宝石の国(特装版)(13) の商品レビュー
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フォスフォフィライトは本当に幸せだったのだろうか。それだけが読者の、私の問い。 役割を持たなかった宝石が、奔走し、誰が為に戦い、結局を何を得られたのか。彼は利用されただけだったのではないか。 宝石たちが月でありのままに生きていた間、地上では1万年もの時を1人でじっと待つフォスフォフィライト。最期に月人たち、かつての宝石たちは彼に祈りを乞う。誰かの為になりたかった彼は、誰かの為になれたのだと思う。けれど、誰かに愛されたかっただけと気付いた彼は本当に幸せだったのだろうか。 人間がいなくなった地上には、純粋な知的生命体の石が生まれる。彼らと日々を過ごし、人間を語る神となったフォスは純粋な生を楽しんでいるように見えた。かつて人間を反故にしたコンピュータと出会い、まだ自分の中に人間が住まうことを恐れた彼は破滅する星に残ることを選ぶ。それでも、純粋に生きたかったフォスフォフィライト本体を連れ出したコンピュータは楽園へと辿り着く。そこではフォスをはじめとする石たちが、原初の動植物たちと優しい時間を過ごす。そしていつかコンピュータは息絶え、コツンと石に当たり砕けた彼の破片はどこかの星にいる孤独な石を照らす。 孤独だった彼は幸せになれたのだろうか、誰かが彼のために想い祈ってくれたのだろうか。
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『宝石の国』完結巻。 ページを開いてすぐ、すかすかになってしまった登場人物紹介コーナーの空白が悲しい、と思ったけれど、読み始めてみると予想とは違い、呆れるほど穏やかで美しい最終巻だった。 神となったフォスは、人間の影響が宇宙に残ることを忌避しているけれど、「人間を内包していない」生命体への愛と期待は、言い換えるなら自意識の「かる」さへの憧れとも読める。今巻の冒頭で、フォスが初めて自らの持っていた望み(「誰からも愛されたい」)を自覚するけれど、数十億年スパンの物語であり、数々の死闘と決別、絶望を繰り返したハードな物語でありながらも、結局、フォス自身はシンプルに自意識に苦しめられてきたキャラクターであると言えるのかもしれない。 他者や他者からの評価を求める欲望、その「重さ」から離れたい、というのが主題と言えば、随分こじんまりとした話だけれど、そう読めるとしたならば、岩石生命体たちの会話でしめられる最後はすっきりと爽やかで軽やかな読み心地だった。 特装版の詩集、『無機物の意思受容』も発想が本編とリンクしていて面白い。ただ、最終ページの水色の石は誰なのだろう。単にひとつだけ色味のある石があったというだけなのかもしれないけれど、フォスの欠片が話した言葉だとしたらいいな、とそんなふうに思わされる。
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あまりに永い歳月を紡いだ物語。 この最終巻が最も今の人間が描かれていたのではと思ったりしたけど、ホントにそうなのかは分からない。フォスの最期を見届けることができて良かった。
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