万両役者の扇 の商品レビュー
江戸の芝居小屋、人気役者に狂わされた人々… 天才と狂人の狭間に映し出されたものとは #万両役者の扇 ■あらすじ 江戸の森田座、今村扇五郎は街中で大人気の役者であった。彼は芸のためなら人の道を外れても追求をやまない。そんな彼に魅了されてしまった人々は、次第に人生を狂わされてゆく。...
江戸の芝居小屋、人気役者に狂わされた人々… 天才と狂人の狭間に映し出されたものとは #万両役者の扇 ■あらすじ 江戸の森田座、今村扇五郎は街中で大人気の役者であった。彼は芸のためなら人の道を外れても追求をやまない。そんな彼に魅了されてしまった人々は、次第に人生を狂わされてゆく。さらに人が亡くなってしまうような事件が発生してしまい… ■きっと読みたくなるレビュー 江戸時代、歌舞伎の芝居小屋。当時は街中を賑わせたエンタメの世界を背景に、人気役者である扇五郎を中心に関係する人々を描いたもの時代小説。中盤以降に思いもよらない事件に発展し、ミステリー要素もある作品となっています。 まずは臨場感ですよね、まるで江戸時代の芝居小屋にタイムスリップしてしまったようです。まるで映画やTVの時代劇と同じ、いやもっと綿密に感じられる。街の賑わいや活気、人間が生活している様子が伝わってくるんですよね。筆力がエグイっす。 本作は連作短編集になっています。扇五郎が中心となりながらも、各話ごとにメインとなる登場人物が変わりながらストーリーが綴られていきます。読めば読むほど扇五郎の天才ぶり、いや役者馬鹿っぷりが赤裸々になってくる。 扇五郎の妻、入れ込んでしまうファン、芝居小屋で売り子をしている饅頭屋、木戸芸者、衣装屋、鬘職人、ライバルの役者。そして芝居のためだったら命を懸けられる役者扇五郎と関わるがゆえ、人生が少しずつ狂わされてゆく… どんなに華やかな世界でも、自身の活力につながる程度の関わり合いであればいいのですが、ここまで入れ込んでしまうと怖い。現代の推し活、推し狂いにも通じるものがあって、震えが止まらなくなります。ただ、ひとりひとりの扇五郎に対する気持ちだけは、静かに心に刺さってくるんですよね… たしかに彼の行動は「粋」であるかもしれない。しかし同じ人間として、男として、社会に貢献する職人として、彼から学びたいとは思わない。たしかにモテる男で惚れる対象ではあるかもしれない、でも目指す対象ではないんですよね。 しかし終盤、役者としての壮絶な生き様を見せつけられるのですが… これは確かに惚れる。結局、すっかりと世界観と扇五郎に引き込まれてしまったのでした。 ■ぜっさん推しポイント 本書とは全く関係ないですが、芝居の世界に足を踏み入れた知り合いを思い出しました。華やかな世界ながらも、辛く厳しいこともいっぱいあるだろうと想像できる。 きっと彼女ならどんな困難でも立ち向かっていくと思うし、きっと幸せな人生を送っているに違いない。思い切り芸を突き詰めて、好きなことを思う存分やって、めいっぱい自分を楽しんで欲しい。
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相変わらず、めちゃんこ面白いな…。 あの人は、あの役者は、本当は何を思っていたのか? 芝居狂いか、真人間か? あの人を見つめる眼で、それは万華鏡のように変わってしまう。 それでも、この目で見たものだけを信じるしかないのだ。
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『おんなの女房』の蝉谷さんの最新作。 『おんなの女房』の読了後の感想と重ねてみると・・・ >結構読み辛い文体で、最初は物語になかなか入り込めませんでした。 そのままですね。しばしば話がぱ~っと飛ぶ。段落さえ変えずにそれまでの主要人物が死んだことになっている。キーワードを隠す...
『おんなの女房』の蝉谷さんの最新作。 『おんなの女房』の読了後の感想と重ねてみると・・・ >結構読み辛い文体で、最初は物語になかなか入り込めませんでした。 そのままですね。しばしば話がぱ~っと飛ぶ。段落さえ変えずにそれまでの主要人物が死んだことになっている。キーワードを隠すように書く。気付かず通り過ぎて後もどり、を繰り返す。 >私が苦手とする情念の世界が非常にテンポよく描かれている これもそのままです。さ~っと通り抜けるものがだから、後から「アレッ」ってなることも多い。 >「情」が走り過ぎて「理」に無理が生じたようなストーリーもありますが ストーリーに無理があるのもそのまま。但し「情」や「理」という感覚ではなく、辻褄が合わなくてもオドロオドロしく描くことを重視した結果という気がします。 次作に手を出すかと問われれば、しばらく様子見カナ。 今までの三作はいずれも「芝居」を舞台にしたもの。他の世界を描いた時どうなるのかな?
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まるで歌うような文章力には驚く!舞台役者の舞台に対する執念には感心する。主人公の死に直面した時も舞台役者としてカッコよく取り繕うとはビックリ!
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江戸森田座で売り出し中の役者、今村扇五郎を中心に据えた連作長篇。 役者とは、その芸のためならなにをしても許されるのか──。饅頭屋が、衣装屋が、鬘屋が、彼に関わったことで変わっていく。 最初はぎょっとして、なにか仕掛けがあるのではと疑ったが、そんなものはなかった。まさに狂気と紙一重...
江戸森田座で売り出し中の役者、今村扇五郎を中心に据えた連作長篇。 役者とは、その芸のためならなにをしても許されるのか──。饅頭屋が、衣装屋が、鬘屋が、彼に関わったことで変わっていく。 最初はぎょっとして、なにか仕掛けがあるのではと疑ったが、そんなものはなかった。まさに狂気と紙一重の所業が積み重ねられていく。無責任に煽り立てる観客がうざい。その行き着く果てには、自らを主役にした究極の大芝居が控えていた。 一話完結である短篇の面白さに加え、長篇としての整合性も併せ持った見事な作品だった。
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