あいにくあんたのためじゃない の商品レビュー
ネットやSNSの発達で、過敏・過剰になる現代社会。生きにくさに拍車がかかる一方だけれど、それでもなんとか生きていくほかない。 そんな世の中を生き抜くための勇気が湧いてくる、人生応援短編集。 ◇ 発端は某ラーメン情報誌に掲載された「中華そば のぞみ」...
ネットやSNSの発達で、過敏・過剰になる現代社会。生きにくさに拍車がかかる一方だけれど、それでもなんとか生きていくほかない。 そんな世の中を生き抜くための勇気が湧いてくる、人生応援短編集。 ◇ 発端は某ラーメン情報誌に掲載された「中華そば のぞみ」の記名入り取材記事だった。 記事では、「全方位型淡麗ラーメン」の旗手としてミシュラン2つ星を獲得したほどの洗練されたこだわりの味に対する賞賛の他、外国人客はもちろん、子ども連れや身体障害者にも配慮された接客姿勢にも賛辞が贈られている。 さらに「ラーメン評論家入店おことわり」の噂についての質問に対して店主が語ったことばも取り上げられ、好意的にまとめられていた。 その紹介記事がネットに転載されてから11時間が経った。ラーメン評論家の佐橋ラー油は、自分が何もコメントしていないにも関わらず、自身がネット上で炎上していく様を見つめていた。 「のぞみ」から出禁を食らっているのは確かに自分だ。けれど、記事のなかで店主は佐橋の「さ」の字も出していない。 なのにネットではけしからん評論家は佐橋だと特定され、バッシングが始まろうとしていたのだった。( 第1話「めんや 評論家おことわり」) ※全6話。 * * * * * 図書館で予約したのが4月。手元に届いたのが師走に入ってからのことでした。 全6話で、どれもなかなかおもしろい。どの話も中盤過ぎまでもやもやしますが、最後にほっとさせてくれる内容です。 個人的に気に入った話は、4つ。 イチオシは第1話と第4話「パティオ8」です。どちらも最後にスカッとするので、読み終えて元気が湧いてくる気がしました。 また、第3話「トリアージ2020」は、コロナ禍の孤独やしんどさが描かれたあと、ほろっとさせられるラストがあり、ハートウォーミングなお話になっています。プチサスペンスでもあるのでお好きな方には楽しめると思います。 そして最後まで不気味な空気が漂ったままなのが、第5話「商店街マダムショップは何故潰れないのか?」です。 読み終えた直後は「なんだかなあ」と思ったのに、あとからジワジワ潤みてくるようなホラーテイストの作品です。 ( 好き嫌いが分かれると思います。) 感動的な物語がお好みの方にはお勧めしませんが、まあ来年もなんとか頑張ってみようかなという気になる柚麻ワールドでした。
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人気の本、ということで読んでみた。 食べ物、食事を軸に、怒れる人が出てくる短編集。 この著者の本は何冊か読んでいるけど、リアルで本当にうまいなぁと思う。そして出てくる料理がどれも美味しそう。 「パティオ8」はコロナ禍をよく描いている。2~3年間だったけど、あの閉塞感はすでに過...
人気の本、ということで読んでみた。 食べ物、食事を軸に、怒れる人が出てくる短編集。 この著者の本は何冊か読んでいるけど、リアルで本当にうまいなぁと思う。そして出てくる料理がどれも美味しそう。 「パティオ8」はコロナ禍をよく描いている。2~3年間だったけど、あの閉塞感はすでに過去のものになっているけど、何年か後にはさらに懐かしく思い出すのだろうか?
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もういいよこういう系って思ったけど、こういう本があるから時代の趨勢を知れるし、ニューノーマルが築きあげられるのかなって思った。 読んでる時はいらっとしたりもうやめよっかなって思ったりしたけど、最後まで読んで印象に残ったものもあったから、あながちちゃんと入り込んで読んでたのかもしれ...
もういいよこういう系って思ったけど、こういう本があるから時代の趨勢を知れるし、ニューノーマルが築きあげられるのかなって思った。 読んでる時はいらっとしたりもうやめよっかなって思ったりしたけど、最後まで読んで印象に残ったものもあったから、あながちちゃんと入り込んで読んでたのかもしれない。
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ポップな装丁だけど、中身は主に女性たちが連帯して現実に(というか、大手をふるっている男たちに)復讐する物語。 胸くそ悪いという感想をもつ人もいるだろうし、そこはかとない爽快感をもつ人もいるだろう。 「ふてほど」が今年の流行語大賞に選ばれたように、旧来の価値観に大きな声で物申す世界...
ポップな装丁だけど、中身は主に女性たちが連帯して現実に(というか、大手をふるっている男たちに)復讐する物語。 胸くそ悪いという感想をもつ人もいるだろうし、そこはかとない爽快感をもつ人もいるだろう。 「ふてほど」が今年の流行語大賞に選ばれたように、旧来の価値観に大きな声で物申す世界に、私は救いを感じる。
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直木賞候補!? 新聞書評でもちょっと話題だったり(数紙が取り上げてた)、夏前に、やたら目にしていて、図書館に予約を入れたのが5月末。半年以上待たされた。 短編が6つ。 今どきなんだろうなぁ。ネット社会、SNSに群れる人たちがやたらおおい。あるいは、やろうと思ってやらないな...
直木賞候補!? 新聞書評でもちょっと話題だったり(数紙が取り上げてた)、夏前に、やたら目にしていて、図書館に予約を入れたのが5月末。半年以上待たされた。 短編が6つ。 今どきなんだろうなぁ。ネット社会、SNSに群れる人たちがやたらおおい。あるいは、やろうと思ってやらないなにものでもない一人前未満の人 etc., etc...。 アラカンの周りには少ない人種なので、その行動様式を知るにはよかったか。 こういう登場人物たちに、今の多くの読者層は共感を覚えるのか? あるいは、自分の周りのもいるいると(あるいは、自分もその一派だと)溜飲を下げるのか? なんとも、イタタマレナイ気持ちで読んだ。 とはいえ、昔も田山花袋の「蒲団」のような引籠りといった社会性の欠如した男を扱った作品もあった。なにも、世の手本、憧れの存在ばかりを主人公とする必要もないか。 また、コロナ禍の発表作品なので、時代を反映させたものであるのかもしれない。 表題作は収録されてないのね? なんだか、本書そのものが「あんたのためじゃない」と言われた気がする。
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#あいにくあんたのためじゃない #柚木麻子 さん #読了 淡々と物語が進んでいく印象。コロナ禍中での日常での温かさのある話や復讐劇、少しピリッとしたスパイスがある話など6編の短編集。 近年の世相が反映された作品。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
短編小説。 全体として、コロナ期を通して活性化したオンラインコミュニティという空間での活動や体験が、どう私たちの実生活に侵入し、良くも悪くも影響を与えているのか、与えうるのか、ということをあらためて考えさせられました。 『めんや 評論家おことわり』 ラーメン評論家の佐橋の活動の有害性が浮き彫りになる。こういうことはあまり知らなかったけれど、小説にされてるってことは現実の話でもあるんだと思うと、ひどいですね。 今は誰もがSNSなどでレビューを投稿する時代で、逆にその情報を皆が見て頼りにしている状況だからこそ、デマや悪意を持った投稿が簡単に影響をもって、経済活動に被害を与えるだけではなく、人を傷つける。お店にとっては広告費無料で宣伝されるというプラスの側面もあるけれど、本書で扱われていた課題は、全く関係ないお客さんへの被害。完全に許されるものではない!!!考えたいテーマではないのかもしれないけれど、劇にしてしまう作家さんの技ですね。 『BAKESHOP MIRAY’S』 秀実と未怜、一般の社会人と学生の関わり合い。どちらも正直頼りない。人を助けようとしているのか、見栄を張ろうとしているのか、6万円の本格的オーブンをいつか買って、焼き菓子屋を回転させたいと夢を語る未怜に、酔っぱらった際の秀美がそれを購入して…。中途半端な行為が空回る。 『トリアージ2020』 コロナ渦のお話で、これもSNS上でできた人間関係をベースにしたお話だけれども、そこまですごい嫌な登場人物は出てこなくてまったりしててよかった。コロナ期間に一人、出産を準備する女性と、SNS上で知り合った、たくさんのフォロワーを持つ匿名インフルエンサーの女性とその母親の、心通わすお話。 『パティオ8』 こちらもコロナ期の不思議な時空間を思い出す。在宅勤務、自分からするのはいいけど、必要に迫られてするのは大変だよなーと思う。お互いに。 『商店街マダムショップは何故潰れないのか?』 ちょっと架空の入ったようなお話なんだけど、街を守るマダムの存在、普段誰も気づいていない力、それを示すような、お話。パリに買い付けに行くとか、その非日常な感じがロマンがあって、そういうところがさらに見えない力みたいなものがあるじゃないかとおもわせる。蛙。ジブリ『耳をすませば』のバロンを思い起こすからという効果も働いているかも。 『スター誕生』 売れない元アイドルという、こちらはまたまた嫌な登場人物ではありますが、でも本当に芸能人とかって、表の顔と私生活の個人をどう保っているのか、複雑そうだなーと思う。
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柚木麻子さんの作品ははじめて読み、こちらの本は短編が6つに分かれて構成されていました。 「めんや」はネット被害、女性蔑視やLGBTQなど、いまの社会問題も含まれたラーメンストーリーで、かなり根に持った環境で復讐系が強かったです。 「Bakeshop Mirey’s」は良かれと...
柚木麻子さんの作品ははじめて読み、こちらの本は短編が6つに分かれて構成されていました。 「めんや」はネット被害、女性蔑視やLGBTQなど、いまの社会問題も含まれたラーメンストーリーで、かなり根に持った環境で復讐系が強かったです。 「Bakeshop Mirey’s」は良かれと思ってやっても、相手は本当に喜ぶだろうか。では逆に嫌味に捉えて怒りになるだろうか。それのどちらになるのか、意外なオチが後を引きました。 「トリアージュ2020」では、シングルマザーとして妊娠して、ひとりで不安の中Twitterで知り合った人との出会いでしたが、どうなるのかと思いましたが、最後はホッとしました。 「ビニールプールの水がゼリーみたいに横に揺れた。」いい表現です。 「パティオ8」というタイトルなのに、パティオ6というマンション名からはじまり、中庭を口の字形で取り巻いた平家マンション内で起きるいざこざです。ちょっと意味不明でした。 「商店街マダムショップは何故潰れないのか?」 昔ながらの商店街に行くとこういう店ありますね。 「駅からタコの足のように伸びているペデストリアンデッキの影」いい表現です。 でもこれも最後のオチが意味不明でしたが、もしかしてあの店とこの店は繋がっていたってこと? 最後の「スター誕生日」では、若いときタレントで人気があっても2,30年経つと仕事減っていく中、youtubeに突然登場した素人のほうが面白いと気づき、その素人を探すが、、、 全体的に残念な男たちのように表現されていて、あながち心当たりもあり反省してばかりでした。
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コロナ禍での閉塞感やSNSなどで日常にたまっていくストレス。そんな鬱憤を晴らすような短編集。面白く読んだものもあったけれど、全体に気が乗らなかったな。
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『BAKESHOP MIREY’S』が特に良かった。未怜の、周りには理解されにくい感情の描写が素晴らしい。これは芥川賞の方でもいいのではと思った。しかし『BUTTER』もだったけどこの人の作品は少食の自分には読んでるだけで胃もたれしてくる…。
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