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前-哲学的 の商品レビュー

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2024/06/18

 本書は、内田先生が80年代から90年代にかけて書いた、フランス文学、哲学についての論文をまとめた一冊。正に「論文」の形式で書かれているので、最近の語り口調の文章とはかなり色合いを異にするが、読み応えは十分。  以下、主な感想。  ・冒頭の「20世紀の倫理」  道徳、倫理は超歴...

 本書は、内田先生が80年代から90年代にかけて書いた、フランス文学、哲学についての論文をまとめた一冊。正に「論文」の形式で書かれているので、最近の語り口調の文章とはかなり色合いを異にするが、読み応えは十分。  以下、主な感想。  ・冒頭の「20世紀の倫理」  道徳、倫理は超歴史的なものではなく、歴史的に形成されてきたものであり、ニーチェの「神は死んだ」により、啓示・神の戒律がその効力を完全に失ってしまったこと、そうした中、大衆社会において倫理はいかにして成り立つものであるかを、ニーチェ、オルテガ、カミュを通して考えたもの。丁寧に論旨がまとめられていて分かりやすい。 ・「鏡像破壊」  カミュの『カリギュラ』では鏡が大きな役割を果たしているが、その意味をラカンの鏡像段階で読み解こうとするもの。ラカンの鏡像段階論の解説もされているのだが、ラカンが良く分からないので、本論文の論旨も十分には理解できなかった。 ・「面従腹背のテロリズム」  モーリス・ブランショの『文学はいかにして可能か』を、ドイツ占領軍当局の検閲下における暗号で書かれた政治的テクストとの仮説の下、その暗号を解読しようとするもの。当時の政治的、文学的党派、分派などの状況が分からないので、全く歯が立たなかった。

Posted byブクログ