挑発する少女小説 の商品レビュー
面白かった! 少女時代に読んでいた物語、当時は深く考えず憧れたりワクワクしたりしていたけど、執筆当時の社会が女性に求めるものだったり、それに反発する作者の隠れた思いだったりが描かれていて興味深かった。 何よりこの本の筆者のバサバサ斬っていく語り口が気持ち良い! 取り上げられて...
面白かった! 少女時代に読んでいた物語、当時は深く考えず憧れたりワクワクしたりしていたけど、執筆当時の社会が女性に求めるものだったり、それに反発する作者の隠れた思いだったりが描かれていて興味深かった。 何よりこの本の筆者のバサバサ斬っていく語り口が気持ち良い! 取り上げられている作品の中では 「秘密の花園」「ふたりのロッテ」が子どもの頃特に好きだったなぁ。
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少女だった頃わくわくしながら読んだ秘密の花園や赤毛のアン、大草原の小さな家が別の角度から展開することで、様々な魂胆(笑)を見せてくれるのがとても面白かった。読んだ当時の記憶は薄れているけど、思い出しつつ新たな面が見えて二重に楽しい読書体験でした。
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子どものころ夢中になって読んだあの少女小説の古典を大人になってから読み返すと何が見えてくるか。家庭的な女性を求める時代の要請に応えながらも反抗心を持ち続け、挑発することをやめなかった少女小説を再評価する。 本書で取り上げられている少女小説は超古典的なラインナップなのだが、私は...
子どものころ夢中になって読んだあの少女小説の古典を大人になってから読み返すと何が見えてくるか。家庭的な女性を求める時代の要請に応えながらも反抗心を持ち続け、挑発することをやめなかった少女小説を再評価する。 本書で取り上げられている少女小説は超古典的なラインナップなのだが、私は昔からファンタジー派だったので『若草物語』と『赤毛のアン』と『あしながおじさん』しか読んだことがない。たぶん同世代で子どものころから本が好きという人でも、全部読んでる人は稀な気がするなぁ。 とはいえ読んだ作品はやっぱり特別な存在になっていて、なかでも私はアンが好きだった。アンに倣って樹に名前をつけたりクランペットを焼いてお茶会をしたし、夜に蝋燭の灯りでダイアナに暗号を送るやつをやりたかった(笑)。ドラマの「アンという名の少女」も見たし、結婚しない生き方を選んだマリラとマシュウにシンパシーを感じるようになった。 だから本書で『赤毛のアン』とは、「男の子になりたい」と願う『若草物語』のジョーとは真逆の「女の子らしさを否定しない」という思想の小説なのだと言われたとき、そしてマシュウの「12人の男の子よりお前がいいよ」「奨学金をとったのは男の子じゃなくて女の子だったじゃないかね」という台詞をあらためて読んだとき、自然と涙がでてきた。普段着はいつもズボンだったけどバレエの発表会で着る衣装も大好きだった子どものころの気持ちを、この小説が受け止めてくれていたのだと気づいた。「ふくらんだ袖を肯定する思想」というフレーズがまた憎い。 とにかく最初から最後まで斎藤美奈子節が炸裂していて、フェミニズム的な観点からそれぞれの少女観・家庭観・男女観などにバサバサ切り込んでいく。「おとぎ話の王子ってものは、親の威光で食ってるくせに女を容姿で判断するような男ばかりです」が最高。語りがあまりに面白いので今まで少女小説に触れてこなかった人もどれかは読んでみる気になると思う。私は『ふたりのロッテ』が気になった。この本で取り上げられているなかでは唯一男性作者のケストナーによる、離婚と子どもの関係を描いた小説。 古典的な少女小説にはセオリーがあり、型がある。それは子どもの親が気に入らないと買ってもらえないということで、そのために自由と平等を求めたはずの少女たちが最終的には保守的な家庭観に収まっていってしまうことも多い。けれど本当は行間からずっと挑発し続けているのだ、と斎藤さんは言う。結婚をハッピーエンドとして描く作品だって、一旦はそこからはみだした生き方を魅力的にみせることで少女たちに脱線を促していたのだと。だからこそ、その目配せを読み取った少女たちに読み継がれてきたのだと。 そしてこの読みこそが〈少女小説を愛したかつての自分〉を肯定するために斎藤さんが行間を繋ぎ合わせて作りだしたものなのだ。そこがさらりと語られる「あとがき」が最高。子どものころ好きだったものを「本当はくだらないものだった」で終わらせずに大人になった自分の力で掬い上げる。魂の批評だ。
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