日下を、なぜクサカと読むのか の商品レビュー
机上で文献を調べるのではなく、現地へ趣きフィールドワークを主に地名の由来を探っていく。実際の地形を材料にした考察は確かに説得力がある上に、日本語の秘密を探るようでとても興味をそそられる。だが、一般に広まっている由来などを否定する時や似た言葉が同じ語源であると言う時などに、明らかで...
机上で文献を調べるのではなく、現地へ趣きフィールドワークを主に地名の由来を探っていく。実際の地形を材料にした考察は確かに説得力がある上に、日本語の秘密を探るようでとても興味をそそられる。だが、一般に広まっている由来などを否定する時や似た言葉が同じ語源であると言う時などに、明らかであると言ったきりでその根拠を示してくれないことが多く、何とも言えずモヤモヤしてしまった。研究界隈では当然なのかも知れないのだが、こちらは何せ素人なのでなぁ。その意味でも一般向けというよりは地名学に明るい人向けの本なのかも知れない。
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タイトルはとっつきやすそうだが、内容はフィールドワークを土台にした文化人類学の専門的なもの。ホビーの範疇で読むには難易度が高く序盤でDNF
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その地名にはルーツがある。 小字や地域、集落に残る地名を古代語、自然環境や自然など、 古文書やフィールドワークで探索し、解き明かしてゆく。 ・はじめに 第一章 「日下」と書いて、なぜ「くさか」と読むのか 第二章 「笠置」は「日陰地」を意味していた 第三章 『日本書紀』の「頬枕田」...
その地名にはルーツがある。 小字や地域、集落に残る地名を古代語、自然環境や自然など、 古文書やフィールドワークで探索し、解き明かしてゆく。 ・はじめに 第一章 「日下」と書いて、なぜ「くさか」と読むのか 第二章 「笠置」は「日陰地」を意味していた 第三章 『日本書紀』の「頬枕田」は円形の田を指す 第四章 「鳥居」のトリとは境のことである 第五章 卑弥呼のような女性のことを「太市」といった 第六章 「国」は「山に囲まれた土地」のことだった 第七章 「山中」と「中山」は同じか、違うか 第八章 「ツマ(妻)」の原義は「そば」「へり」である 第九章 「アオ」「イヤ」は葬地を指す言葉であった 第一0章 「賽の河原」とは、どんな場所か ・おわりに 地名や小字、地域での集落名を、現場に赴いて地形や地勢を 調べ、地域の人や公共機関等に聞き取りをするフィールドワーク。 また、古文書や地誌、柳田國男の著作等にもあたり、 考察し、検討してゆく。ある意味ミステリーの解明の如く。 草が付く地名と日下。コサ・カサ・クサが示す地形とは。 峠の語源。トリの付く峠。トリは境や境界。 市はシャーマン。卑弥呼は古代のイチ。 クニは山に囲まれた土地。オグニは小さい盆地。 山中と中山。川中と中川。 アオ、イヤは葬送の地、墓地。 賽の河原の地勢とは? 古代から付けられた地名がある。 その場所の地形や地勢などによるもので、おそらく、 訪れるときの指標になるものだったかもしれない。 文字よりも言葉の時代だったから、聞くことで伝わる名称。 聞いて伝える中での言葉の変化、仏教などの影響、 土地の変化、近年の集落の消滅、地図等の編集作業での削除は あれども、土地に古代から受け継がれた言葉が残っている。 全国に同じような地名が多くある事実にもかされてしまった。 地名学って奥が深いなぁ。
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副題にあるように、古代語の繋がりから地名を読み解いていくお話。 表題の「日下」のクサカは、〈こさ【木陰】(東日本で)木陰のため耕作に不利な田畑地。またはその木や茂み。こせ〉に関連があることを、足で歩いたフィールドワークで実証していく様子が、実に楽しげだ。 「実はカサ(笠、...
副題にあるように、古代語の繋がりから地名を読み解いていくお話。 表題の「日下」のクサカは、〈こさ【木陰】(東日本で)木陰のため耕作に不利な田畑地。またはその木や茂み。こせ〉に関連があることを、足で歩いたフィールドワークで実証していく様子が、実に楽しげだ。 「実はカサ(笠、傘)もコサ、クサと語源が同じというより、同一の言葉であった」 と、全国に分布するその地名を、日陰地に由来すると類推する。 そもそも、傘なんて発明は、比較的近代のものだし、広く世界にも目を向けて、 「例えば英語のアンブレラは「影」が、パラソルは「日光を防ぐ」が原義だという」 と広がりゆく言葉への発想が、なお楽しい。 「峠」も、「手向け(たむけ)」に由来するなんて話は、さも有力な説として耳にしたことがあるが、山の鞍部を「タワ」といい、そこからの変化したものと、柳田国男説を紹介する。 鳥居の「トリ」も境の意、「イチ」と付く地名の、意外な解釈も実に面白い。 それらを、言葉を弄ぶことなく、現場を見て、地形などから判断していく地道な努力をまとめ上げた力作。
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日下をなぜクサカと読むのかとずっと思っており、それだけで軽く手に取った。 地名自体にそれほど関心がない。「イチ」とか「アオ」とか、興味深い記載もいくつかあったが、読み切るのは私にとってはなかなかの難作業だった。 十分とは言えない地図を元に現地に赴くフィールドワークが主体であること...
日下をなぜクサカと読むのかとずっと思っており、それだけで軽く手に取った。 地名自体にそれほど関心がない。「イチ」とか「アオ」とか、興味深い記載もいくつかあったが、読み切るのは私にとってはなかなかの難作業だった。 十分とは言えない地図を元に現地に赴くフィールドワークが主体であることには頭が下がる。それでもいくつかの実例を挙げていきなり結論づけてしまうように見えて、何度かえ?と思った。正しいかどうかを確認する術はないのだから仕方がないのかも知れないが。 「卑見」と言う表記に違和感が。私見じゃダメなのかな‥?
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24/08/25読了 無理やり読み切った感は否めない。 ただ、 ・全国に同じ/近しい地名が点在すること ・居住者がいなくなれば地名が消えること ・音や意味は変わること が興味深くて読み進められた。 手元に置いておいて、国内旅行の前後にめくると楽しいかも 著者のフィールドワークの...
24/08/25読了 無理やり読み切った感は否めない。 ただ、 ・全国に同じ/近しい地名が点在すること ・居住者がいなくなれば地名が消えること ・音や意味は変わること が興味深くて読み進められた。 手元に置いておいて、国内旅行の前後にめくると楽しいかも 著者のフィールドワークの量よ。すごいな。
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地名には、それがつけられた古い時代の言葉が残っている。のちに変化したり当て字が使われたりして、意味が分かりにくくなっているものも多い。そして、同じ地名の場所は、地勢や気候、祭事など同じような空間特性、文化特性を有している可能性が高い。 そこで筆者は現地へ確かめにいく。同じ地名の場...
地名には、それがつけられた古い時代の言葉が残っている。のちに変化したり当て字が使われたりして、意味が分かりにくくなっているものも多い。そして、同じ地名の場所は、地勢や気候、祭事など同じような空間特性、文化特性を有している可能性が高い。 そこで筆者は現地へ確かめにいく。同じ地名の場所を何ヶ所も訪ねて、仮説を検証するのだ。机上で当て字の解釈をこね回すような地名研究とは格が違う。 個人的に馴染みのある語も扱われており、興味深く読んだ。
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「傘」に関する記述があるということで読んでみました。いいえ、そうではない。そうではないけど、そうなのだ。 福島、栃木、茨城には「草木」という地名が多くあり、その多くが盆地、いわば日の当たりが悪い場所となっているらしい。ということは、地名で使われる「草」とは「日をさえぎるもの」を指...
「傘」に関する記述があるということで読んでみました。いいえ、そうではない。そうではないけど、そうなのだ。 福島、栃木、茨城には「草木」という地名が多くあり、その多くが盆地、いわば日の当たりが悪い場所となっているらしい。ということは、地名で使われる「草」とは「日をさえぎるもの」を指している可能性が高いのではないか、という仮説からスタートして、丹念なフィールドワークによってその裏付けをおこなっていくという民俗学本です。 タイトルにもある日下とは、「草木が茂っている場所」という意味合いがあると考えられてきましたが、この本ではその一歩先についても考証しており、字の通り「日のあたる場所の下」ではなく、木が茂って陰をつくること、つまり「こさ【木陰・木障】」から来た読み方だという説を唱えています。 そして、実はカサ(笠、傘)もコサ、クサと元々は同一の言葉であったとのこと。カサは、その発生から雨を防ぐことを目的にしたものではなく、日差しをさえぎるための用具だったらしい。 つまり、コサ、クサ、カサは、いずれも「日をさえぎるもの」「日陰地」の意味を持っており、クサキ、クサギ(文字で表すと「草木」)は当然、カサギ(笠置か笠木)と同源、あるいは同じ言葉になるはずだという。これはカサギとクサキの地名が付いた場所を調べることによって、ほぼ間違いのないものとして立証できるらしく、それらを実証していく過程こそが本書の醍醐味でしょう。 その他、ツルマキという地名が表すものが「円形の田」のことであることや、「鳥居」のトリが「境」を意味していること、卑弥呼のような女性のことを「大市(おおいち)」と呼んでいたことを、地名に絡めて調査し、解読していくので、まるでミステリー小説でも読んでいるような味わいがありました。 興味深かったのは、第九章「アオ」「イヤ」は葬地を指す言葉であった、の章。「アオ」とは元々ブルーの意味には限定されず、ときに緑、黄、灰色を指すことがあったという。さらに作者は縄文時代から弥生時代、おそらく古墳時代ごろまでのあいだ、アオは色の種類ではなく、「葬送の地」を意味していたという論陣を張る。事実「青」と付けられた地名には縄文時代の遺跡群と重なる場所がいくつかあり、例えば宮城県登米市青島貝塚は縄文時代の墓地であったとのこと。アオの語と葬地とのかかわりに目を向けた研究者はほとんどいないため、仮説としてさえほぼ認められていない状態であるが、なんだかその「学会から異端とされる説の持ち主」というあたりが某妖怪ハンターや某民俗学教授を彷彿とさせて傍目から見ると楽しい。 一方、イヤという言葉は「昔の葬地らしい」という認識が一定数あるようで、すでにいくつかの研究がなされているようだ。福島県にある「伊谷」という地には古墳群があり、長野県にも同様の地名「伊谷」があり、そこでは水無神社に伝わる「神輿まくり」が知られているそう。 こんな具合で地名にまつわることを研究していき、実際足を運んで裏付けを行っていく。フィールドワークという面を重視したようで、現地取材をモットーとしており、これまでの学説に安易に与しない姿勢には民俗学の「実証」の部分に重きを置いているのが感じられて好感が持てた。というか作者さん80歳の方なんですね。熱意が伝わってくる素晴らしい研究成果でした。ありがとうございます。
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これは面白く好奇心が刺激される本。日下、笠置、頬枕田などの地名について、そのつけられた場所の地形から、どうしてその漢字を当てはめたのか、著者のフィールドワークをもとに論じられる。知っている場所もあり今度訪れた時には注意して眺めてみたい。
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