いまだ成らず 羽生善治の譜 の商品レビュー
ダリは奇抜な言動で知られる異端の芸術家でもあった。盤上に絶対的な正し求める彼がなぜ、現実離れしたダリの世界に惹かれるのか。正統派と評される棋士あらゆる先入観を疑うような前衛芸術家。一見すると不思議な組み合わせに思えた。 だが、信じることと疑うこと、それらは相反するゆえに引っ張り合...
ダリは奇抜な言動で知られる異端の芸術家でもあった。盤上に絶対的な正し求める彼がなぜ、現実離れしたダリの世界に惹かれるのか。正統派と評される棋士あらゆる先入観を疑うような前衛芸術家。一見すると不思議な組み合わせに思えた。 だが、信じることと疑うこと、それらは相反するゆえに引っ張り合うような関係であるとも言えた。身ひとつで勝負に生きる棋士は自分をじなければ戦っていくことはできない。 その反面、現状を疑い、絶えず変化しなければやがて淘汰されることになる。身に染みて、そのことを知っていた。だから自分に言い聞かせてきた。 すべては疑いうるし。 カール・マルクスがそれを思考の前提としたように、今、常識とされているものを、今の自分を、疑ってきた。 他者が説むような王道を突き進んできた佐藤もまた、自分を疑い始めているのかもしれなかった。そして、その引き金になったのが羽生という棋士の存在であった。
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棋士は武士にも似た印象を受ける。真剣勝負の中で煌めく棋士の生き様はカッコ良い。羽生さんがもう一つのタイトルを取れるか、注目してみていきたい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
将棋は生身の人間が人生を賭けて勝負しているからこそ、様々なエピソードが生まれ、それらも含めて魅力的なコンテンツであり続けていると思った。 それぞれのエピソードは羽生さんとの対局を通じて、対戦相手側にスポットを当てた構成になっているが、どの棋士も将棋への向き合い方や背景にあるものが違っていて、面白く読めたし、純粋に将棋が強くなりたいという気持ちが強く感じられ、心を揺さぶられた。
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『嫌われた監督』の著者による羽生善治ルポ。 『嫌われた監督』がすごく良かったので、こちらも読んでみた。とても読みやすく、一気に読んでしまった。 本人よりも周囲の人物を描くことで、結果的に主題となる人物を浮き上がらせる手法は、『嫌われた監督』と同じ。ただし、今回その手法が成功して...
『嫌われた監督』の著者による羽生善治ルポ。 『嫌われた監督』がすごく良かったので、こちらも読んでみた。とても読みやすく、一気に読んでしまった。 本人よりも周囲の人物を描くことで、結果的に主題となる人物を浮き上がらせる手法は、『嫌われた監督』と同じ。ただし、今回その手法が成功しているかというと、微妙な気がする。 理由はいくつかあって、 ・『嫌われた監督』が良すぎて、どうしても比較してしまう。 ・羽生さんは比較的オープンな人で、考え方や人柄が知られているので、驚きが少ない。(個人的に元から将棋や棋士にそれなりに関心があって、予備知識があるからという要素はある。) みたいな感じ。 どちらかというと本書の主役は、羽生さんと戦ってきた棋士たちの方だと思える。悪い言い方をすると「羽生善治被害者の会」って感じだけど、皆、羽生さんと戦う中で自分の将棋を見つめ直し、悩みながらも前に進むもうとする。その姿には胸が熱くなるものがあり、さすが歴戦のスポーツライターが描いているな、という感じでとても良かった。
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落合博満のノンフィクション『嫌われた監督』で知られる著者が、将棋をテーマとした作品。羽生善治自身よりも、羽生と相まみえた天才棋士たちが、羽生とどう苦闘し、どう変わっていったのかが、主に描かれている。臨場感のある群像劇。
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『嫌われた監督』や『アンビシャス』など、野球界にまつわるノンフィクションに定評のある著者。 将棋界のノンフィクション執筆は初のよう。今後に期待したい。
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羽生善治と対戦した人の想いから、羽生善治という棋士の本質に迫っていて、いまだ成らず、の真意が立体的に浮かび上がってきた。勝敗を超えて将棋の結末を追い求める、求道者としての生き方こそ、天才的だと感じた
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【盤上その一手に潜む幾億の思索と人生を賭けた勝負。静穏の底の苛烈な世界に棲む、棋士という生き物の物語】25歳で七冠を制した羽生善治。黒白の数では知ることのできないその強さをトップ棋士の対局で浮き上がらせる思索と探究の旅人の書。
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