裏切られた未来 の商品レビュー
ウインドウズ95の登場から能登半島沖地震発生までのインターネット30年の歴史。 当初は楽観的だったインターネットの未来が、炎上、犯罪、偽情報、陰謀論の温床となっていく「裏切られ」ようを網羅的に述べている。時系列にトピックを列挙し、それに対する知見の引用が続く構成のため単調に感じ...
ウインドウズ95の登場から能登半島沖地震発生までのインターネット30年の歴史。 当初は楽観的だったインターネットの未来が、炎上、犯罪、偽情報、陰謀論の温床となっていく「裏切られ」ようを網羅的に述べている。時系列にトピックを列挙し、それに対する知見の引用が続く構成のため単調に感じられ読む楽しさはあまりなかった。 かつてネットは権力から自由になって人々をより民主的な世界に導いたり、集合知でよりよい未来を開く可能性があるとされた。だが実際には、人々は同じ考えの人たちの中でのみ交友し(フィルターバブル、エコーチェンバー)、自由と無料を謳うフリーの場は暇人の溜まり場になり、集合知とは真逆の集合愚を呈した。 ネットで議論などできない。大半の人々は書かれている内容ではなく場の空気を読んで発言しているだけ。 広告ビジネスにおいてはアンチも客になるという倒錯。だから悪質なサイトの取締りはされない。 あえてする売名目的の炎上(無名より悪名)の蔓延。SNSへの投稿で承認欲求と自己顕示欲を肥大化させる人々の登場とその裏返しとしての嫉妬、中傷。 アメリカでは陰謀論に影響された「普通の人々」による議会襲撃事件まで起きた。 注目されたいがための、あるいは軽い気持ちの遊びとしてのフェイク投稿とその拡散による災害時の混乱。 「アラブの春」などインターネットによって社会を民主的な方向へ動かす出来事もあったが、全体としてはネットはその便利さと引き換えに多くの弊害を生み出したのではないだろうか。そう言ったところでもはやネットがない時代には戻れない。うまく付き合っていくしかないのだ。 自分は2000年代前半からネットを使うようになった。当時はスマホ普及前でパソコンでの利用がメインだった。その頃から2011年の震災前後くらいまではインターネットにどっぷり浸かっていた。ブログや匿名掲示板などで普通の人が公には言えないような本音を書いているのを読むのがとても新鮮で面白かった。 だが今はもう違う。 スマホの普及によりマス層が流入してきて以降、またネットが生活に不可欠なインフラとなってしまって以降、ネットはどんどんつまらなくなってきたし居心地悪くなった。誇大な表現、真偽不明の情報、ビジネス誘導、ページを開くと起動する動画広告など、ネットを閲覧していてもストレスを感じる場面が多すぎる。 かつてネットは現実からの逃避先だった。 でも今のネットはそこから逃げ出す場所になっている。 俺自身が今を楽しめない、過去を懐かしむだけの老害であることは承知の上で、それでもそう思う。 最近はネットを利用する時間を意識して減らしている。面白くなければ自然と利用しなくなるから意識する必要もないのかもしれないが。かつてテレビもそうだった。今自室にあるテレビは地上波が受信できない。それで不都合なく10年以上暮らしている。いずれネットもそうなるのだろう。 代わりに本を読み、映画を見、散歩をしている。
Posted by
- 1