犬ではないと言われた犬 の商品レビュー
理由はわからないけどうっとりと美しく、どうにも惹かれる何か、というものがある。 必ずしも形がよいわけでなく。 必ずしも値段が高いわけでなく。 必ずしも整っているわけでなく。 なのに、どうしようもなくうつくしく自分に共鳴し、迫ってくるものがある。 ****** 本書は詩人であり...
理由はわからないけどうっとりと美しく、どうにも惹かれる何か、というものがある。 必ずしも形がよいわけでなく。 必ずしも値段が高いわけでなく。 必ずしも整っているわけでなく。 なのに、どうしようもなくうつくしく自分に共鳴し、迫ってくるものがある。 ****** 本書は詩人であり国語教室主宰者でもある著者のエッセイ集だそうだ。 著者に関する知識はまったくなく、寡聞にしてお名前もはじめて。ただ、タイトルに惹かれて(タイトルというものの力よ!)図書館で手に取った。 著者の日々の生活について、ご夫君について、国語教室に通う生徒さんとのかかわりについて、日常で出会うさまざまな事柄について。 エッセイなので特に奇抜な内容はない。 日常生活でそんな突飛なことばかり起きるわけはないのだから。 しかし、著者はことばを生業とする方であり、日々の暮らしや見聞きしたもの、人との会話から気づいたもの、かかわる人のあれこれについて感じること、すべてが著者による"ことばのフィルター"を通して語られる。これがよい。 ことばの選び方、喩えの使い方、文体、語り口、すべてが私には心地よく、読んでいて自分の中に何ともいえぬリズムが生まれてくるのを感じる。 ところどころに引かれている詩や短歌などもよい。 本書はエッセイなので、特に役立つことが書いてあるわけではないが、心地よいことばの流れを楽しみつつ「いい本読んだ!」と気分の良い読書タイムをもたらしてくれる良書であった。 そして、知らないのだから初耳(初目?)なのは当然だが、著者は発達障害を持つ方だそうだ。 発達障害ということばがラベルのように機能することには抵抗があるが、シンパシーを感じることもまた確かで、やはりそこはすっぱり割り切れるものではないのだろう。 ****** ことばは不思議なツールだ。 音、または文字の単なる羅列であるにもかかわらず、時に意味を持ち、時に心を揺さぶり、時に涙を流させる。どうしようもなくうつくしいもの、ことばで表せないものもあるけれど、ことばでしか表せないものもある。 うつくしいことばを読むと、ことばを好きでよかったなとしみじみ思う。
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書名と同じタイトルの 犬ではないと言われた犬 の文章では、詩について書かれている。 印象に残ったのは、 著者向坂くじらさんが敬愛する詩人の桑原滝弥さんのことば 人々よ 全世界の人々よ 軽々しく詩人と名乗りなさい そして落としまえを付けなさい
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詩と教育の交差、言葉あるいはコミュニケーションについて 「まず書かれていることを真に受けるのでなければ、その次の「書かれていることから推測する」ことの、スタートラインにすら立てないはずだ。(p.44)
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この著者のことは何も知らなかったけれど、旅先の書店でなんとなく手に取って数ページを立ち読みし、魅了されて買って帰って読んだ。 著者は詩人で、自宅で小さな国語教室をやっている。 つくること、教えること、学ぶこと、そのどうしようもない、ままならなさへの苛立ちと、抵抗と。
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私はこのエッセイ、とても好きだった。 多くの人が共感したり、笑ったりするタイプのものではないけれど、学校や社会で異邦人になった事にある人、その感覚が分かる人には染み入るエッセイだと思う。 私は平和YES!反戦NO!だ。 まぁありふれてそうだけどね。
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