浅草寺子屋よろず暦 の商品レビュー
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帯の惹句の「天命」や「心震える」を期待すると,やや肩透かしかも.もっと軽めの市井ものと思えば楽しめる. 本当の悪人が出てこない.主人公は,妾腹だけど兄家族全員に好かれてる.黒幕,江戸の暗黒街を牛耳る閑右衛門も,たぶんできることなら跡継ぎにしたいと思ってる.手下の岩蔵も一目置いてるふう.これも彼の人徳というか. 続編が出て,閑右衛門と敵対しながらどこかで通じ合うみたいな,面白い関係が展開したらいいなと思う.「ずんといい男」になった信吾が見たい.
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【収録作品】 第一話 三社祭と鬼 第二話 紫陽花横丁 第三話 父と子 第四話 片陰 第五話 秋風吟 第六話 錦木 出自を秘して寺子屋を営む大滝信吾が、教え子たちの家族に降りかかる問題を解決していった結果、狸穴の閑右衛門という土地の顔役に睨まれるようになる。 武術の達人で人のいい主人公、どこか憎めない悪役の手下、本人も知らない出自の秘密、ほぼ善人で気持ちのいい周囲の人々、と読み心地はいい。 よくあるシリーズ連作のように主人公が超人的な活躍をするわけではないし、きれいに解決するわけでもない。自分の手の届く範囲で、できるだけのことをしようとしている主人公の等身大の若者らしい成長が描かれている。 ……のだが。それこそよくある連作のような爽快感がないラストで、どこか中途半端な感じが否めない。そここそが著者らしさのような気はするのだが。
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今までと作風は異なるけれど市井の様子を温かく書いた落ち着く作品だと思う。主人公のお兄さんがいい味をだす秋風吟が好き。3年後を描く続編をだしてほしい。
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前作『夜露がたり』が、どうしようもなく暗かった初期の藤沢周平を思い出させるような作品だったのに対し。今回は軽快な世話物の時代小説です。周平で言えば『用心棒日月抄シリーズ』かな。 主人公の大滝信吾は、旗本の兄の許しを得て、浅草寺の院を借りて寺子屋を開いた妾腹の二男。その信吾が生徒た...
前作『夜露がたり』が、どうしようもなく暗かった初期の藤沢周平を思い出させるような作品だったのに対し。今回は軽快な世話物の時代小説です。周平で言えば『用心棒日月抄シリーズ』かな。 主人公の大滝信吾は、旗本の兄の許しを得て、浅草寺の院を借りて寺子屋を開いた妾腹の二男。その信吾が生徒たちの親が巻き込まれる事件を解決していく短編集。 信吾が明朗闊達なら、兄夫婦も気さくだし、長屋の連中も人が良い。何より悪役である狸穴の閑右衛門やその手下の岩蔵でさえ妙に気風が良い。事件もパサッと解決するのではなく、知恵やコネで軌道修正させて行くところが、ちょっと面白い。 悪くは無いのだけど、やや軽すぎのエンターテインメント。他に人も書いているけど「薄味」。一編だけでも重い結末になるような短編が有れば。もう少し適度な重量感になったように思います。
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大滝信吾は、寺子屋を開き町人の子らに字などを教え 穏やかな日々を過ごす。 静かな時間ばかりではなく 物騒な事件が長屋の人々を巻き込みながら襲ってくる。 砂原さんの時代小説は読みやすい。 でも、本作は少しさらっとし過ぎだろうか。 市井を精一杯生きる人たち。 裏でしか生きられな...
大滝信吾は、寺子屋を開き町人の子らに字などを教え 穏やかな日々を過ごす。 静かな時間ばかりではなく 物騒な事件が長屋の人々を巻き込みながら襲ってくる。 砂原さんの時代小説は読みやすい。 でも、本作は少しさらっとし過ぎだろうか。 市井を精一杯生きる人たち。 裏でしか生きられない悪人たち。 深く掘り下げた作品をお待ちしております。
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浅草の寺子屋で子供達を教える大滝信吾が、周囲の様々な事態に向き合っていくなかでの人情の話。 6話からなる物語は大変読みやすく、大きな破綻はなく静かな描写で大滝信吾と周囲の人々を描いていく。 人の情に寄り添う話の展開が良い。 6話目の展開は一気に謎解きとなり、3年後を迎えた次回作...
浅草の寺子屋で子供達を教える大滝信吾が、周囲の様々な事態に向き合っていくなかでの人情の話。 6話からなる物語は大変読みやすく、大きな破綻はなく静かな描写で大滝信吾と周囲の人々を描いていく。 人の情に寄り添う話の展開が良い。 6話目の展開は一気に謎解きとなり、3年後を迎えた次回作へ続く予感を持たせてくれる。 面白かった。
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標準的な作品だが、砂原作品としては物足りない。上梓作が段々と面白くなくなっているのが気になる。「高瀬庄左衛門御留書」のような大傑作を毎作品期待はしていないが、それにしても右肩下がりは残念。何か新境地が必要なのかもしれん。
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