国際法以後 の商品レビュー
あとがきから引用すると「本書はいわゆる国際法学者向けに書かれた本ではない。国際法の本であるならそのしきたりの枠の中で書かれることが必要だろう」とある。 しかし、だからといって一般向けの内容というほど気軽なものではない。「…(本書の内容が)非専門家の知的な関心に応えうるかどうかであ...
あとがきから引用すると「本書はいわゆる国際法学者向けに書かれた本ではない。国際法の本であるならそのしきたりの枠の中で書かれることが必要だろう」とある。 しかし、だからといって一般向けの内容というほど気軽なものではない。「…(本書の内容が)非専門家の知的な関心に応えうるかどうかである。非専門家と言っても、およそ知的な活動とは無縁な、読書さえも縁遠い人を想定してはいない。(中略)…本書は指南本とかハウトゥー本ではないから、これによって一気に国際法。強化する方法や世界を改善する方法がわかるなどということは論外である。」 ぼくは非専門家かつ知的な活動とは無縁な読者だけれども、本書はとてもおもしろかった。国際法に対しても国際法学に対しても無知であるために、読み終わるまで2週間近くかかったが、それは本書が読みづらいだとか難解だとか、そのような理由ではなく、あくまでもぼくが国際法とその理論に対して素人だからに過ぎない。 それでもおもしろく読めたのは、徹底したロジカルさと文章の透明性、なによりも「国際法以後」というタイトルが示すとおり、この先への展望を示しているところだろう。 国際法とそれを支える国際法学には、本書で書かれているとおり批判すべぎ部分は多くある。実際、わざわざ論理的な批判になど目を通すまでもなく、ロシアのウクライナ侵略にせよイスラエルによるパレスチナへの攻撃にせよ、国際法が機能していないことは明白である。そんなことは何も考えずにニュースを眺めるだけでもわかる。 ただ、その批判の先にまで辿り着こうとする希望的な内容も書かれている。本書ラストにあたる第7章「時間を巻き戻すー理論だけにできること」と題された章はとてもよかった。いわゆる時際法を主役にして、倫理について書かれている。論理を貫いた結果、最終的に倫理へと辿り着く過程は感動的でさえあった。
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