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哀しいカフェのバラード の商品レビュー

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4件のお客様レビュー

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2024/10/18

とても不思議で、一切の救いのない物語。 巨躯で訴訟好きの女性、ミス・アミーリア。圧倒的な人間嫌いのアミーリアに対し、突然出現し、一途な愛を受けることになった病的に小さなカズン・ライモン。この二人が始めたカフェが、町全体を活気づけ、奇跡のような平和をもたらした頃に現れる、前科者で過...

とても不思議で、一切の救いのない物語。 巨躯で訴訟好きの女性、ミス・アミーリア。圧倒的な人間嫌いのアミーリアに対し、突然出現し、一途な愛を受けることになった病的に小さなカズン・ライモン。この二人が始めたカフェが、町全体を活気づけ、奇跡のような平和をもたらした頃に現れる、前科者で過去に10日間だけミス・アミーリアと結婚していた、マーヴィン・メイシー。 この三者の、愛の一方通行を描きながら、その愛の行き着く先を示す。 マッカラーズの小説に出てくる登場人物は、皆、どこか普通ではない。 普通ではないのだけれども、普通ではないなりに、皆、不思議と歯車が噛み合っている。 そしてその噛み合い具合がとても心地よく、「心は孤独な狩人」などは、それが作品を希代の大傑作たらしめている。 本作は、噛み合わない。全然噛み合わない。 なので、登場人物の普通でなさが際立つ。異様さが際立つ。 神話的なニュアンスさえ感じられるほど異質。 ただ、その異質さは読むことを拒絶するかというと、そういう類いのものでもない。 むしろ引き込まれる。異質さが魅力になっている。 中盤くらいから、明らかに本作が絶望に向かっていることがわかる。 わかっているにもかかわらず、目が離せない。 物語自体の魅力はもちろん、それを語る文章の美しさもある。 マッカラーズは、普通ではない人の、普通ではない行動を実に見事に描写する。 これはひとえに、天才の所業なのだろう。 本作は中編程度で短く、そして山本容子氏の銅版画が挿絵(背景画)となっており、さながら大人の絵本という感じに仕上がっている。 そして大人の絵本というにふさわしい内容。 異様だし、絶望だけど、読みやすい。 この美しい絶望は、マッカラーズのファンでなくても、味わってみて欲しい。

Posted byブクログ

2024/10/04

訳者違いの再読。 再読って初めてかも知れない。 でもよかった。 時に人物の気持ちが分からない。 でも人ってそんなもんじゃないかと思う。 全てが合理的で他から見て分かりやすくて…みたいな人なんていない。 それぞれに葛藤やら鬱屈やら抱えてどうにかこうにかつじつまを合わせたり、合わなく...

訳者違いの再読。 再読って初めてかも知れない。 でもよかった。 時に人物の気持ちが分からない。 でも人ってそんなもんじゃないかと思う。 全てが合理的で他から見て分かりやすくて…みたいな人なんていない。 それぞれに葛藤やら鬱屈やら抱えてどうにかこうにかつじつまを合わせたり、合わなくなってぐちゃぐちゃになったりしながら生きている。

Posted byブクログ

2024/09/30

20240930読了 なぜこんなことが?  リアリティ、ということでは、こんなリアリティに欠けた話はないだろう。そもそも、なぜ、主人公はせむしの男を招き入れたのであろう。  また、あれほど主人公につきまとっていたせむしの男はあっけなく、別の男に寝返ったのであろう。  最初の結婚...

20240930読了 なぜこんなことが?  リアリティ、ということでは、こんなリアリティに欠けた話はないだろう。そもそも、なぜ、主人公はせむしの男を招き入れたのであろう。  また、あれほど主人公につきまとっていたせむしの男はあっけなく、別の男に寝返ったのであろう。  最初の結婚の時はあっけなく引き下がった男がなぜ、今回に限ってはこのような陰湿なことをするのであろうか?  なぜ、最後の戦いがあたかも試合のような状況を呈したのであろうか?  さっぱり訳が分からない。  全くもってこんなことがあるだろうか?   しかし、少なくとも作者の心のなかにはまごうことなく存在感を持って顕出した世界なのだ。  そして、そのように考えてくると、まさしくこうとしか成り得なかったようにも思うのだ。愛とは、究極の形ではすれ違うことしかできない、ということなのか?

Posted byブクログ

2024/09/29

「愛されるもの」の立場と「愛するもの」の立場。 両者の立場が移り変わりながら、その哀しさと憎しみが描かれた物語。 登場人物たちは、みな異様で素直に共感することはできず、ゆえに、箱の中の出来事を見ているような感覚になる。 けれど、そこで繰り広げられている愛憎は、「愛」の難しさ、他者...

「愛されるもの」の立場と「愛するもの」の立場。 両者の立場が移り変わりながら、その哀しさと憎しみが描かれた物語。 登場人物たちは、みな異様で素直に共感することはできず、ゆえに、箱の中の出来事を見ているような感覚になる。 けれど、そこで繰り広げられている愛憎は、「愛」の難しさ、他者を理解することの困難さを語っている。 哀しいけど、涙がでたり、胸が激しくしめつけられたりするわけではない。 ただ、淡々とした哀しみだけが残る。

Posted byブクログ