ブレグジットの日に少女は死んだ の商品レビュー
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・あらすじ イギリスの架空の田舎町、クロウ•オン•シーが舞台。 海辺の田舎町で16歳の少女が拷問の末ガソリンをかけられ焼殺される事件が起こった。 捕まったのは同じ高校の少女3人。 この事件の当日はブレグジットというイギリスのEU離脱を問う国民投票日であったため殆ど報道されなかった。 ジャーナリストのカレリはこの事件のノンフィクション本を書くために移住。 関係者からインタビューを実施し本を出版した。 しかし出版後に虚偽、捏造、誇張、違法に資料を手に入れていたことが発覚し本は回収されることになった。 ・感想 この手の疑似ノンフィクション作品は最近増えてきた。 こういうの好き。 しかし私の苦手な10代の思春期女子のマウントの取り合いが事件の切っ掛けなので中々読み進められなかった……。 思春期女子の不安定さや攻撃性、仲間と思えない人間を排除する事への戸惑いのなさ、集団心理の暴走の怖さとか結構エグい。 ヴァイオレットやドリーの章から二次創作系の話になってきて、共感性羞恥まではいかないけどなんか居た堪れない気持ちになってきたw nmmnシリアルキラーのファンダムなんてよりアングラなジャンルだし、検索避けとか徹底されてそう。 もちろん本作は擬似ノンフィクション作品なのでクリーカー自体は創作だけど、絶対現実にもその手のジャンル(実在のシリアルキラー同士のカップリング)はあるだろうし。 ドリーが同CP解釈違いのクリーカーとバトルしてるところはよくある光景だな……と思いながら読んでた。 そして居た堪れない気持ちになったりなどした。 本作はこの事件を自分の好き勝手に妄想して、解釈して楽しんで消費してるカレリも同じ穴の狢じゃないかという問題に帰結する。 実際にあった凄惨な事件を「娯楽小説に仕立て上げて、関係者から話を聞いた上で事実上二次創作をした」カレリ。 そしてそれをノンフィクションという体で本として出版した。 かなり悪質だなと思うし、その危険性をメッセージとして込めた作品なんだろう。 この手の擬似ノンフィクション作品は読者側にも「事件を面白おかしく消費することの危険性」とか「被害者を置き去りにする事への警鐘」が含まれるので定期的に読みたい。
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ノンフィクション? フィクション? と揺さぶりをかけての2次創作笑 ノンフィクションは嘘が書けないので、真実を抽出するにはフィクションの方が適しているのでは?とたまにノンフィクションを読むと思うのですが、逆手に取られた感があります。
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我が子のように感じてしまって胸が痛い、青春時代を謳歌するはずが… #ブレグジットの日に少女は死んだ ■あらすじ イギリスのEU離脱(ブレグジット)を問う国民投票の日、ひとりの女子学生が暴行を受けた上にガソリンで焼かれるという事件が発生。犯人は同じ高校に通う女子学生の三名であった...
我が子のように感じてしまって胸が痛い、青春時代を謳歌するはずが… #ブレグジットの日に少女は死んだ ■あらすじ イギリスのEU離脱(ブレグジット)を問う国民投票の日、ひとりの女子学生が暴行を受けた上にガソリンで焼かれるという事件が発生。犯人は同じ高校に通う女子学生の三名であった。 数年後、ひとりのジャーナリストがこの事件をノンフィクションとして発表。プレグジットの日に起きた事件のため認知度が低かったが、時を経て世間を騒がせることになったのだ。事件当時の彼女たちの背景には、いったい何があったのか… ■きっと読みたくなるレビュー みなさん、まず装画をご覧ください。キラキラと輝く水面に、美しい夕焼け、いつも一緒の仲間たち… これぞ輝かしい青春の風景ですよね。 ところがどっこい中身は真逆です。いじめ、スクールカーストをはじめ、軽犯罪から麻薬まで、若い世代のダークな部分が凝縮して描かれます。ひぇぇ さらに本作は記者が少女たちにインタビューするモキュメンタリー形式で進行するため、人物像や人現関係がやたらリアルに伝わってくる。自らの学生時代を目に浮かべ、少なからず近いものはあったか知れないと思いをはせてしまいました。 とにかくひとりひとりの個性が強烈に描かれる。両親はどういう人で、幼い頃はどういう環境だったのか。読んでいくうちに我が子のように近くに感じてしまう。元々は素直でいい子のはずなのに、人を思いやれない行動があまりにも幼稚すぎて、ホント悲しくてしょうがない。 さらに作中にでてくる世界的事件や現代的なネットコミュニケーションも痛々しく突き刺さる。こんなことのために人類は技術発展してきたのでしょうか。 そしてあまりの内容に誰にも同情ができないんです、唯一寄り添えるのはローレンだけですね。キャラクターのひとりひとりがメインの読みどころなので、彼女たちが望まなかった青春時代を体験してください。 また彼女たち以外にも様々な大人たちが登場するのですが、これがまぁ全員「下品」なんです。他人事であることをいいことに、茶化して、あざけ笑い、飯のタネにするため大げさに事件を盛り上げる。 あー、でもよく考えたら我々も同じようなことをしてますよね。みんな好き勝手ネットに書き込んでるわ。最近ニュースのコメント見ると、あまりにも「下品」なコメントばかりで世も末。 子どもたちは大人の背中を見て育つんです、肝に銘じなければいけませんね。やっぱり彼女たちには、装画のような煌びやかな青春時代をおくらせてあげたかったです。 ■ぜっさん推しポイント 本書解説はドキュメンタリー映画監督で有名な森達也先生。実は若かりし頃からの大ファンです。フェイクドキュメンタリーの面白味と、本作の社会問題性をしっかりと提示してくれています。解説も読みどころのひとつなので、本編とセットで是非どうぞ。
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英国の海辺の町で16歳の少女が同年代の女子3人に焼き殺された事件を追うルポの形式で文章は始まっている。少女と加害者側の小さい頃からの聴取りや関わる人々を細かく描写している。がこれはノンフィクションではなくそれに見せかけたフィクションと言うのが1番の返し所。
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ノンフィクションへの擬態が上手すぎ。 最近流行りのフェイクドキュメンタリーでこのジャンルが翻訳もので多くて嬉しい。 去年のトゥルークライムストーリーと手法は違うけど登場人物たちの陰湿さは同じくらい。胸糞が悪くなることはうけあいです。 1人の少女が暴行され最後には焼き殺された。その犯人は同じ高校の少女3人。1人犯人と間違われた少女、被害者家族、加害者家族へのインタビューに当事者の使っていたSNSの投稿、ポッドキャストからの引用が入り、事件の内と外から真実に見えるよう埋めていく。 人間関係のこじれが大きな原因で、その描写が細かくこっちの胃を締め付けてくるものばかり。 被害者と加害者の立場が入れ替わり立ち替わりして、どちらが悪いと簡単には判断させないようになっているのも心が痛くなる。 実在するかのような地名に建物、その歴史までしっかり描かれ、嘘だとは思えないのが恐ろしい。 犯人の1人が小さな地獄を作るんだと行動しているがこの少女たちの日常こそ地獄に思える。 お化けとか化け物より現実こそが1番恐ろしいものだと証明するような小説。 小説だとフェイクドキュメンタリーで 映画だとモキュメンタリーって呼称するのかな。 このジャンルは嫌な感じを存分に楽しめるからもっと流行ってほしい。
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2016年、イギリスがEU離脱の国民投票で騒然とする中、海辺の町で16歳の少女が3人の少女に焼き殺された。ベテランジャーナリストによる事件の取材の顛末を描くモキュメンタリー小説。 本作はフィクションである。主題の少女焼殺事件も、舞台となる町も、事件のキーワードの一つにもなってい...
2016年、イギリスがEU離脱の国民投票で騒然とする中、海辺の町で16歳の少女が3人の少女に焼き殺された。ベテランジャーナリストによる事件の取材の顛末を描くモキュメンタリー小説。 本作はフィクションである。主題の少女焼殺事件も、舞台となる町も、事件のキーワードの一つにもなっている「チェリークリーク高校銃乱射事件」も実在しない。事件のノンフィクションを記したジャーナリストも架空の人物である。とはいえ全てが絵空事でもなく、ブレグジットを始めとして多くの現実に起きた事柄が引用されているし、架空の事件でもある程度現実の犯罪を参考にしていることは伺える(実際、作者へのインタビューによれば少女焼殺事件は着想元となる事件があったという)。 本作の特徴としては、オンラインの実録犯罪コミュニティが重要な要素になっていることが挙げられる。少し前に邦訳された『キル・ショー』も実録犯罪というジャンルの風刺だったが、あちらが主にジャーナリズムの問題として取り上げていたのに対し、こちらはポッドキャストやtumblrのファンコミュニティなど、より「ポップな」愛好家たちに焦点を当てている。作中作の著者はそのことに少なからず批判的な人物ではあるが、彼もその風潮に乗っていることは後半で分かってくる。内容からして、作者も実録犯罪ものが好きなのだろうと思わされた。 本筋は正直なところ大したことは無いしミステリーともサスペンスともつかない中途半端なところがあるが、細部の描写は引き込まれるところが多く、最後まで一気読みしてしまった。
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