金利を考える の商品レビュー
金融機関に勤める人間として、金利というテーマに向き合う機会にすべく挑戦。結果として、全てを理解できたわけではなかったが、金利という特殊な数字が社会不安や動向に助長されて複雑に機能する値であることは理解した。団体信用生命保険を悪用したサラ金の例や、質屋金融の貸し手としての安全性、住...
金融機関に勤める人間として、金利というテーマに向き合う機会にすべく挑戦。結果として、全てを理解できたわけではなかったが、金利という特殊な数字が社会不安や動向に助長されて複雑に機能する値であることは理解した。団体信用生命保険を悪用したサラ金の例や、質屋金融の貸し手としての安全性、住宅価格の値上げを前提としたサブプライムローン問題の本質から、2024年8月の株価大暴落に至るまで、新しい学びを得ることができた。基本的に金利とは、経済の儲けを生む力を反映する数字である一方、住宅ローンや消費者金融など、別の原理で動く金利も存在する。サブプライムローン問題の本質は、レッドライニングと呼ばれる、米国の公民権運動に端を発する社会構造から生み出された集団心理である(例えば、20万ドルで買った家が5年後に30万ドルになることが確実である場合、変動金利でローンを組んで、5年後に売り払い10万ドルのキャピタルゲインを得る。ちょうどそこから返済が激化するため、そこで売却金でローンを返済し、さらに大きい家でローンを組み直す。ホームエクイティローンと言われるものだ。5年間の返済額が2万ドルだったとしても、借り手は8万ドルの利益を得ていることになる。しかし、住宅価格が上げ止まると、家を売ってローンを組み直すことが出来なくなり、返済をしなければならなくなる。本来であれば審査に通らない、サブプライムの低所得の借り手が多いために、返済が滞り、家を失う結果となる。そのため、サブプライムローンの融資専門会社や債権を扱う金融機関に対する影響も顕著となり、金融全体の信用不安に拡大、結果として、リーマンブラザーズの破綻に至るまでの金融危機に達した)
Posted by
著者の本を読むのはこれが3冊目。前の2冊(「ポストマネタリズムの金融政策」「日本銀行」)は結構な歯応えを感じたが、本作は文体も柔らかく内容も優しめ。どうやらこれまでの専門職大学院生とは異なり、比較的若年層を対象にした講義体験が影響を与えているようだ。 内容的には金利に関するご...
著者の本を読むのはこれが3冊目。前の2冊(「ポストマネタリズムの金融政策」「日本銀行」)は結構な歯応えを感じたが、本作は文体も柔らかく内容も優しめ。どうやらこれまでの専門職大学院生とは異なり、比較的若年層を対象にした講義体験が影響を与えているようだ。 内容的には金利に関するごく一般的なトピックを総花的に扱うもので然程の驚きはないものの、挿話的にところどころで差し挟まれる質屋や消費者金融の話が新鮮で面白かった。
Posted by
- 1