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入沢康夫詩集 の商品レビュー

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2012/04/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 率直に言えば、詩は読みにくい。  小説なら誰かに読ませるためのストーリーがあるし、写真集なら開けば視界を奪われるインパクトがある。  いずれにせよ、詩は短い故に個性が強烈だ。特に前衛詩と呼ばれるような詩を中心にすれば、読み手にあわせるなんて姿勢がこれっぽっちも感じられない。  短い行数の中に凝縮させなければいけないから、他人に語り口を会わせているような余裕なんてないというのか。  だから、小説は薦められても、詩は他人には勧めにくい。  だけれども、誌というものは、誰かに語りかけずにいられない衝動の結晶で、内心を凝縮した濃密な言葉の群れだ。  読み辛い半面、それがうまく自分の感性と噛み合った時に、与えられるインパクトはものすごい。  食わず嫌いを乗り越えるだけの価値が、そこに生まれると思う。  入沢康夫の世界は、日常を突き抜けて遠いところを見ているようだ。  誰しもが心に持っている荒涼とした野原がどこまでも広がっているようなイメージ。  世界に放り出されて立ち尽くすような孤独、独特のリズムで語られる滅びを眺めた愉悦を、是非、多くの人に味わってほしい。    失題詩篇より、引用。 「心中しようと 二人で来れば  ジャジャンカ ワイワイ  山はにっこり相好くずし  硫黄のけむりをまた吹き上げる  ジャジャンカ ワイワイ」  五月、毛織りのシャツの男より引用  「それは人さらいの月 からっぽの棺の月 竹筒の中でねばつこい酒がにぶい音をたてる月 あわただしい愛と旅立ち 監視と処罰の月」

Posted byブクログ