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ウクライナとロシアは情報戦をどう戦っているか の商品レビュー

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2024/03/15

少し難しいような気もする事柄に関して、専門的な知見も交え、それを判り易く説きながら主題に迫るというのは、こういうような本に期待される役割だと思う。本書はそういう役割を確りと担っている。大変に有益な一冊であると思った。興味深く読了した。 「インテリジェンス」というような用語も使われ...

少し難しいような気もする事柄に関して、専門的な知見も交え、それを判り易く説きながら主題に迫るというのは、こういうような本に期待される役割だと思う。本書はそういう役割を確りと担っている。大変に有益な一冊であると思った。興味深く読了した。 「インテリジェンス」というような用語も使われる、所謂「情報戦」というような事柄だが、何か「凄く遠い事」のような気がしないでもない。が、例えば「ロシア・ウクライナ戦争」というような事柄に関しては、種々の情報発信、報道等を通じて、政策から経済活動、その他の様々な社会の動きの流れが形作られていて、或る意味では「遠い国の出来事に既に巻き込まれている?」という様相も在るのかもしれない。 本書では、虚実様々な情報が飛び交っていると見受けられるロシア・ウクライナ戦争を巡って、様々な話題が取上げられている。 一方の陣営が他方の陣営に攻撃を加えて損害を生じさせた場合、その損害を少し大きく伝えようとする。他方で損害を生じてしまった側は、損害を少し小さく伝えようとする。そういうことが重なり、「戦場の真実」というようなモノは些か解り悪くなって時日が経過している。古今の様々な戦争で見受けられることかもしれないが、ロシア・ウクライナ戦争でもそれが繰り返されている。そして情報化が進展している中で、そういう度合いが深まっているかもしれない。本書ではそういう事柄が色々と挙げられている。 また例えば「プロパガンダ」、「PR」、「宣伝」、「広報」というような、曖昧な区別で用いられるかもしれない語句を挙げて、その差異を説きながら一定の定義を与えるような辺りから問題を解くというような感じなのが非常に好い。 更に、ダムやパイプラインの破壊というような一件や、<ワグネル>という民間軍事会社を巡る件等、ロシア・ウクライナ戦争の中で色々と話題になった事案の解説が為されているのも大変に好い。 加えて本書では「フェイクニュース」というような、近年のより大きな問題に関連することも論じられている。大変に重要なテーマであると思う。 本書で言及されているが、第1次大戦の頃から、「戦争のプロパガンダ」というようなモノは在る。概ね「戦争はしたくない。しかし敵は一方的に戦争を望んだ。悪魔のような敵指導者が在る。領土や覇権のためではない偉大な使命のために戦わなければならない。意図しない犠牲も生じるが、敵は残虐な振舞いに及んでいる。卑劣な作戦や武器を用いる敵だ。こちらの被害は些少だが、相手の被害は甚大だ。誰もが我々の戦いを支持している。神聖な大義は我が方に在る。疑義を投げ掛ける者は裏切り者だ」という内容だ。これは第2次大戦や、以降の様々な戦いで繰り返されている。このロシア・ウクライナ戦争でも繰り返されていると見受けられる。 様々な課題も抱えてはいるものの、4千万人もの人達が普通に暮らす、或いは暮らそうとしていたという国で、社会が損なわれて死傷者が多く発生してしまっているロシア・ウクライナ戦争であると思う。が、何やら“正義”のぶつかり合いになって「正義に疑義を投げ掛ける者は裏切り者だ」というような空気感が、遠く離れた国の中でさえも醸成されているような気がしないではない。その辺りに、或る意味では「遠い国の出来事に既に巻き込まれている?」というような感じ方をしてしまう。「大変なこと」が起こっているのだから、「如何して?如何いう経過?」を学び、「今、何が起こっている?」を少しなりとも可能な範囲で知り、先々を考えようとすることは必要なのだと思う。“情報戦”に過度に引っ張られる必然性は高くはないと感じてる。 ロシアがウクライナに全面的に侵攻という2022年2月の動きから、ロシア・ウクライナ戦争は「第2次」というような様相になり、そこから丸2年が過ぎて3年目に入った。収束は未だ見えない。そういう様子であるからこそ、色々な本を読んで、学ぶ、知る、考えるというようなことは続けるべきなのであろう。本書は好い材料だと思う。

Posted byブクログ