みんなで世界を変える!小さな革命のすすめ の商品レビュー
本書のタイトルを日本で唱えようものなら、まず周りから人が離れていくだろう。「一体何をしでかす気でいるのか」と。 著者の経歴にはライターの他、「アクティビスト」(活動家・運動家)なんて書いてある。自ら選書しておいてなんだが、全体的に怪しい…。しかも本書は児童向けときている。 怖いも...
本書のタイトルを日本で唱えようものなら、まず周りから人が離れていくだろう。「一体何をしでかす気でいるのか」と。 著者の経歴にはライターの他、「アクティビスト」(活動家・運動家)なんて書いてある。自ら選書しておいてなんだが、全体的に怪しい…。しかも本書は児童向けときている。 怖いもの見たさでその「活動手記」を辿った。 「社会に出てみてわかったのは、ただ漫然と生きるには、人生は長すぎるということです」 幼い頃から議論が大好きで、疑問に思ったことはその場で聞かずにいられない。周囲はそんな彼女を認めようとせず「マイノリティ」視してくる有様で、ずっと嫌気がさしていたという。 洋楽や短期留学を機に、多様な人々を受け入れるニューヨークへの憧れを募らせて現地就職。退職後もニューヨークを拠点に、アクティビストとして様々な活動に従事してきた。 著者曰くアクティビストとは、「社会をよりよくするためのアクションをしている人」のこと。 巻頭の図解でも紹介されている通り、活動の種類は様々だ。プラカードを手に街を行進するデモ(マーチ)・ストライキ・SNSでのハッシュタグ運動(近年では#metooが有名)等、海外のニュースではお馴染みの光景である。 日本でも社会運動を起こすこと自体は禁止されていない。 しかし近年「環境活動家」と名乗る輩たちの暴走など目に余る事例も多くあることから、自分自身表立った「運動」に対して不信感を抱いていたりする。側からみれば「運動」と称して好き勝手に振る舞ったり、自己満に浸っているだけなのでは?と。 では、著者にとってのよりよい社会とは何なのか。 「どんな場所に、どんな肉体やどんな性質を持って生まれてきても、いじめられたり、意思にそぐわないことをされたり、暴力をふるわれたりせずに、安全にこまらずくらすことができ、だれもが自分自身でいられる安全でやさしい社会です」 その理想は(やたら前振りが長かった)彼女の半生にまんまリンクしていた。マイノリティだからと度外視されない社会…。国籍や肌の色だけでなく、本書ではマイノリティの定義が幅広く設定されている。 例えば現代の女性もマイノリティの性質があるというのが、今回新しく得た視点だった。 特権は大抵「マジョリティ」側に与えられるもの。男性よりも少ない給与額など、現代の女性には受け取る権利が少ない…。国や地球規模でなくても、自分自身・あるいは後輩女子たちのために権利を勝ち取ろうとするのも立派な「革命」に入るのだ。 「生きることは政治的なこと、〔中略〕この言葉には、わたしたちは、生きているだけで政治に参加しているのだ、という意味もあります」 中絶反対に対する抗議やトランプ政権への苦言と、本書には客観性というものが皆無である。心を痛めたニュースを自分ごととして捉えることが、よりよい社会を目指す第一歩となる。それに続く活動のかたちは何だって良い。 何より大切なのは、「よりよい」の方向性を見失わないことだろう。でないと、それこそただの自称アクティビストでしかなくなる。
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