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密航のち洗濯 の商品レビュー

4.7

9件のお客様レビュー

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2024/09/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

1911年生まれの父は12歳の時、兄を頼って日本に渡り、それから何度も朝鮮との間を行ったり来たりする。その人生を彷彿とさせる小説短歌や日記、子どもたちへのインタビューを元に、貧困の中で生き抜いた生涯を描いている。特に密航の悲惨さや国籍問題など、今も解決されていない移民問題も含めて非常に読み応えのある実録である。

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2024/06/22

心に沁みました。 「一人の人間の故郷を奪い、そこに戻ることを阻んだ諸要因を肯定するつもりはない。だが、人も場所も変わり続ける。尹紫遠の居場所はとうの昔になくなっていたはずだ。そういうものだろう。 」

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2024/06/16

戦後の在日朝鮮人史の始まりと、日本政府の外国人管理システムのそれとは、ぴったり重なっている(277頁)日本の移民、難民の受け入れ経緯を知るに在日一世の書き表した生活史は欠かせないはずが、あまりにも数が少ないことも分かりました。

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2024/06/10

表紙を捲ると家族のプロフィールが書いてあるんだけど、長男と次男は上智を卒業して金融機関に就職しているんだけど、それに対して長女の逸己さんが「定時制高校を経て20歳で長男を出産」という箇所にひっかかりながら読み進めた。 主題の密航と話は逸れるのだが、逸己さんが「女だから」という理...

表紙を捲ると家族のプロフィールが書いてあるんだけど、長男と次男は上智を卒業して金融機関に就職しているんだけど、それに対して長女の逸己さんが「定時制高校を経て20歳で長男を出産」という箇所にひっかかりながら読み進めた。 主題の密航と話は逸れるのだが、逸己さんが「女だから」という理由で当たり前のように進学しなかったり(逸己さんは妊娠したため定時制高校を卒業できなかった)認知症の母親の面倒を見るために仕事を辞め生活保護を申請するという事実に愕然としてしまった。 女が生まれても何とも思わないけど男だとわかったら涙が止まらない、という父(尹紫遠)の日記もダメージが強かった。 皆想像を絶するような辛い思いをしているのだけど、その中でもさらに弱い立場の人がいる。

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2024/03/26

当たり前のことだけど、私たちは生まれたくて生まれてきたわけではない。いつ何処に生まれてくるかは、ただの偶然‥のはずなのに、なぜこの時代に生きた人々はこんなにも運命の神様に弄ばれるような人生を辿らなければならなかったのか。 立場と時期は違うけれど、私の両親もほぼこの家族と同世代。...

当たり前のことだけど、私たちは生まれたくて生まれてきたわけではない。いつ何処に生まれてくるかは、ただの偶然‥のはずなのに、なぜこの時代に生きた人々はこんなにも運命の神様に弄ばれるような人生を辿らなければならなかったのか。 立場と時期は違うけれど、私の両親もほぼこの家族と同世代。多くは語らなかったが京城での生活や帰国時に可愛がっていた犬を置いてきた話などが唐突に思い出され、読んでいる間ずっと「戦争だけはしちゃいかん。得をするのは遠くから指図する人だけ」と話す母の声が聞こえてくるようだった。今、世界で起こっている戦争は日本にいる私達と一直線に繋がっている。無関心、無関係ではいられない。 資料も多く、きちんと整理された写真、ご家族の話等、最後まで圧倒された一冊。

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2024/02/26

装丁からは想像もせぬ壮絶さだった。敗戦時の密航やコレラ船。日本に住むことになってからの差別と困窮。記録されていないだけで、その当時の人の数だけ絶望があったんだよな…と思いを馳せる。描かれている、白人が黒人を蔑む冷たい目、米や露が東洋人を蔑む目、日本人朝鮮人が互いを憎み合う感情、そ...

装丁からは想像もせぬ壮絶さだった。敗戦時の密航やコレラ船。日本に住むことになってからの差別と困窮。記録されていないだけで、その当時の人の数だけ絶望があったんだよな…と思いを馳せる。描かれている、白人が黒人を蔑む冷たい目、米や露が東洋人を蔑む目、日本人朝鮮人が互いを憎み合う感情、そして徳永ランドリーでも男が女に手をあげる惨状。それで苦労したはずの登志子さんも、後年のボランティアではハンセン病のボランティアでは偏見があったようで…。少し手に障害がある娘の逸己さんが、全てを悟ったような印象で、影ながらこのご家族を支えてらしたように思えた。怒涛の時代の家族の記録。自分の中にもある無意識のうちの差別や偏見と、どう向き合っていけば良いのか、とても考えさせられる。

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2024/01/25

残ってるものの赤裸々さと、残っていないもの、わからないことの重たさが、そのまま丁寧にまとめられていて、ここはわからないんだな、ということの方にむしろ締め付けられるような気持ちになりました。 家族には、記憶装置としての機能があると聞いたことがあります。お兄ちゃんは麻疹にかかったこと...

残ってるものの赤裸々さと、残っていないもの、わからないことの重たさが、そのまま丁寧にまとめられていて、ここはわからないんだな、ということの方にむしろ締め付けられるような気持ちになりました。 家族には、記憶装置としての機能があると聞いたことがあります。お兄ちゃんは麻疹にかかったことあるよとか、おばあちゃんはコーヒーが好きなんだよとか、そういう、他の人にはどうでもいい記憶を、家族は価値判断せずに持っていられる、という意味だったと思います。 シンプルな幸せとは対極にあるように見える家族が、これほどの記憶を残し整理してきた事実が、意外でもあり、救いのようにも感じました。 ひとくくりにした属性ではなく、ひとりに注目する意味も、周辺化された人や物事に注目することの意味も、改めて感じました。おかしいなという感覚を、押さえ込まずにいようと思う本でした。

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2024/01/23

時代や戦争に翻弄されながらも、今より少しでも現状が良くなるようにともがきながらも必死に生きてきた家族のお話。在日在朝関連の本は何冊か読んだけど、今までにはない視点で貴重なお話を読ませてもらいました。戦争をしても誰も幸せになれないのに、その時だけでなく何世代にも影響を及ぼすのに、何...

時代や戦争に翻弄されながらも、今より少しでも現状が良くなるようにともがきながらも必死に生きてきた家族のお話。在日在朝関連の本は何冊か読んだけど、今までにはない視点で貴重なお話を読ませてもらいました。戦争をしても誰も幸せになれないのに、その時だけでなく何世代にも影響を及ぼすのに、何故繰り返すのだろう。

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2024/05/04

出版社(柏書房)のページ https://www.kashiwashobo.co.jp/book/9784760155569 推薦の言葉、内容、目次 「難民支援協会」のページ https://www.refugee.or.jp/fukuzatsu/book01 本書出版までの詳...

出版社(柏書房)のページ https://www.kashiwashobo.co.jp/book/9784760155569 推薦の言葉、内容、目次 「難民支援協会」のページ https://www.refugee.or.jp/fukuzatsu/book01 本書出版までの詳しい経緯と作品の構成 「毎日新聞」書評(20240217 中島京子評) https://mainichi.jp/articles/20240217/ddm/015/070/027000c 「朝日新聞」書評(20240504 安田浩一評) https://digital.asahi.com/articles/DA3S15926949.html

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