検証 トヨタグループ不正問題 の商品レビュー
業界関係者に聞くと口を揃えてトヨタの対外的な強さを語る。それは市場スケールと影響力を手に入れたものに可能な帝王学のようなもので、傲慢さとも言える。コストダウンの求め方も強烈。しかし、作業標準も徹底し、ライン工程ごとに可視化した上で日々カイゼンを話し合う土壌において、検査や品質不正...
業界関係者に聞くと口を揃えてトヨタの対外的な強さを語る。それは市場スケールと影響力を手に入れたものに可能な帝王学のようなもので、傲慢さとも言える。コストダウンの求め方も強烈。しかし、作業標準も徹底し、ライン工程ごとに可視化した上で日々カイゼンを話し合う土壌において、検査や品質不正が発生させられるとは思わなかった。この問題を聞いての正直な感想だ。他方で、長年の不正はその実証確認が市場を介して行われてきたとも言えるため、却って自信を持ったり、前例主義で正当化されたものもあるだろう。 本書は詳しくトヨタグループの不正内容を分析し、解説する。トヨタグループに限らず、日本全体で不正が通報されやすくなった。これは雇用の流動性が上がったり、コンプライアンス意識の醸成、通報制度等、仕組みの構築が進んだことによるものだろう。 良い本だが、納得しにくい考察が一点。不正は何故発生したか、である。著者の見解は次の通りだ。 ー では、設計者が不正を企てた根本の理由は何か。答えは実にシンプルで、技術力が足りなかったからだ。時間や人員の不足やパワーハラスメントなどは、不正行為を促した要因に過ぎない。そもそも十分な技術力を備えていれば、リスクの高い不正な行為をわざわざ企図する必要がない。従って、トヨタグループが不正の再発を防ぐために、真っ先に取り組むべきは「技術力の向上」だ。日野自動車と豊田自動織機の場合、排出ガスに関する規制値を超過したエンジンがあり、型式指定が取り消された。技術力が足りないのは明らかだ。ダイハツ工業でも型式指定が取り消された小型トラックがある上に、エンジンの開発では高出力に見せ掛けるために不正な加工などを施している。 技術力があれば不正は行われなかったのか。本書でも解説されるように不正にも幾つかの種類があり、十把一絡げには言えない。だが、技術力不足が原因ではないだろう。不足しても改竄でOKとしてしまえば成長がない。成長が必要な領域には、絶えず高みへの目標設定がされるだろう。カタログ値と異なる実力を許容する、自社基準を過信して法令基準を軽んじる文化、それを実証する前例主義や実績主義がそうさせたのだと私は思う。現に、日本に蔓延る不正の大半は、安全性に問題がない場合が多い。だから良い、と言っている訳ではない。監査システムや規格制度にも、ご都合主義的問題点はないのだろうか。
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ダイハツ、日野、トヨタ紡織の品質不正問題について、報告書を丹念に読み込み、何が問題だったのかを分析した書籍。各社のこれまでの品質保証体制を熟知しており、それがどのように働かなかったのかを掘り下げている。現場のインタビューや当事者の認識は一切触れられておらず、個人でできる範囲の分析...
ダイハツ、日野、トヨタ紡織の品質不正問題について、報告書を丹念に読み込み、何が問題だったのかを分析した書籍。各社のこれまでの品質保証体制を熟知しており、それがどのように働かなかったのかを掘り下げている。現場のインタビューや当事者の認識は一切触れられておらず、個人でできる範囲の分析であることが残念。
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