教育の超・人類史 の商品レビュー
テクノロジーの進化に対し、教育がアップデートされておらず、既に乖離が生じているというのはよく言われる。脳をハックして、メタバースなどを用いる事で教育効率を高める事もできるし、グラスを通してペーパーテストの解を視認する事も可能。同時通訳もできれば、AIが創作活動までしてくれる。この...
テクノロジーの進化に対し、教育がアップデートされておらず、既に乖離が生じているというのはよく言われる。脳をハックして、メタバースなどを用いる事で教育効率を高める事もできるし、グラスを通してペーパーテストの解を視認する事も可能。同時通訳もできれば、AIが創作活動までしてくれる。このような時代に、「暗記重視」の教育がどこまで有用なのか。教育の歴史を振り返る。 読んでいて思うのは、アップデートされていないとはいえ、流石に教育はこの数百年で大きく変化しているという事。そもそも、子供の扱いなんかも全然違う。児童労働が当たり前の1800年代には、子供に教育を受けさせるべきかが議論されていたのだ。「子供が作業場で過ごす時間のごく一部を勉強のために使ってはどうだろうか。そうすれば工場の利益を損なうことなく、子供に幸福な将来を築くチャンスを与えることができる。また、工場が過酷な労働搾取を容認、さらには積極的に行っているという非難も回避できる」これに対し、「工場での児童労働は絶対に必要だ。第一に、児童労働は安価だからだ。さらには、大人では彼らの受け持つ作業をこなせないからだ。たとえば、子供の糸を結び直すための指の繊細さと、紡績機の下に滑り込む身体的な柔軟さだ」と。ブルジョワ階級は「8歳未満の子供を学校に通わせなければならないのなら、子供は単なる扶養家族にしかならない。そうなれば親は子供をつくろうとしない。これは国の経済および軍隊にとって有害だ」と訴えた。 これ、凄い話だ。労働に適しているから子作りしているので、子供の労働を禁止すると子供の数は減るし、有害だと。こんな価値観の時代や地域が、あったという事。今でも、学校教育は社会経済と密接で、企業のための就労教育を担う部分はあるとしても、マシな状態にはなっているという事だ。だが、満足してはならない。 学校では、ルールが教えられるが、将来そのルールに従うだけの人間となるか否かがポイントだ。リベラルアーツとは、社会科学や自然科学の現時点のルールを学びながら、その枠外に新たなルールを自ら考えられるようになる事。メカニカルアーツとは、その現時点のルールの枠内で生産活動に従事する手段を学ぶこと、という乱暴な解釈しているが、いずれも、現時点のルールを学ぶために反復習得を基礎的な手段としている事は変わらない。 脳や身体に習得させる技法が、口伝から識字に。やがて読書が主役の座に登場してくるが、近代では、それが動画となり、メタバース、ニューラリンクに至る。「全知全能へ」あるいは「均質な有能機械化」というのが教育の目的となるのであれば、教育の効率性をいかに上げていくかは継続課題。しかし、その過程で、恐らく人間はゲームのチート化のように、人生の負の娯楽性を減じていく事になる。その行きつく先は、快楽中枢を刺激し続けるネズミと変わらないし、ドラッグのようなもの。ゆえに、つまり、ゲームや娯楽とはランダム性であり、苦労や努力の積み上げこそが人生である事に気付くのだ。登山やジョギングなど、努めて苦労をするというのが、ある種、既に体現化された形でもある。人の死と循環もまさにそれだ、と思う。
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西洋に限らす世界各国の教育の歴史が、事実をベースに把握できます。 情報量が多くストーリーとしてでなく、事実が淡々と書かれてますので、読み通すのはなかなかハードでした。 先進国ではようやくこの100年近くで、文字の読み書きが当たり前になったり、国家がすべての子どもに教育を与えるこ...
西洋に限らす世界各国の教育の歴史が、事実をベースに把握できます。 情報量が多くストーリーとしてでなく、事実が淡々と書かれてますので、読み通すのはなかなかハードでした。 先進国ではようやくこの100年近くで、文字の読み書きが当たり前になったり、国家がすべての子どもに教育を与えることが、当たり前になったことがよく分かりました。 知識教育はインターネット、AIなどを使って個別化していく、他方社会性を身につける場として学校が存在していくのか。 今の教育のやり方が変わりうる前提で、未来の教育を考えていく必要がある。
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各国の教育状況がよくわかります。 最終章のこれからの教育に向けてで、学ぶと同時に教えるなど日本でも取り入れるべきことがたくさんあります。
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これからの教育 500ページ近い本書の内容は歴史的背景も含め世界の「教育」に関する盛り沢山の情報書だ。また、後半では近未来の教育の姿、予測など「第3のシナリオ」など実に興味深いものがある。その中で興味を持ったのはデジタル化・電子化による急変する教育環境だ。特にネット社会が生み出す...
これからの教育 500ページ近い本書の内容は歴史的背景も含め世界の「教育」に関する盛り沢山の情報書だ。また、後半では近未来の教育の姿、予測など「第3のシナリオ」など実に興味深いものがある。その中で興味を持ったのはデジタル化・電子化による急変する教育環境だ。特にネット社会が生み出す「学校」が様変わりする予測(仮想現実の在宅教育)、それも思考能力、創造力等を育む反転反復授業など年齢問わず受講し、伝達(生徒であり教師なる)できる仕組みなど教育の世界は変貌するのは間違いない。現実「プロゲーマー」は既に職業として位置を確立しており、そこに博士号などの学位が必要だろうか。現在この競技人口は世界に1億3千万人いるとされ賞金トップで最高7億円を稼いでいる人もいる。現在e-Sport業界では最高20億円も稼いでいるという。
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2024/09/19「教育の超・人類史」Jacques Attali ☆☆ 「人類の教育史」500頁の超大作。日本では生まれない壮大な試み。 教育の全てが世界レベルで語られるスケールの大きさに圧倒されるとともに、人類にとって「教育」は権力者の支配を支える道具であり、「いつも未完の...
2024/09/19「教育の超・人類史」Jacques Attali ☆☆ 「人類の教育史」500頁の超大作。日本では生まれない壮大な試み。 教育の全てが世界レベルで語られるスケールの大きさに圧倒されるとともに、人類にとって「教育」は権力者の支配を支える道具であり、「いつも未完の制度」という深刻な状況にある指摘に驚かされた。 1.教育=知識は権力・権威の基盤 ①軍事・宗教・政治 ②専門プロフェッショナル 医療・法律 ③職人 組合ギルドで結束 ④女性は家事 出産・育児も 動物にも教育はある 狩り・防衛 +本能 文字はない 2.「知の体系化 (1)かって権力者は知を独占・統制「教育の暗黒時代-1500年頃」 宗教による知の独占 特に一神教は社会発展を遅らせる ただし中国は除く「科挙制度オープン」 紙による開放システム (2)産業発展 「大学」の誕生・発展 3.教育制度 ①体制のビジョン 君主制・民主制 ②成長戦略に対応 ③市民国民の存在 4.エスタブリッシュメントの固定化 既得権益集団 「貴族など」出自による固定化→社会の不活性化 身分制度など 難易度の高い難しすぎる選抜制度 科挙・ラテン語習得 5.AIの時代=知の体系の大再編へ 現代世界の教育課題は①人口動態②Digital化③グローバル化
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