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グリーンデイズ の商品レビュー

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2024/06/08
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※このレビューにはネタバレを含みます

地方と都市間に発生する子どもの体験格差や、同じ地方の中でも進学への後押しにおいて存在する男女格差についてしっかり描いた小説であると同時に、学ぶ楽しさを描いた小説であるところが素晴らしいと思います。学ぶ楽しさというと抽象的な感じですが、この作品では主人公が『大学に行って学べる内容』や、『そこで学んで社会へ出ること』などにはっきり意識を向けています。子どものキャリア教育が小学校でも盛んに行われていて、児童向けの仕事に関する各分類の本も山のように出版され続けています。仕事を描いた作品は、物語の本にもたくさんありますが、そこにいたるまでの、大学での学び、またそこで学ぶための受験という仕事の前の段階について、「学びたい」「この大学に行きたい」という子ども自身の意欲や心の動きに焦点をあてて描いた物語は多くないのではないでしょうか。仕事の内容を描いた小説より、こちらの小説の方が、よりキャリア教育的だなと思うくらいです。 勉強や(都市型の)文化的体験という面で、都市部と比較し不利な状況にある離島の女児という芽生の立場から見ることで、勉強を競争ではなく、純粋な学びとして描いています。一方で佐渡島ならではの体験に目を瞠る東京っ子の新の姿からは、地方の魅力も感じられます。児童文学らしく、周囲の理解を得ながら、将来に希望の持てる終わり方です。現実の地方の勉強好き女子の周囲の人たちが本当にみんなこれほど理解ある人たちならどんなにいいか!それでも「私なんて」という自己卑下の気持ちに負けずに友達とコミュニケーションを続ける主人公の芽生の姿には心が動きます。とにかく不快な人物が一人も出てきません。いつか地方の実家を出たい、都会で勉強したいと思っている地方の女児みんなに贈りたい本です。

Posted byブクログ