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二月二十六日のサクリファイス の商品レビュー

4.4

6件のお客様レビュー

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2024/10/06

二・二六事件を描く小説が好きで、これまで何作も読んできたけれど、この作品は今まで読んだ数々の作品とは一味違うアプローチ。 事件後主犯の一人として拘束された技術将校・山口一太郎と、彼の捜査を任じられた憲兵・林逸平を主軸に事変後の捜査過程を通して当時の国の混迷の姿、国家の大義、人とし...

二・二六事件を描く小説が好きで、これまで何作も読んできたけれど、この作品は今まで読んだ数々の作品とは一味違うアプローチ。 事件後主犯の一人として拘束された技術将校・山口一太郎と、彼の捜査を任じられた憲兵・林逸平を主軸に事変後の捜査過程を通して当時の国の混迷の姿、国家の大義、人としての正義のありようなどを描く大作。 この事変を題材にする作品は、どこに(誰に)焦点を当てて描くかで趣がガラリと変わる。まさに真実は人の数だけあって、それだけに興味が増していく。 この作品は山口大尉の人間的な魅力に引き込まれた。一人一人は非力でも、小さな水滴の一つとして声を上げていけば、いつか水滴は岩を穿つという終盤の軍曹とのやりとりは胸熱だった。 諦めてはいけない、声を上げても無駄だと嘯いて白けている場合ではない。迂遠であっても、正しいと信じることを求めて続けていくのだという強いメッセージを感じました。 いい作品でした。

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2024/09/27

二・二六事件後に捕らえられた山口一太郎大尉を調べる憲兵隊軍曹の林逸平の、事件の経緯や裏側を探るミステリー。 面白かった。 二・二六事件の概要は知っていても、このような小説で新たに事件の流れや、統制派対皇道派、天保組対無天組など、当時の陸軍内の派閥の力関係を関係者への捜査で明かされ...

二・二六事件後に捕らえられた山口一太郎大尉を調べる憲兵隊軍曹の林逸平の、事件の経緯や裏側を探るミステリー。 面白かった。 二・二六事件の概要は知っていても、このような小説で新たに事件の流れや、統制派対皇道派、天保組対無天組など、当時の陸軍内の派閥の力関係を関係者への捜査で明かされていく。 青年将校のクーデターに対する山口一太郎大尉の不思議な言動と、その言動の意味を探る林逸平軍曹の駆引が、ミステリー感満点で予測の出来ない展開に繋がっていく。 これだけの話を見事に構築する著者の力量を感じた小説だった。

Posted byブクログ

2024/10/10

久しぶりの谷津矢車小説。 なんと二二六事件とな・・・大好物w あらすじは、山口一郎太大尉の事件への関与をめぐり、 憲兵隊の逸平が調査を進める。 一郎太と関わりのある、士官学校時代の同期、技術部の上司・・・ そこへ石原莞爾大佐がからみ、何かと便宜をはかってくれる かと思いきや、突...

久しぶりの谷津矢車小説。 なんと二二六事件とな・・・大好物w あらすじは、山口一郎太大尉の事件への関与をめぐり、 憲兵隊の逸平が調査を進める。 一郎太と関わりのある、士官学校時代の同期、技術部の上司・・・ そこへ石原莞爾大佐がからみ、何かと便宜をはかってくれる かと思いきや、突然陸軍上層部からの暴力を受け、邪魔される。 実は矢車小説から距離をとっていた。 前回読んだ小説が、もうとにかく暗くて、暗くて・・・ 絶望的な気分になったからだ。 この人の著作は最初に読んだ『廉太郎ノオト』も暗く、重たかった。 今度も、その傾向はあるけれど、まずまずやりすごせる。 逆に言うと、う~ん、迫ってこないともいえるのだけれど。 とにかく二転三転、時間をおいて読み返すとわからなくなるほど。 そのせいかもしれないが、 山口がいったい何者で何を為ようとしているのか、や 周りの怪しさ、伏線めいたものが弱いのでは? それともわたしが読み落としたのか? それでも、最後は納得。 うん、良い終わり方だ。 谷津氏も、少し年齢を重ねたのかな?

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2024/09/14

二・二六事件に山口一太郎大尉がどの位関わったのかを憲兵が調べる過程で明らかになる事件の裏側。 ドキュメント風の小説。なかなか面白かった。石原莞爾が登場したりするのも興味深い。作者のツイートを読むと苦労が分かる。

Posted byブクログ

2024/08/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

歴史時代小説、江戸モノのイメージが強い谷津矢車さんが描く昭和史、しかも陸軍とは!! 傍若無人で暴力的、後の特高となってからはとくにいいイメージが一ミリもない“憲兵”にも「人」がいたのだ、と改めて。 当たり前のことなのだけど、人間的な心のカケラもない、というのが一面的なイメージだったのだが… 二・二六事件と聞くと、高校の歴史で習った「昭和11年、二月二十六日早朝起こった青年将校たちによるクーデター」というぐらいしか知識がなかった。あとは、高橋是清大蔵大臣などが襲撃されたが4日ほどで鎮圧された、という程度の認識。 そんな薄い知識で読み始めたのだけれど、これが滅法面白い。 事件の首謀者と思われていた山口一太郎大尉の調査を命じられた一人の憲兵林逸平が、石原莞爾中将と共に事件の謎と真相に迫っていくある意味ミステリともいえる歴史小説。 逸平が、混乱と戸惑いのなかから憲兵という立場を越えて己の信じる「正義」を求めて突き進んでいく姿に「憲兵」への認識が変化していく。 なぜ、山口一太郎は自ら「首謀者」として裁かれることをよしとしたのか。いくつも重なる鎧で守られた彼の本当の目的は。 山口にかかわりのある人物たちの語りによって少しずつはがされていく山口の鎧。 日本が狂い始めていくそのひとつのきっかけとなったこの事件を真実と事実と想像によって描き出したこの大作は、歴史というものは一本の道で繋がっているのだと改めて思わせてくれる。

Posted byブクログ

2024/07/03

読み終わり昭和史に燦然と輝く知っているつもりで知らなかった二・二十六事件、クーデターの始まりとその経過なぜ起こってしまったのかの検証。そして探偵役の憲兵林逸平軍曹の活躍、読み応え満載の物語。気になった言葉があり「天保銭」調べて納得しました。あなたも昭和史最大のミステリー二・二十六...

読み終わり昭和史に燦然と輝く知っているつもりで知らなかった二・二十六事件、クーデターの始まりとその経過なぜ起こってしまったのかの検証。そして探偵役の憲兵林逸平軍曹の活躍、読み応え満載の物語。気になった言葉があり「天保銭」調べて納得しました。あなたも昭和史最大のミステリー二・二十六事件を納得するまで読んで堪能して下さい。

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