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あと365日の晩餐(1) の商品レビュー

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2024/11/10
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※このレビューにはネタバレを含みます

この『あと365日の晩餐』は、良い食漫画だ、と断言します。 『週末!やらかし飯』(小村あゆみ)に続いて、また、読んでいてお腹が空いて来る良作に出逢え、一漫画読みとしては実に嬉しいです。 基本的に、私は系統に関係なく、美味しくて、満腹になれば良いって感じではあるんですけど、何が一番、好きなのか、と聞かれると、やはり、中華料理なのですよね。和食、洋食も、もちろん、好きなんですけど、中華系の味が舌に合うと言うのか、食べた時の幸福感が、ちょっとだけ高い気がします。 そんな中華系って事で、書店で、この『あと365日の晩餐』を、特に迷うことなく購入したんですが、予想よりも面白かったのは、嬉しい誤算でした。さすがに、『鉄鍋のジャン』や『中華一番』にこそ、まだ、及んでいませんが、(1)にして、中華料理を取り扱った漫画の中では、いきなり、上位に食い込んできました。 知る人ぞ知る小太刀右京先生が、初めて手がけるオリジナル作品ってのも大きいでしょう。小太刀先生の中華料理への愛が、しっかりとストーリーの中から伝わってくるのは、作画を担当したのが半月板損傷先生だからでしょう。ペンネームこそ「!?」と感じるものにしろ、その実力は、間違いなく、本物。このタッグだからこその面白さ、いえ、熱量を感じさせてくれます、『あと365日の晩餐』は。 ほのぼのとした日常系でもなく、ライバルと鎬を削り合ったり、悪意のある料理人と戦ったり、ファンタジーなアイテムを得るために旅をしたりする内容じゃないってのが、これまた、オリジナリティを感じられます。 閉店間際だった町中華系の店を、必死に切り盛りしていた一人の、やや脳筋っぽい少女料理人・トビラと、天才的な味覚と経営感覚を持ちながらも、難病に身を侵され、余命一年の美女・つかさが出逢いを果たした事で、このストーリーは動き出します。 直情的で、諦めが悪く、何より、料理センスには光るモノがあるトビラと、苛烈な女帝気質ながらも、美食家である自分にプライドを持ちつつ、どこか儚げさも感じさせるつかさの相性が、ストーリーに安定感を生むと同時に、トビラの提供する料理を、より美味しそうに魅せてくれていますね。 トビラが「勝つべく」、自分の命を燃やし切る気概マシマシで作る、どの料理も美味しそうでしたけど、個人的には、第二話「人生を奪う酢豚」でトビラが作った“鳳凰糖醋豚(ファンフォンタンツーロー)”でした。元より、酢豚が中華料理の中でも、かなり好きってのも大きいですが、これは、トビラの才能、信念、そして、自分の死と向き合っているつかさへの「自分の料理をずっと食べて欲しい、いや、ずっと食べさせてやる」って闘争心、勝利への執念が、しっかりと伝わってきます。 この台詞を引用に選んだのは、食事において最も大切な事を言っているな、と感じたので。 『トリコ』を読んだ事がある人なら共感してくれるでしょうけど、やはり、美味しい料理は独り占めするのではなく、皆で食べ、笑顔になる方が、その美味しさは増します。 美味しさが生む幸福感で自然と出た笑顔は、その料理を、もっと美味しくしてくれます。 幸福感の共有、それが出来ない人は不幸とまでは言いませんけど、寂しいですよね、何か・・・ 「トビラさん、いっしょにいただくごはんって、ひとりより美味しいわね」 「・・・当たり前じゃないですか!」(by現乃つかさ、町中トビラ)

Posted byブクログ