〈死〉からはじまるクラシック音楽入門 の商品レビュー
本書のプロローグは「超人バロム・1」の主題歌を聴くと泣きそうになるという松本人志の話が18ページにも渡り展開されている。 ここを読んで嫌な予感がした。もっと言えば、本書の一番最初のまえがきの書き出し方、『灰色の服に身をつつんだ男がやって来て、突然こんな話を切りだした。「死の音楽...
本書のプロローグは「超人バロム・1」の主題歌を聴くと泣きそうになるという松本人志の話が18ページにも渡り展開されている。 ここを読んで嫌な予感がした。もっと言えば、本書の一番最初のまえがきの書き出し方、『灰色の服に身をつつんだ男がやって来て、突然こんな話を切りだした。「死の音楽について書いてくれるよう、あなたに頼みたい」』という部分から、嫌な予感はしていたのだが...。 プロローグは読者に興味を持たせる「つかみ」の部分なのに、ここが面白くない(感性に合わない)と、その先はもっとつまらないものになる可能性があるからだ。このプロローグは魅力的ではないし、テーマからズレている。そして何よりも面白くないのが最大の難点だ。 そして読み進めるうちに、嫌な予感が的中したことに気付く。 前半はまだマシだったが、レクイエムの章が終わった後半は特に、〇〇といえば××という具合に、知っていることを脈絡なく盛り込んであり、話題が飛びすぎていると感じることも少なくなかった。読んでいる途中でウンザリしてくることが何度もあり、読書を中断することが多々あった。雑談じゃないんだから、もっとテーマを絞って書いてくれと言いたくなる。まえがきによると、実際にはU氏、M氏、著者の3人の合作というが、そのことが関係しているのだろうか? 例えば、水木茂しげるがゲーテを愛読していたという話は、死の音楽を語る本の中にはまったく必要がない。 著者は、紙幅がないという理由で、本書のメインディッシュともいえる【代表的な「レクイエム 」曲53選】から、ラ・リュー、ラッスス、モラーレス、ジル、ハッセ、ノイコム等を落としており、これらの作曲家たちのレクイエムを扱えなかったのは残念だと書いている。だが、入れようと思えばいくらでも入ったはずだ。実際には水木しげるやエヴァンゲリオンの話など、本来ならあえて入れる必要のない話をたくさん入れているのだから。 レクイエムと名の付く曲は多いので、例えば、フィリップ・グラスの交響曲第5番「レクイエム、詩人、顕現」などは外れても仕方がないにせよ、先ほど挙げた作曲家のレクイエムくらいは外してほしくなかった。 本書で褒められるのは、この【代表的な「レクイエム 」曲53選】くらいだ。70ページに及ぶこの部分は、かつて「200CD〜」というタイトルで多数出版された「200音楽書シリーズ」のように曲紹介と名盤紹介というフォーマットを使い、見やすくまとまっていた。CDの紹介文章も考えられていて、この盤を選んだ理由もなるほどと思わせるものがあり、うまく書ける力量があることは十分に認められる。 ここを見ると、この著者は限られた文字数で書く方が合っていると思われる。このフォーマットをメインにして、レクイエム、葬送行進曲などの死にまつわる曲紹介をしていれば、評価は上がっていただろう。曲紹介をもっと増やして、「レクイエム名曲名盤」というコンセプトで作り直せば、とても良い本ができるのではないか。 内容のほかに気になったのは、文章がカッコと同じ役割で文章中に割り込む、二倍ダーシ(ダッシ)――が多用されているためとても読みづらかったということだ。 例) P.216より 教会の中に止まっていた/あえて止め置かれていた音楽が、世谷へと溢れ出ていき――逆にいえば世俗の音楽が聖なる領域へと侵入し――、世俗の音楽と融合する条件が整ってきたのだ。 例に挙げた文章はまだマシな方で、――に挟まれた文字が2、3行に及ぶものもあり、読みやすさを妨げている。 読後の印象は「散漫な本」であった。あとがき部分に、「死と音楽との関係について、結局、結論めいたことを述べることができなかった」と書いているが、それはどんな言い訳であろう。時間制限のある会議中に結論が出なかったということなら話はわかるが、文章なのだから書き直せば良かったのではないか。 久しぶり出版された、レクイエムをたくさん盛り込んだ本であったが、うまく書く力量を持ちながらも、うまくまとまっていないのが残念であった。
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タイトルがクラシック音楽入門となってますが、中身はクラシック音楽初心者お断りとなってます。 よほどのクラシック好きでなければ名前も聞いたことないし、存在も知らない作曲家が多数出てきます。 文章もわかりやすいし、作曲家たちの死への向き合い方も面白く読めただけに、有名作曲家に絞っ...
タイトルがクラシック音楽入門となってますが、中身はクラシック音楽初心者お断りとなってます。 よほどのクラシック好きでなければ名前も聞いたことないし、存在も知らない作曲家が多数出てきます。 文章もわかりやすいし、作曲家たちの死への向き合い方も面白く読めただけに、有名作曲家に絞ってくれたらよかったのにな、というのが正直な感想でした。
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