生成AI社会 の商品レビュー
タイトルは「生成AI社会」ですが、書かれている内容は、生成AI時代における創造性、倫理、という内容に絞られていました。前半では創造性とは何かということや、人間と機械の違いについて議論がなされていますが、人間と機械の違いについては、西垣通氏の主張をなぞっている印象を受けたのと、創造...
タイトルは「生成AI社会」ですが、書かれている内容は、生成AI時代における創造性、倫理、という内容に絞られていました。前半では創造性とは何かということや、人間と機械の違いについて議論がなされていますが、人間と機械の違いについては、西垣通氏の主張をなぞっている印象を受けたのと、創造性についてもマーガレット・ボーデンの3分類など、どこかで聞いたことがある話でした。 後半はAIと倫理という話ですが、生成AIがうみだす倫理的な問題と、それへの対処としてのAIガイドラインなど国内外での取り組みの紹介が中心と感じました。これはこれで現在地を理解するには役立ちましたが、正直議論が浅い印象はうけました。創造性とは本質的に倫理と緊張関係を持つものではないでしょうか。歴史を振り返ると、創造的なアイデアは、当時の価値観や規範を揺さぶるものも多かったと思います。そして倫理を変えていったと。つまり、(足元の)倫理の範疇で創造性を発揮せよ、という話ではなく、創造性が倫理を変えるという可能性も十分あり得ると思うのですが、本書はどちらかというと現在の倫理観の範疇で創造性を発揮させることを重視しているように見受けられました。ということで本書はやや守り的な印象を持ちました。 例えば、イーロン・マスクのような、倫理やルールをある意味無視してしまうようなところからも、創造性が発揮されているというのは厳然たる事実でしょう。むしろルールを破壊するほうがより創造的と言えます。創造性とは(よくもわるくも)破壊的な力を持っているのだ、ということです。そのあたりの緊張感について論じてもらいたかったです。
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