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忘却の効用 の商品レビュー

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4件のお客様レビュー

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2024/09/23
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アルツハイマー病の研究をしているコロンビア大学の神経精神科学教授の著書。普段病的な忘却を扱う教授が、通常の誰もがもつ「正常な忘却」によるメリットを分かりやすく説明した本。社会に合わせて記憶と忘却のバランスをとることが重要と、全体を通して語っている。 些細な細部にとらわれず全体像を把握したり、そもそも新しい必要な記憶を獲得するためには忘却が必要ということをPTSDや自閉症患者の病的な忘却の状態を比較して説明している。 特に印象に残ったのは下記2点 1)人を愛したり、美しいと感じる能力には認知能力は必要なく、認知能力の多くを失っても人生を楽しむことができる。 認知能力では仕事面では重要だけど、自分の人生を存分に楽しむことができるというのは、病気ではなく老いからくる認知能力の低下をそこまで恐れなくてもいいという、優しいメッセージだと感じた。 2)記憶力が(正常な範囲で)悪いことで、知的謙虚さが生じ、複雑で難解な問題の正解にたどり着ける可能性が高まる。 私自身も記憶力が悪く、すぐに想起することが苦手だけど、昔から時間をかけて解く必要のある内容に答えを出すのが得意だった。昔はそれを自分の短所としてしか思っていなかったけど、本の中では記憶力が悪いことによって、頭の中にあるそれらしい回答に飛びついてこだわったりせず、外からも積極的に知識を集め(知的謙虚さ)、用心深く検討することができるそう。 もちろん、記憶力が良い人は、日常生活の大部分で素早く問題を解決できる利点がある。 記憶力が良い人悪い人、色んな人がそれぞれのメリットを発揮することで世の中に貢献できるということ。

Posted byブクログ

2024/09/08
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自分がよく物忘れをするので、その特性のメリットはないかと購入。 あわよくば忘れないようにする工夫があればと思い読んでみました。 本の内容としては、「記憶に関与する脳の構造(海馬や前頭前皮質など)がどのようにつなぎ合わされて記憶をし、また忘れていくのか?」ということをメインに書かれていました。 この本によると、正常な忘却はむしろ喜ばしいことで、恐怖などの体験を上手く忘れることによって心の安定を保っているとのこと。自分がよく物忘れをするというのはあくまで主観的な部分もありますが、確かに比較的心は穏やかさを保てているように感じました。(身内に対して以外かもですが(笑)) また、アルツハイマー病やPTSDなどの病的な忘却が起こっている場合には、認知行動療法や海馬の機能を回復させるような薬物療法が必要になるといったように、病気に対してのコメントも述べられています。 他に面白い内容としては、「睡眠は記憶のためではなく忘却のためにある」というものがありました。 睡眠によって必要な情報と不必要な情報の篩い分けを行い、不必要な情報を忘却することによって脳の容量を守り、結果的に必要な情報だけが残っていくとのこと。 この話を聞いて、「人は同じ情報を何度か思い出そうとすることで、その情報は重要なのだと脳が判断し、記憶に残りやすくなる」というのも理屈がわかる気がします。 脳の構造の話がメインになっていくので、内容としてはちょっと難しめでしたが、興味のある方は読んでみてください!

Posted byブクログ

2024/07/25
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『忘却の効用』 スコット・A・スモール 著  このところ、名前が出てこない、用事を忘れるなど、「忘却力」がついてきました。これで大丈夫かと心配になってきたところ、ちょうど絶好の書籍に遭遇。  まず、「忘れる」ということは、個別事象を一般化するための前提。記憶力のいい人は、「朝日のなかで見た犬」と「夕闇のなかで見た犬」を、「同じ犬」と認識できないのだそうです。「さまざまな相違を忘れること、一般化すること、抽象化すること」が「考える」ために必要。また、憤りなどの負の感情を忘れることは「赦し」にもつながり、これが「忘却が持つ利点のなかで最も尊いもの」。さらに、睡眠によって大脳皮質の記録を片づけて白紙にする作用があり、このことで新しい記憶を受けられるようになると言います(「忘れるために眠る」)。  「忘却」があることでよい人生が送れるとわかり、これからはあまり忘れることを気にしないようにしようと、単純にも自分に言い聞かせられる一冊です。

Posted byブクログ

2024/05/30

忘却は新たな記憶の助けとなる 海馬機能が高いほどヒューリスティックな早とちりが多くなる。 海馬機能が低い方が知的謙虚さが持てる しかし潜在的記憶にも顕在的記憶にも海馬が関与する 通常の加齢による記憶障害とアルツハイマーによる記憶障害では 海馬内の異なった細胞群が傷害される。

Posted byブクログ