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君の顔では泣けない の商品レビュー

4.1

37件のお客様レビュー

  1. 5つ

    15

  2. 4つ

    14

  3. 3つ

    6

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

    1

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2025/02/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

雪の影響で前日から職場の近くに泊まることを余儀なくされた日、少しでも自分の機嫌を取ろうと本屋に赴き、裏表紙の紹介に惹かれて手に取った本である。 本を読むときに、気になったページの角を折る癖があるのだが、それを忘れるくらい没入してしまった。 感情の描写が丁寧で、わずかな機微も救い上げていく展開に、自分が同じ時間を経験しているかのような錯覚に陥った。 2人の物語を早く見届けたい気持ちと、読み終えたくない気持ちの狭間で葛藤しながら、ページを巡る手を止められなかった。 自分の体を、自分ではない誰かのために生きるというのはどんな感覚なんだろうか。 その誰かのためだけに失敗しないように人生を生きることは、あまりに果てしないことではないのかと苦しかった。 自分の家族と、もう二度と家族として関わっていくことが出来ないという悲しみ、絶望、喪失感に心を抉られ、読後も1番考えさせられたテーマであった。 優しく笑いかけてくれる母。しかしそれはあくまで他人としてのもので、かつて自分に向けられた笑顔が自分に向けられることは永久に無い。 元の自分として、家族として、父や母、弟に会いたいという主人公たちの悲痛があまりに鮮やかに描写されていく。 最後に2人が元に戻れたのかは明記されていないが、どちらが幸せなのかと考える事は野暮なのかもしれない。

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2025/01/02

人間の中身が入れ替わるというストーリーはいくつかある。ただこの小説では、入れ替わったことによる男女の気持ち、考え方にフィーチャーしている。確かに今異性の体になったらと考えると、陸やまなみのように感じ、考えるかもしれないため、作者の深い洞察力を感じた。しかし人間が入れ替わるというこ...

人間の中身が入れ替わるというストーリーはいくつかある。ただこの小説では、入れ替わったことによる男女の気持ち、考え方にフィーチャーしている。確かに今異性の体になったらと考えると、陸やまなみのように感じ、考えるかもしれないため、作者の深い洞察力を感じた。しかし人間が入れ替わるということは現実にはあり得ず、物語の中には没入できなかった。

Posted byブクログ

2024/12/31

日課になっている仕事帰りの書店。 新刊や気になっていた本を一通り購入し、 何か良い出会いはないかなと店内を見ていた時に。 特集コーナーに本書が展開されていました。 同級生の男女の中身が入れ替わってしまう。 ドラマなどで見る光景。 だけど違うのは… 二人は高校を卒業して大学に進学...

日課になっている仕事帰りの書店。 新刊や気になっていた本を一通り購入し、 何か良い出会いはないかなと店内を見ていた時に。 特集コーナーに本書が展開されていました。 同級生の男女の中身が入れ替わってしまう。 ドラマなどで見る光景。 だけど違うのは… 二人は高校を卒業して大学に進学しても、 元に戻れない。 裏のあらすじに「結婚、妊娠、出産」とあり、 結構重たい本なのではないかと躊躇してました。 YouTube等でおすすめされているのを目にして気になっていたし、せっかく本屋に来ているし、普段手に取らない本も読んでみようと購入しました。 結果、読んでよかった一冊です。 物語はまなみという女子生徒と入れ替わってしまった、 陸という男子生徒目線で進みます。 生理や顧問のセクハラに戸惑ったり怒ったり、 落ち込みそうになっても、 まなみとお互いの情報共有を行い、 それぞれが周囲にバレないように必死に振る舞う。 入れ替わりものというと、 ラブコメの印象もありましたが、 本作は全然違って、切なくて苦しくなります。 諦めるのではなく受け入れること。 圧倒的な年月のなかで、 それぞれが葛藤したどり着く未来は。 途中、表題を彷彿とさせる場面が出てきますが、 それも切ないです。 個人的には巻末のまなみ目線で描かれるアナザーストーリーが印象的でした。

Posted byブクログ

2024/12/07

君嶋彼方さんのデビュー作。 男女が入れ替わる話は もう出され尽くしたかと思っていたけど それが戻らないところが新しい。 入れ替わり後、戻らないで数年過ごす 彼ら彼女らの心情が丁寧に描かれていた。 未読の人は解説の最初の部分だけ読んでから読んでほしい。 全然気がつかなかったから...

君嶋彼方さんのデビュー作。 男女が入れ替わる話は もう出され尽くしたかと思っていたけど それが戻らないところが新しい。 入れ替わり後、戻らないで数年過ごす 彼ら彼女らの心情が丁寧に描かれていた。 未読の人は解説の最初の部分だけ読んでから読んでほしい。 全然気がつかなかったから途中ちょっとわからなくなった私だったので笑 私も本好きなきっかけになったのは山本史緒さんなので なんだか著者にシンパシーを感じてしまった。 デビュー作で映画化決定。 今後も注目していきたい作家さんです。

Posted byブクログ

2024/12/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

入れ替わった男の子目線での女性の辛さや女性ならではの身体の不調を主に描かれていて、私自身は女なので男性にそういうものを知ってもらいたいという気持ちは確かにあるんだけど小説で読みたいかというとそうでもなかったと気付きました。急に男女が入れ替わるというトンデモ設定なのに女性の身体や性差に関しての生々しい表現だけリアルに浮き上がってきて、その後の生活もただただ現実的でラストも結局そのまま耐えて生きて行く。。。みたいな感じでなんかどうなのと思ったし、男尊女卑等昔の価値観は確かに嫌いなんだけど、あまりにも女性推しや多様性を義務や流行りのごとく押し付けるような作品を見るとそれもなんか違うよなと思ってしまうのです。著者にそういう思いが無かったらすみません。

Posted byブクログ

2024/12/04

なんかこういう表現?伝え方?もあるんだと美しく思った 物語は男女が入れ替わってしまうもの そして女の子視点でしか描かれてないところもよかった(つまり元男) 入れ替わってしまって戸惑い誰にも話せない孤独過ぎゆく時、他人として生き、相手はどのように思ってるのだろう、、当たり前じゃなく...

なんかこういう表現?伝え方?もあるんだと美しく思った 物語は男女が入れ替わってしまうもの そして女の子視点でしか描かれてないところもよかった(つまり元男) 入れ替わってしまって戸惑い誰にも話せない孤独過ぎゆく時、他人として生き、相手はどのように思ってるのだろう、、当たり前じゃなく選べない人生。。不安ばかりだったけどその中に支えられてた部分を見つける この設定で進んでいくことでより女の人の苦労など少しは分かれた のかも 人はひとりでは生きてけない!そーゆーことよな 好きなフレーズ引用 自分のことを知ってくれてる人がいるということが こんなにも嬉しいことだなんて思ってもいなかった 誰かとの約束には人を生かす力がある

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2024/11/11

良い小説でした。 キミジマ・ワールド全開!    男女入れ替わりのお話はこれまでにもありますが、リアリティの高さは一番ではないでしょうか。リアルに描くことによって、みえてくることがいろいろありました(あくまで個人の感想です)。  ・(当然)男女の身体性の違い  ・15歳から30歳...

良い小説でした。 キミジマ・ワールド全開!    男女入れ替わりのお話はこれまでにもありますが、リアリティの高さは一番ではないでしょうか。リアルに描くことによって、みえてくることがいろいろありました(あくまで個人の感想です)。  ・(当然)男女の身体性の違い  ・15歳から30歳までの人生選択のジェンダーによる違い  ・個々の家庭環境(両親の仲、経済状態、兄弟の有無)の違い、及び男女の違いによる育てられ方の違い  ・友達との関係性の違い  ・個人としての特性(趣味・趣向・特技・身体能力・生活習慣)の違い  上記のような「違い」を一身に受け入れながら、入れ替わりの相手の生活を15年間つづけてきた主人公のふたり。その間、いつ元に戻ることができるのかという期待と失望との葛藤。想像を絶する半生がリアルな描写の奥に見えています。  しかも、お互いに相手の身体や名誉を傷つけることのないよう気づかっている姿が痛々しいほど愛おしいです。  15歳で入れ替わったふたりが30歳になったということは、この先は入れ替わった人生のほうが長くなることを意味します。  そうすると、どちらが本当の自分だったか揺らいできませんか?  例えば、地方出身者が大学進学で東京へ行って、そのまま就職して40歳を超えたら、アイデンティティはどちらが強くなるでしょう? 自分は東京の人? 故郷の人?  例えば、子どもの頃の自分と、大人になってからの自分は、どっちが本当の自分?  例えば、独身時代の自分と、結婚してからの自分は?  例えば、子どもができる前の自分と、親になってからの自分は?  この先、この小説のふたりは、どんなアイデンティティを持って生きていくことになるのでしょうか? 稀有な人生だったね、ということになるのでしょうか?  なんか、いろんなことを考えちゃいましたよ。  で、あなたはどうですか?  これまでと、これからと。。。。  ひっくるめて全部が自分の人生だと言い切れる人生を過ごせてますか?  過去の自分を大切にしてあげながら、これからの人生を丁寧に生きたいですね。そして、逝きたいですね。   つまり、「君の顔では泣けない」と。

Posted byブクログ

2024/11/04

2024年73冊目 途中、読んでて混乱してしまう時がありますが、お互いが覚悟を決めていくあたりが胸にきます。

Posted byブクログ

2024/12/10

もしかして私たち、、、入れかわってる? 君の名は。かっ!つん? 今更ながら男女入れかわりの物語 まぁそれぞれ生活して最後まで戻らないのは新しいけどさぁーもう入れ替わりはいいぜ!

Posted byブクログ

2024/10/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

生理、女友達との関り、教師からのセクハラ、性被害、妊娠…と、女性ならではの面倒ごとや苦難に加え、断ち切りがたい本当の家族への思慕、仮の両親へのぬぐい切れない心苦しさを抱えながらも、ただひたむきに預かった人生を守ろうとする陸の姿に、心がヒリヒリするとはこういうことか、と思う。「君の顔では泣けない」、その決意がせつない。 対して、すぐに男性として生きることに順応し、女性として生きることに惑い迷い苦悩し続ける陸をひたすら朗らかに励まし続けていたまどかの、最後の最後に明かされる陸への激しい憎悪には、心底たじろいだ。その憎悪を昇華し、現実に折り合をつけるに至った苦悩・葛藤はいかばかりだろうか。 「誰も知らなくていい、二人だけが知っていればいい、誰も見たことのない二人だけの奇跡で幾度も苦しんだりしながら、それでも互いに救いあって、言葉を交わしあっていければそれでいい。そして秘密も悪事も二人で半分こしてこっそりと生きていこう。」 「自分一人で全てを成し遂げようとしなくていい。曇り空なら、どちらかが月を眺めればいい。私が夢を叶えられなくても、坂平くんが叶えてくれる。結婚をして、子供を産んで、幸せな家庭を築いて、その真っ当に生きようとしてくれている姿に救われているのは、やっぱり多分、私の方だ。だから坂平くんはどんなに泣いたっていい。涙を我慢しなくていい。私が代わりに笑っているから。だから、代わりに泣いてほしい。」 二人が思い至る境地は二人で二人分の人生を分かち、生きていく、というもの。十五年後の挑戦の結果はどうなるのだろう。でもきっと、どちらに転んでももう二人は大丈夫だろう。 男女入れ替わりといえば、昔からある浮ついたラブコメか、と、素通りしないで本当に良かった。読み終わったあと、数日何も読む気がおこらないほどに放心した。

Posted byブクログ