虚の伽藍 の商品レビュー
バブル前から時代は始まる。地方の貧乏寺出身で、経律大を出て燈念寺派の宗務を司る総局部門に入った僧侶、志型凌玄。そこで仏の道を正すつもりでどんどん政治的な力に巻き込まれ(自らはまり)、力をつけていく。 京都の再開発と宗派とヤクザと、経済と。 読み心地の良い本ではないです。きっと書き...
バブル前から時代は始まる。地方の貧乏寺出身で、経律大を出て燈念寺派の宗務を司る総局部門に入った僧侶、志型凌玄。そこで仏の道を正すつもりでどんどん政治的な力に巻き込まれ(自らはまり)、力をつけていく。 京都の再開発と宗派とヤクザと、経済と。 読み心地の良い本ではないです。きっと書きたくて書けなかった闇がこの本の裏にも広がっているんだろうな~という内容。とても美味しいご飯に毎回砂を噛んでいるような不快感。 殺しの場面も多く、高校以上向け。
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第172回直木賞候補作。 月村了衛らしい、ドロドロした闇社会の戦いが描かれています。 1000年の歴史を誇る京都という土地柄と、伝統仏教のもつしがらみが混ざり合い、スリル満点の物語です。主人公の僧侶が自らの理想を追い求めて清濁併せ呑むうちに、次第に毒されてゆく様子も迫力があります...
第172回直木賞候補作。 月村了衛らしい、ドロドロした闇社会の戦いが描かれています。 1000年の歴史を誇る京都という土地柄と、伝統仏教のもつしがらみが混ざり合い、スリル満点の物語です。主人公の僧侶が自らの理想を追い求めて清濁併せ呑むうちに、次第に毒されてゆく様子も迫力があります。 「地面師たち」や「半沢直樹」シリーズが好きな人は文句なしで楽しめる作品だと思います。 現代社会の「権力」を追い求めた先に掴んだ無常観といい、手段が目的化したことによる空疎な達成感といい、決してハッピーエンドではありませんが充実した読者体験でした。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
172回直木賞候補 R6 坊主、フィクサー、ヤクザ この都には人間の欲望を喰らう鬼が棲む 救いなき世の本質を穿つ暗黒の社会派きょへん バブル期から崩壊後の京都を舞台とした若き僧侶、凌玄ののし上がりストーリー スピード感あってワクワク読み進められた 半暮刻の作者 面白かった 5じゃないのは、純粋なエンタメでメッセージ性ないから
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独特な雰囲気を作り出しつつ、最初から大きくキャラが変わっているようで変わっていない不気味でありながらも不思議な説得力に引き込まれた。
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バブル期の京都を舞台にひとりの若き僧侶が、正義を信念として不正に気づき正そうとしていたが、上の力では適うはずもなく… 手を貸してくれたのがヤクザであったが為に、どう転がったのか次第に利用することにより徐々に力をつけていく。 もはや地位を築く為には生温いことなどやっておれず…といつ...
バブル期の京都を舞台にひとりの若き僧侶が、正義を信念として不正に気づき正そうとしていたが、上の力では適うはずもなく… 手を貸してくれたのがヤクザであったが為に、どう転がったのか次第に利用することにより徐々に力をつけていく。 もはや地位を築く為には生温いことなどやっておれず…といつのまにか悪に塗れきってしまう。 汚れた金がどこから湧いてきてどの場面で使うのか、とまるで政治の裏側を見たくないのに見せられたような嫌な気分になりつつ、見届けたい一心でページを捲る手は止まらない。 暗部を隠しているようでいながら想像できる描写に凄さを感じた。 ここは京都だろう⁇と目を塞ぎたい気持ちにもなる。 変わるのは都だけではなく鬼が棲みついた人なのか…と。
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バブル前からの京都が舞台なのに平安時代からの大河小説読んだような…。月村さんらしく歴史的事実や仏教の話が虚実入り乱れ、面白かったが疲れた。人の欲には限りがなく、御仏に仕える僧侶も例外ではない。怨念に囚われないようにケセラセラ。
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京都に関する暗部を炙り出しにした作品。御仏の名の元に金を集める寺とそれに群がるヤクザの世界。 最初から最後までどっぷり人間の欲を嫌というほど晒していく。400頁はある小説だが、圧倒的な面白さで3日間で読み終えた。
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すごい話。 最初は黒川博行読んでるのかと思うくらいだったのが、 映画のゴッドファーザーになり、後半は長浦京のプリンシパルに変化。 誰も救われない。
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政界にしても仏教界にしてもどんな業界でも悪党は一定数いる。しかし「先生」「和尚様」などと形式的にでも崇められて勘違いする輩がいるだけタチが悪い。 こんな巨悪ではなく小悪だが、実家の坊主は高校時代に婦女暴行で退学になり、でも坊主の跡を継ぎ、嫁さんは3人とも逃げ、乗ってる車はフェラー...
政界にしても仏教界にしてもどんな業界でも悪党は一定数いる。しかし「先生」「和尚様」などと形式的にでも崇められて勘違いする輩がいるだけタチが悪い。 こんな巨悪ではなく小悪だが、実家の坊主は高校時代に婦女暴行で退学になり、でも坊主の跡を継ぎ、嫁さんは3人とも逃げ、乗ってる車はフェラーリからポルシェ。 これからお寺は過疎化・少子化で経営的に苦しくなるのに大丈夫だろうかと心配になる。
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★5 人を救うためのお坊さんが京都の支配者として暗躍する… 煩悩丸出しの社会派犯罪小説 #虚の伽藍 ■あらすじ 寺格の低い生まれの凌玄は燈念寺派の僧侶、大学で宗教学を学んだあと宗務を司っていた。ある日、内部の不正行為らしき事案に気づくも、上司から圧力をかけられてしまうことに。 ...
★5 人を救うためのお坊さんが京都の支配者として暗躍する… 煩悩丸出しの社会派犯罪小説 #虚の伽藍 ■あらすじ 寺格の低い生まれの凌玄は燈念寺派の僧侶、大学で宗教学を学んだあと宗務を司っていた。ある日、内部の不正行為らしき事案に気づくも、上司から圧力をかけられてしまうことに。 困り果てた彼に、謎めいた人物和久良が近づいてくる。どうやら和久良は事情を知っているらしい。仏教の正しい教えを実現するため、悪の人脈を広げていく凌玄であったが… ■きっと読みたくなるレビュー お寺さんの物語です。ありがたーいお話… などでは全くなく、中身はアウトレイジ、半沢直樹、白い巨塔。業と欲にまみれるゴリゴリの犯罪小説です。 時は90年代のバブル期、京都を舞台にした不動産をはじめとした金脈の奪い合い。登場人物はフィクサー、暴力団、政財界のドン、役所職員など極悪メンバーで、もちろん敵側も同じような輩たち。お坊さんが主人公にも関わらず、いつもギリギリの駆け引きや殺るか殺られるかの殺伐としたシーンばかりなんです。 え、宗教って人を救うもんじゃないの? まさしくその通りで主人公の凌玄も誰よりも強い志をもっている。それなのに何故こんなことになってしまうのか… 物語としては次々と強敵が現れ、様々な謀略を繰り広げられる。時には防御、時には攻撃と煩悩丸出しで戦っていくのですが、これが面白いのなんのって! ドエンタメに展開されるお話は読む手を止めてくれません。終盤なんて、もろに白い巨塔で鬼アツ展開ですよ。 しかしどんな策略に対しても、お坊さんならではお説教による解釈が挟まれるところが興味深く、物は言いようだなとあきれるばかり。でも説得力があるんすよ、どんな世界でも賢明な人間が生き残っていくんすね。 またキャラクターがそれらしくっていいんですよ、ぜひ映像化を期待しちゃいます!主人公の凌玄はもちろん、インテリヤクザの氷室、フィクサーの和久良、親友の海照、女性陣の美緒と佐登子。この辺りは芝居のやり甲斐がある役どころですよね。表の顔と裏の顔、腹の座った迫力のある演技をぜひ観てみたい! イチ推しは美緒と佐登子の女性二人。可愛らしい女子大生だった二人が年齢を重ね状況が変わっていくうちに、彼女たちも変貌を遂げていく。外面如菩薩内心如夜叉… はー、仏さんの教えは人生勉強になります。 人間の我欲強欲を凄まじく描いた犯罪小説でありながら、平成時代のバブル期の裏社会を描いた社会派小説です。極悪エンタメですが人生勉強になる一冊です、ぜひお時間をとって読んでみて下さい。 ■ぜっさん推しポイント 執着ってのは罪深いすね… まさしく仏の教えは正しいすね。 ただまっすぐに正しい道を突き進もうと思っているだけなのに、いつの間にか思惑や行動が歪んでいってしまう。自らも葛藤に苛まれるときもあるけど、仏を心のよりどころにして正当化してしまう。 その結果、多くの屍を越えていくことになるのだが、果たして他人も自分も救うことができたのか… 考えれば考えるほど頭がぐるぐる回ってしまって、何が正しかったのかわからなくなりました。
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