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中国の信仰世界と道教 の商品レビュー

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2024/07/13

中華文化圏にて信仰される神々や仏、仙人を概説した書。道教・仏教・民間信仰が混交する中華圏のパンテオンを一望すると共に、時代の移り変わりや通俗文芸の影響による信仰の変遷や地域差を解説する。 本書は、中華文化圏において今日なお崇拝されている様々な神仙を紹介したものである。中華圏の神々...

中華文化圏にて信仰される神々や仏、仙人を概説した書。道教・仏教・民間信仰が混交する中華圏のパンテオンを一望すると共に、時代の移り変わりや通俗文芸の影響による信仰の変遷や地域差を解説する。 本書は、中華文化圏において今日なお崇拝されている様々な神仙を紹介したものである。中華圏の神々を扱った本は本書以外にも数多く存在するが、本書の特色は主として中華圏の民間信仰の視点から神々の解説を行っていること、また時代や地域による神格や属性の違いや変遷に焦点を当てていることにある。そこから浮かび上がってくる中華圏のパンテオンの姿とは、正統信仰としての儒教・仏経・道経の三教と民間信仰とが混ざり合い、時代による信仰の栄枯盛衰や地域による差、果ては『西遊記』などの通俗文芸の影響などが絡み合う複雑怪奇なものであった。太上老君や玉皇上帝といった上位の神仙、諸々の元帥神や哪吒・二郎神・趙公明といった武神、八仙などの仙人たち――。十把一絡げに「道教の神々」と紹介されがちな彼らではあるが、その内実や来歴を見てみると実に複雑な経緯と変遷を経た上で今日の姿になっている。そして帯に記された「神の世界も人気稼業」の言葉通り、時代毎・地域毎での信仰の多寡に応じて彼らは変容し、隆盛し、或いは衰退して忘却の内に消えていくのである。 本書を読んで深く感じたのは、中華圏の信仰世界の奥深さである。本書では時代によって様々な神々が登場しては消え、或いは人気のある一つの神格に統合されていくという事例を数多く紹介している。かつては一大信仰圏を得ていたが今日ではマイナーな地方神となった馬元帥華光や祠山張大帝、時の王朝の信仰方針によって「代替わり」をする国家鎮護の武神たち、圧倒的人気故に周辺地域の他の海神を眷属神として取り込んだ媽祖――。信仰・崇拝の栄枯盛衰はどこの時代や地域でも見られるものだが、ここまで「回転率」の大きい信仰圏は他ではあまりないものである。しかもその中で生まれ出てくる神々の中には斉天大聖(お馴染み『西遊記』の主役孫悟空)や楊戩(『封神演義』での二郎神の名)のように物語の虚構に由来する者、杜十姨(温州の"女神"として崇められた「杜拾遺」こと唐代の詩人杜甫)のように訛化や間違いから生まれたものもある。まさに混沌とも言うべきこの信仰世界について概説する本書は、類書とはまた異なる視点から中華圏の神々を捉えたものと言えるだろう。

Posted byブクログ