その果てを知らず の商品レビュー
〈いいのだ、いいのだ、それでいいのだ。 というより、何だっていいのだ。 どうせ近々この世からおさらばするのである。となれば、おさらばしない現実の存在を認めたっていいだろう〉 リアルタイムで読んできたひとならば、あるいはその当時を知るひとならば、まったく違った感慨を覚えるの...
〈いいのだ、いいのだ、それでいいのだ。 というより、何だっていいのだ。 どうせ近々この世からおさらばするのである。となれば、おさらばしない現実の存在を認めたっていいだろう〉 リアルタイムで読んできたひとならば、あるいはその当時を知るひとならば、まったく違った感慨を覚えるのかもしれませんが、私は詳しくないので、読んだ素直な気持ちを綴ることしかできません。 著者自身を思わせる作家、浦上映生がたゆたう現実と幻想、生と死の境。ただの回顧ではなく、小説への、フィクションへの強烈な愛と意志を感じました。SFのひとつの時代を支え、そして長い年月、書き続けた小説家が、小説家としての軌跡を、小説として表現した偉大な作品に圧倒され、畏敬の念を覚えました。
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