夜行列車盛衰史 の商品レビュー
今や絶滅危惧種の夜行列車。鉄道草創期から現代までの歴史を辿る極めて硬派な内容の一冊。 ブルートレインがドンピシャの世代としては懐かしい。 もう少しお役所仕事でなく早期に民営化されていればもっと生き残っていたかも。 大量輸送の手段からジョイフルトレインという流れ。
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「夜行列車」を切り口に、古い時期からの、日本国内での鉄道の盛衰を論じるような内容になっている。或いは鉄道による旅客輸送という切り口で語る、日本社会の変遷という性質を帯びる内容かもしれない。興味深い。出先の書店で眼に留めて入手した一冊だった。紐解き始めると凄く興味深く、素早く読了に...
「夜行列車」を切り口に、古い時期からの、日本国内での鉄道の盛衰を論じるような内容になっている。或いは鉄道による旅客輸送という切り口で語る、日本社会の変遷という性質を帯びる内容かもしれない。興味深い。出先の書店で眼に留めて入手した一冊だった。紐解き始めると凄く興味深く、素早く読了に至った。 現在の時点で「夜行列車」とでも言うと、或る程度高い年代の人達が「昔、〇〇というのが在って…」、「〇〇というのも懐かしいな…」というような調子で何となく話題にする場合が在る、「郷愁が沸き起こるような旧い何か」という程度に聞こえるかもしれない。と言うのも、現在では「夜行列車」という存在、始発から終着迄の運行時間が長く、夜に出発して日付を跨いで翌早朝以降に到着というような運行の列車で、駅の窓口等で普通に乗車券等を求められるのは、日本中で<サンライズ瀬戸/出雲>という例が在るばかりであるからだ。そういうことなので「夜行列車」というモノを、利用経験と共に記憶に留めている方が、日を追って、年を追って少数派になっているように思える。 自身は、色々と「夜行列車」に乗車してみた想い出も多く在る。<サンライズ瀬戸/出雲>という、現在では唯一の存在になってしまっている列車にも乗車してみた経過は在る。そういうことなので、本書を偶々見掛けた時に「これは読まなければならない」と思ったのだ。 「夜行列車」は、鉄道が延伸され、始発から終着迄の距離が伸びて、運転時間が長くなる中で少しずつ登場し、拡がった。日露戦争後の1906年に主要な鉄道路線の国有化ということが在るが、この時期の以前の段階で「夜行列車」は登場していた。そして主要駅間を日付を跨いで運行する様々な列車が現れた。 夜間に列車を運行するとなれば、客車内の照明に関する工夫が必要となる他、夜間に快適に過ごすための寝台車というようなサービスも登場し発展する。加えて、乗車時間が長くなることから食事を摂るというようなサービスも食堂車のようなモノで供するようになる。本書では、そうした車輌の発達に関する経過、技術発展に関する事も取上げられている。また列車編成の長さや、牽引する機関車に関すること等の話題も在って興味深い。 戦時中や戦後暫くの間に列車による旅客輸送が発展し悪かった経過は在るが、1950年代から1970年代位には随分とサービスが拡がった。そして1980年代に入り、「JR化」の経過と「夜行列車」が退潮してしまう動きが在る。 「夜行列車」が退潮してしまう動きが見受けられた時期に関して本書で話題になっているが、それらの一部には自身でも乗車した経過が在って、色々と様子を思い出していた。 こうした相対的に新しい時期に限らず、古い時代に関しても、一部に運行されている列車の様子を思い浮かべることが出来るような描写の節が幾つか在り、読んでいて愉しかった。 更に本書は、「車中で夜を明かす」という列車は、殆どが“クルーズトレイン”ということになってしまっている、昨今の事情に至る迄を網羅している。 少し前、東京の新宿に在る大きなバスターミナルから夜行の都市間バスに乗車してみたことが在った。様子を観ていれば、5分毎というような詰まった感覚で、西へ東へと様々な場所を目指す夜行の都市間バスが続々と出発していた。「夜行の乗物で都市間の移動をしたい人達」が「こんなにも多く居る?!」と少し驚いた。が、普通の「夜行列車」は壊滅的に姿を消してしまっているのだ。「何か、解らない…」と強く感じたのだった。 この「夜行列車」を切り口に、入りろな意味での鉄道や社会の変遷を語る本書は興味深い。広く御薦めしたい。
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