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ひとりぼっちの私は、君を青春の亡霊にしない の商品レビュー

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2024/07/12
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※このレビューにはネタバレを含みます

少しずつ贅沢に読めた時間が楽しく,倖せでした。 仲違いしたお友達とは,結局,別れ別れになってしまうという終わり方がちょっとほろ苦くて,一度壊れた関係って修復するのが物凄く大変だし,自分の経験からしても,修復できたところで,その傷痕ってなかなか塞がることがないものだよなとは感じるので,そういった思春期特有の儚い人間関係が,リアリティを伴って押し寄せてくる読感が非常に良かったです。 主人公である亜子ちゃんたちの,人生は他者と関わって生きていかなければならないからこそ,嫌われたくないと感じて自分を押し殺して他人に無理に合わせてしまう,あるいは我を貫き通すことで揉めごとに発展してしまうという,人との距離感に対する若さゆえの未熟さ・拙さみたいなものが,全編通してリアルで,自分も若い頃はこういうことで悩んでいたなあ…と,昔を振り返って懐かしく感じながら読めました。 実を言うと,私は今でも趣味を通して若い人たちと接する機会がそれなりにあるのですけど,やはりイマドキの若い人たちも,私が若かった時の悩みと同じことで1番思い悩んでいるようなので,時代は変わっても,悩みの本質が変わることはないのだなあーと感じたりします。 ただ,もうおじさんになってしまった身としては,作中で友達と揉める要因になるものが,マッチングアプリであったことには,時代の流れを感じて目を白黒させてしまいましたがね(笑) 後半,やや展開が性急で唐突感が否めなかった面があったところと,本当は黒い影に覆われているのは主人公の方であるという転換が最初から読みやすすぎて先読みが容易く,サプライズとしては弱くて,少々物足りなさを感じた点は残念でしたが,心理描写の精緻さが素敵で心地良くて,最後までドキドキ期待しながら読むことができました。 中盤に描かれていた,亜子ちゃんが咲凛ちゃんへ声を掛けるために,以前咲凛ちゃんからプレゼントしてもらったヘアオイルをつけて,その香りに勇気をもらって一歩を踏み出すところは,特にお気に入りです。 読みながらちょっと目が潤みました。 亜子ちゃんが最後にそう思えたように,自分がやりたいと思う好きなことをしながらも,他人から傷付けられることの痛みを知っているのだから,他者に対しては,優しくおおらかに生きていけたらよいですね。 少なくとも,好きだなと思う人のこと,好きだなと思う人の好きなものは,否定せず,積極的に教えてもらって,"知る"ことができていけたら良いなあと思います。 もはや中年になってしまった私ですが,こんな自分でも,亜子ちゃんたちの思春期特有の儚いきらめきや,傷みに寄り添いながら,人生のひと時を共に過ごしても良いんだよなと感じることができて嬉しかったです。 作者の丸井とまと先生,素敵な作品をありがとうございました。

Posted byブクログ