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サリー・ダイヤモンドの数奇な人生 の商品レビュー

4.6

8件のお客様レビュー

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2024/11/09

★5 壮絶な過去に向き合う女性、人間の可能性と成長に痺れる傑作 #サリー・ダイヤモンドの数奇な人生 ■あらすじ アイルランドの田舎町、変わり者のサリー・ダイヤモンドは義父と二人で静かに暮らしていた。ある日彼女は義父が病気で亡くなっているのに気づく。生前自らが亡くなってしまったら...

★5 壮絶な過去に向き合う女性、人間の可能性と成長に痺れる傑作 #サリー・ダイヤモンドの数奇な人生 ■あらすじ アイルランドの田舎町、変わり者のサリー・ダイヤモンドは義父と二人で静かに暮らしていた。ある日彼女は義父が病気で亡くなっているのに気づく。生前自らが亡くなってしまったら焼却炉で焼いてくれと言っていたのを思い出し、そのまま遺体を焼却してしまったのだ。 警察からは温情をいただくことになったが、マスコミから注目の的にされてしまう。人とコミュニケーションをとるのが苦手な彼女は、これからひとりで生きていくことは可能なのか… そして彼女は義父から遺された手紙を読み、衝撃の事実を知る。 ■きっと読みたくなるレビュー 許せない。 他人を傷つけることを許容してしまうと、どんな結果が待ち受けているのか。不幸とはこうやって生まれるという教訓を魂に焼き付けられます。 そしてもうひとつ。人間の可能性、戦うことの意義を教えてくれる素晴らしい作品でもあります。 本書は大きく二人の視点で物語が進行していく。一つ目は変わり者のサリーが過去と向き合っていく現在の視点。二つ目はサリーの出生と関する者の過去の視点です。 サリーは幼い頃の記憶がなく、できる限り人と接触せずに生きてきた。もちろんそれには悲しい理由がある。本来頭がよく音楽の才能に溢れるにも関わらず、その結果自閉症気味になり、人とコミュニケーションが取れなくなってしまった。 しかし彼女はどんなに辛い事実を知っても、自分自身に立ち向かって戦い続けた。よく聞き、よく学び、自身の価値観を信じ、誇りを忘れずに胸を張って生き続けた。知恵と勇気を振り絞り、周りの人たちを信じる優しい心を持つことで、全てをやり直していくんです。すごい… 昨今、経済的なことを理由で犯罪に手を染めてしまう若者がいっぱいいます。卑劣な境遇に生れ落ちてしまうこともあるでしょう。でもこのサリーの生き様を見て感じてほしい、諦めるな。 一方もうひとり、過去の視点での物語… サリーに関係する人物が出てきますが、カッと目を開いて読んで欲しい。他人に甘え、自分に負ける人間はどうなるのか。 生きるってこういうことだったと思い出されてくれる傑作だと思います。ただ心臓が抉られる物語です、覚悟して読みましょう。 ■私とこの本の対話 以前息子が不登校になってしまいました、登校時に吐き気が止まらなくなってしまったんです。 彼から悩みを聞き、学校にも相談し、病院にも行きましたが改善がされない。これ以上追い込んでしまうことで更なる悪化を恐れた私は、ひとまずゆっくり休むことを提言したのです。しかしどれだけ休養しても、不登校は解決されませんでした… その後彼は、勉強の壁にぶつかっていたことを自分なりに認め、塾に通い始めるようになりました。すると学校への登校も再開し、自分らしく学園生活を送れるようになったのです。 やっぱり問題から遠ざけても何も解決しないんですよ(もちろん人それぞれ個性があると思うけどさ)。あらためて戦うことの重要さを教えてくれた、私にとって大切な一冊になりました。

Posted byブクログ

2024/10/31
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 面白かったです。  冒頭はサリーの物語から始まりますが、途中からピーターの物語も始まり、その後は交互に展開。  ピーターのパートが気になりすぎて、サリーのパートを飛ばし、先にピーターのパートを読んでしまいました。その後、改めて、サリーのパートも含め、落ち着いて読んでいきました。  そして読み終わり。…え…?ここで終わり? とびっくり。  でも、そうか、その後は読者に委ねるのかと。 ピーターはともかく、サリーには少しでも、明るい未来が待っていて欲しい。  例えば、コナーの母親が、少しでもコナーに良く接していれば、こんなにもたくさんの人々に影響を及ぼす事はなかったのではないか。たった1人の悪行がこんなにも人の人生を狂わすなんて。   人生で経験した、様々なことは、人の性格や考え方にあらゆる影響を与えるが、自分を客観視する力を持ち、少しでも良い方向へ向かう事が出来たら良いなと思いました。

Posted byブクログ

2024/10/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

1日で読破。非常にテンポ良く、二部からはどうなるんだろう、と釘付け。しかし、ラストで放り出されたような気も。あれだけ丁寧にサリーを描いてきたのに、あとは想像にお任せ、にしちゃうのは反則だよーと叫びたくなりました。それだけのめり込んだってことです。中盤の描写、痛々しい限り。こういう性癖は受け継がれるものなんですね。恐ろしい、、。

Posted byブクログ

2024/10/11

父が死んだらゴミに出してくれと言っていたので、父が死んだ後焼却炉で燃やしたサリーのちょっと信じがたいけど、リアルな人生。 ストーリー展開、人物造形、意外性、読みやすさ、全てにおいて完璧な小説だった。グロテスクではあるけれど、それを上回る面白さ。

Posted byブクログ

2024/10/08

町外れで世間から隔絶された状態で過ごしていた42才のサリーは、父親の病死で遺言通りに焼却炉で遺体を焼いてしまう。と言う突拍子なく始まるミステリーは彼女の来歴を遡りながら、少しずつ社会性を取り戻して行く様子を描いていく。並行して、ある意味監禁状態のピーターの生活も記され、不穏な先行...

町外れで世間から隔絶された状態で過ごしていた42才のサリーは、父親の病死で遺言通りに焼却炉で遺体を焼いてしまう。と言う突拍子なく始まるミステリーは彼女の来歴を遡りながら、少しずつ社会性を取り戻して行く様子を描いていく。並行して、ある意味監禁状態のピーターの生活も記され、不穏な先行きに目が離せなかった。 読んでいてとても辛く、特に42才に設定されたヒロイン像が哀しかった。読後感もどんよりとした気分が抜けなかった。

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2024/09/22

四十二歳のサリー・ダイヤモンドは養父のトムとほぼ引きこもりの生活をしていたけれど、トムが亡くなったことで状況が変わる。トムの書き残したものによってサリーは自分の出自を知っていく。そこには残酷な日々と失われた人生が描かれていた。虐待を受けトラウマを克服していくことの過酷さ、上手く人...

四十二歳のサリー・ダイヤモンドは養父のトムとほぼ引きこもりの生活をしていたけれど、トムが亡くなったことで状況が変わる。トムの書き残したものによってサリーは自分の出自を知っていく。そこには残酷な日々と失われた人生が描かれていた。虐待を受けトラウマを克服していくことの過酷さ、上手く人と話せない、関われない苛立ちが物語にずっと流れている。サリーの個性的な造形だけに頼らない作品でとても好感が持てた。

Posted byブクログ

2024/09/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

始まってすぐに亡くなった養父をゴミ袋に入れ焼却炉で火葬する。このスピード感がずっと続く。 過保護に育てられてきたサリーの人生がここから動き出す。 彼女の壮絶な過去を少しずつ明らかにしつつ、自分をコントロールしようと奮闘するサリーの日々が恐ろしいくらい面白い。 が、この小説はあらすじでは明かされていない事件が、終わりまでずっと展開するけど、この描写が無理な人は読むのは無理かもしれない。 ルームという映画が近い話になると思う。 この映画を一緒に見ようとした友達は始まってすぐに見るのをやめて退席した。 登場時のサリーは42歳、この年齢でこの設定は珍しい。 読んでいると彼女に肩入れしたくなるが、感情移入をさせないような行動を起こし、不安にさせてくる。 トビーが警察に勝手に送られる場面、終盤のクリスティン叔母さんへ怒る場面なんかサリーが本当に恐ろしく思える。 町に住むキャラクターもみんな印象的、すごく暖かく優しい人たちばかり。 彼らとの交流がやっと実を結んでサリーの生活が幸せと呼べるものになりかけては無情にも崩れる。 この話でハッピーエンドにならないってまじかよ!ささやかすぎる希望のような話で終わるけどこれでは読んでいる自分が救われないw サリーの物語はまだ途中なのに放り出されたような気分。 今年読んだ中で1、2を争う面白さだった。

Posted byブクログ

2024/09/05

はいはい、変な人、集まれ-! 自分が変だと思っている人も、周りに変な人がいる人も、読めばわかる。 「ああ、あるある」 「いるいる、こんな人」 うんうんとうなずきながら、妙な納得とともに読めるはずだ。 サリー・ダイアモンドはちょっと(いや、だいぶ)変わっている。 専門家(サリ...

はいはい、変な人、集まれ-! 自分が変だと思っている人も、周りに変な人がいる人も、読めばわかる。 「ああ、あるある」 「いるいる、こんな人」 うんうんとうなずきながら、妙な納得とともに読めるはずだ。 サリー・ダイアモンドはちょっと(いや、だいぶ)変わっている。 専門家(サリーの父・精神科医)の保証付きだ。 『おまえの言動の矛盾は説明がつかない。ときにあることに旺盛な好奇心を示したかと思えば、別のときにはその好奇心がなくなっている。ほかの人々がどうでもいいと思っているのに、たまにわたしがとめるのも聞かずに話しかけることもある。』(80頁) 『おまえの言動はつねに矛盾している。それは悪いことではない。ただわたしが知っているどの診断にもあてはまらない。』(80頁) 実は、私は「周りに変な人がいる」視点で読んだ。 家族にサリーを思わせる人がいるので、 「ああ、そうそう」 「うん、こういうとこ、ある」 「あの人、そうだよね」 サリーのしでかすあれこれに、しばしばうなずきながら読んでいた。 「私って変わっているから」という人! いやいや、サリーの方が変わっているから! サリーが変わっている理由は、彼女の出自が由来なのだが、サリーの出自は、たいていの人が敵わない変わりっぷりだから! だからかもしれない。 「一気読み」とはいかなかった。 サリーの出自が明らかになる頃は、なかなか重くて、読むのにいつもよりパワーが必要だった。 ちょっと今日はパワーが足りないなという日は、本を横にのけてすごしていた。 そこを越えてしまってからは、読み進めていけたのだけれども。 たいていこんな「変な人」の物語は、主人公が子供だ。 変な子がしでかすあんなことや、こんなことで、周りの大人がびっくり騒ぐてんやわんやを描く物語である。 いっぽうサリー・ダイアモンドは40代の女性だ。 これがいい。 40代の女性が、自分のあれやこれやを認めながら、ようやく世間になじんでいく話である。 え、40代女性の、世間になじんでいく物語? うわ、つまらなそう! と思ったあなた。 そう聞くとつまらなさそうだが、大丈夫。 主人公がサリーだから、非常に読み応えがある。 だって、たいていの人は、愛する父親の死体(自然死)を、裏の焼却炉で燃やしはしないでしょう? それに真面目に取り組むサリーだからこそ、その後の話が面白い。 それに至る話も面白い。 「面白い」という言葉がどうかという気もするが、他によい言葉が思いつかないのでしようがない。  『サリー・ダイヤモンドの数奇な人生』にむかない人は、ブラックジョークや皮肉が嫌いな人だ。 だって、父親の葬儀に、赤いステキな帽子を被っていく娘(いい大人)って、どうよ。 だが私は、とくにこの場面は、映像で見たいなあと思っている。

Posted byブクログ