を探していて、二人で生きていく道を見つけてしまった。 大声で「面白いから読んで読んで!!」と騒ぎたくはない。ひっそりとこっそりと自分の宝物として大切な人に手渡したい。そんな一冊。
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とっても良かった……。余韻で泣きそう。刹那的で透きとおっているのに、嗅覚や触覚、体温がリアルに立ちのぼってくる深沢先生の文章が好き。
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『なんにでも付き合うし、この微妙な関係のままでもかまわないから。あなたはどうか、ひとりでどこまでも遠くに行ける人間にはならないでくれ。』 ネモフィラの目を奪われる青さや、うるさい蝉の声、秋の静かな海、雪の冷たさ。車の中のマックの匂いまで伝わってきた。 この本を開くと四季折々の情...
『なんにでも付き合うし、この微妙な関係のままでもかまわないから。あなたはどうか、ひとりでどこまでも遠くに行ける人間にはならないでくれ。』 ネモフィラの目を奪われる青さや、うるさい蝉の声、秋の静かな海、雪の冷たさ。車の中のマックの匂いまで伝わってきた。 この本を開くと四季折々の情景や雰囲気を感じて、自分も2人と一緒に季節を巡っているような気持ちになれる。 四季の移り変わりと共に2人の気持ちも変わっていく様子が読んでいて心地よかったし、ずっとこの物語に浸っていたいという気持ちになった。
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