批評回帰宣言 の商品レビュー
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本書における著者の問題意識は、「アイデンティティの危機」である。普段我々日本人は、明治時代以降に西洋から輸入した様々な文明(政治・経済システム、法律など)のうえで生活を営んでいる。確かに西洋文明を輸入したことで、日本は経済大国に成り上がることができたが、その過程で我々は土着的な価値観をどこかに置き去りにしたまま現在まで来てしまった。このような「アイデンティティの危機」の原因を、著者は「歴史の喪失」に求める。つまり、故松岡正剛氏の表現を借りると、我々が生きる現在とは、過去に起きた出来事の波及として生じた「歴史的現在」である、という捉え方が無くなったのだ。本書の前半部では、この「歴史の喪失」の象徴として、天皇論や夏目漱石に代表される自然主義文学についての議論が行われる。それを受けて後半では、失われた歴史観とアイデンティティを取り戻すための手引きとして、中江兆民や福沢諭吉の作品を読み解きながら議論が進んでいく。 国際社会が混沌を極めている現在、まさに日本は国家としての価値感を確立する必要性に迫られている。価値観を醸成するためには、日本という国家を相対的に見る必要がある。このようなフェーズにおいて、「批評家」の存在が重要となる。以下に、「批評」についての印象的なフレーズを記しておく。 「批評とは、... 、「どうするべきか」ではなく、「どう生きているのか」つまり経験の成立条件を探求する、自己相対化の営みなのである。」
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ミネルヴァ書房から公開されている「序に代えて」を早速読んでみた。 「アイデンティティ」「閉塞感」「砂粒化」「大衆の生活感覚」など、いつもの先崎先生節が健在。 昨年読んだばかりのドストエフスキー『地下室の手記』がフォーカスされていたのは、嬉しい偶然だった。 刊行を楽しみに待ち...
ミネルヴァ書房から公開されている「序に代えて」を早速読んでみた。 「アイデンティティ」「閉塞感」「砂粒化」「大衆の生活感覚」など、いつもの先崎先生節が健在。 昨年読んだばかりのドストエフスキー『地下室の手記』がフォーカスされていたのは、嬉しい偶然だった。 刊行を楽しみに待ちたい。
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