アテネ 最期の輝き の商品レビュー
ペロポネソス戦争後のギリシアというと、B.C.338年、フィリポス二世率いるマケドニア軍にカイロネイアの戦いで敗れ、その後のアレクサンダー大王の東征もありで、すっかり脇役の存在になってしまったとの印象を持っていた。 しかし、カイロネイアの敗戦後、アテネはフィリポス二世から極め...
ペロポネソス戦争後のギリシアというと、B.C.338年、フィリポス二世率いるマケドニア軍にカイロネイアの戦いで敗れ、その後のアレクサンダー大王の東征もありで、すっかり脇役の存在になってしまったとの印象を持っていた。 しかし、カイロネイアの敗戦後、アテネはフィリポス二世から極めて寛大に扱われたため、B.C.323年のラミア戦争(アレクサンドロス王死去後のギリシア・マケドニア間の戦争)勃発まで、前例のない「平和」と「繁栄」の時代であったという。そして著者は、この時代の代表的な政治家・弁論家であるデモステネスを主人公に、アテネ民主政の実態を描き出していく。 だいたいこのデモステネスという人物を知らなかったが、プルタルコスの『英雄伝』にも取り上げられているほどの人らしい。そして、キケロからは「完全無欠の弁論家」と評され、また、急進的反マケドニア派の代表的人物の一人であったとのこと。そんな彼を中心にして、この時代のアテネの政治家たちの闘いを通して、アテネ政治の実像を明らかにしていく。資料の制約はあるとしても、この時代は比較的資料が残っている方らしい。そのようにして残された、例えば裁判における弁論等からいろいろな事実を明らかにしていく著者の手際は鮮やかで、読んでいてスリリングな印象を持つほどだ。 あまり馴染みのない時代についての著作ではあるが、歴史における事実や評価をどのように捉えていくか考える上で、とても参考になる本だと思う。
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