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内申書を問う の商品レビュー

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2024/10/13

日本の受験制度の弊害や是非を考える。 AIがゴーグルに埋め込まれ、ガジェットとして装着できた時に、ペーパーテストなどレンズを通せば解答案が浮かび上がるので意味はない、という時代になる。そもそも、設問を作る仕事も大変で、結局、いつかのどこかの問題の再利用でしか設定できず、つまりは...

日本の受験制度の弊害や是非を考える。 AIがゴーグルに埋め込まれ、ガジェットとして装着できた時に、ペーパーテストなどレンズを通せば解答案が浮かび上がるので意味はない、という時代になる。そもそも、設問を作る仕事も大変で、結局、いつかのどこかの問題の再利用でしか設定できず、つまりは「暗記力、努力、用意周到さ」を問うテストにならざるを得ない。ペーパーテストは記憶の定着を測るために有効な育成手段であり、それを合否判定に用いるなら、文字通り、記憶力に点数をつける事になる。思考力を鍛えたり、それを問うならば、その場で論文を書かせるより、期限を設けた上で論文提出させ、後から内容について面接する方が良い気もするのだが。 で、本書は、そうしたテスト論ではなく、その不完全性を極力避けるための工夫としての内申書、調査書の話。正直、その大義は分かるが、調査書の存在は常時監視、教育機関の権力化、誤解への不安なども招き、これはこれで完璧な制度でもない。人が人を評価する、というのは会社でも学校でも、完璧には機能していないという事だ。 ー 明治初期に成立する近代学校は、「勉強」による「立身出世(階層移動と地域移動の可能性)」を庶民に説くことで、封建的身分制度からの脱却を推進しようとしました。そのために、課程主養に基づく厳格な「試験」を経て進級を認定するというシステムを導入しました。この「政府主導による近代化」事業によって、1907年に小学校が6年制に義務化されたように、初等教育と高等数育の制度上の連結が可能となり、小学校一(旧制)中学校一(1旧割)高等学校一帝国大学という「正規」のルートが整備されます。そして、この「正規」のルートを歩む者には、職業資格のうえで特典が与えられ、とりわけ国家の中枢を担う高級官僚に帝国大学の卒業生が多数進出するという状況が生まれます。そして、この職業選択において、学歴=学校歴の価値の重要性を決定づけたのが、第一次世界大戦(1914-18年)を契機として、軽工業から重工業への転換を成し遂げつつあった産業界の動向でした。さらには、1917年12月に公布された「大学令」によって、帝国大学以外の大学が認められ、学生数 9000人から7万人に一挙に膨張しました。すると、従来の人材採用の原理であった地縁・血縁や出自、いわゆる「こね」「かね」では対応できなくなって、人材選抜の原理として学歴がより重視され、その結果、職制における序列と、学歴の序列が対応するようになります。しかも、その学歴は、有名校であることが必要とされました。 能力に高低差があり、能力を見抜く側にも能力の限界がある。不完全であるという事は、そこに誰かしら理不尽な思いをする人が存在するという事だ。いずれも限界があるなら、ペーパーテストやマークシートの方が分かりやすいとも言える。そもそも、受験や合否判定などというシステムが不要で、偏差値と教育の質が相関するというなら、誰でも東大へどうぞ、とできるようにインフラを整える努力の方が必要で、権威主義を破壊する方が未来志向という気がするのだが。

Posted byブクログ