妖精学者の夏時間 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
最低でも、「大好き」と力強く、躊躇いなく、心の奥底から断言すべき漫画家の新作を、出ていると一切、知らぬ状態で、書店で見つけた時の喜びを、どう表現すべきだろうか、いつも迷う。 他の漫画を例に挙げるのであれば、WJで『HUNTER×HUNTER』の連載が再開した時に匹敵する。つい、最近だと、『テラフォーマーズ』の連載が、ついに復活したので、その時の喜びの量にも近い。単行本であれば、『ドリフターズ』や『ごほうびごはん』の最新刊が出た時も、同じくらい嬉しい、私は。 にしても、推している漫画家の情報は、常に新鮮なモノを得ておくべきじゃないか、と他の漫画読みからツッコまれてしまうかなぁ。 その辺りはさておき、みなぎ先生は、私の推している青年漫画家の中でも、上位の上位、最上位に位置している存在だ。それこそ、藤田和日郎先生や羽海野チカ先生、CLAMP先生などと同じくらいの推しだ。みなぎ先生は、恐れ多い、と言うかもしれないが、これは、私にとっての感覚だから、みなぎ先生であっても、文句は言わせない。 あくまで、私の意見ではあるけど、絵柄やストーリー、キャラクターなど、好きな理由がパッと出るのは、まだ、「大好き」が浅い作品のような気がする。私は、この作品のどこがグッと来て、「大好き」なのか、考えて、答えが出ない作品の方が、「大好き」の度合いは結構、強い、と思っている。みなぎ先生の作品は、どれも、そうなのだ。 この『妖精学者の夏時間』で主役を張っているのが、『足洗邸の住人たち。』でも、間違いなく、人気上位であろう「時計男」だ。本名は、妖精と関わり合う職業柄からか、常に隠している。なので、きっと、みなぎ先生も知らないだろう。 そんな「時計男」もしくは“教授”が、妖精伝説の本拠地と言っても過言ではないブリテン諸島を舞台に、妖精らに振り回されながらも、人間らしさを全開&全力に出して、泥臭い戦いを、この作品では魅せてくれている。 彼は、超常的な特異能力こそ有しているが、基本的には、人間としての軸を失っていない。妖精の怖さを知ってはいるが、決して、必要以上に恐れず、敬いながらも壁は作らず、節度を保った適度な友情を常に示している。そんなブレないキャラクター性が、彼の人気を構成しているんだろう、と私は確信している。 “教授”と契約している妖精らが活躍するバトルシーンも派手ではあるが、決して、理を無視したメチャクチャなものじゃなく、相手の特性をしっかりと理解し、それを上手く利用する事で、勝利と言うより、自分の優位性を築き、生存を確保しているってのも魅力の一つか。 しかし、アレだなぁ、なまじ、この『妖精学者の夏時間』を読んだ事で、みなぎ先生への大好きがますます強まって、次の新刊は、いつ出るんだろうか、とモヤモヤする日々をまたしても、過ごさなきゃならんのか・・・・・・せめて、年末くらいには、もう一冊、出てくれんだろうか。欲を言えば、この一件で縁が出来たモルガン・ル・フェ、クイーン・マブと一緒に、大暴れして欲しいわぁ。『足洗邸の住人たち。』で見せてくれた、クロノス=クロノス形態がまた、魅たいッ この台詞を引用に選んだのは、「時計男」の強さ、底知れなさ、何より、彼のアイデンティティが、しっかりと視えるものだからだ。 器が小さくない男は、自分を、よく知っている。だから、敵を知る努力を惜しまず、自分の手札を蔑ろにせず、なおかつ、驕る事も無く、相手の手札をどういなし、場を円満に収めるか、を冷静に計算して、大胆な一手を、ここぞって時に打てる。 「ずいぶん慎重に作戦、立てるんですねー」 「当たり前だ。話が通じない相手だった時の事前対策はしねーと、ヤベー。なんせ、こっちは“力”のないヤベー“人間”なんだからな」 「たーしかに。忘れてたね!」 「故に、“情報収集・活用能力”は、人間の基本にして、最大の武器なのだよ」(byギリー・ドゥ、アブラアム・トゥルビヨン) こちらの台詞を引用に選んだのは、シンプルにカッコいいからだ。 こういう決め台詞があるキャラって、良いですよね。 「どーだ?ヤベーくらいヤベーだろ」(byアブラアム・トゥルビヨン)
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