1,800円以上の注文で送料無料

マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する(Ⅲ) の商品レビュー

3.5

2件のお客様レビュー

  1. 5つ

    0

  2. 4つ

    1

  3. 3つ

    1

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2024/08/03

マルクス・ガブリエルは好きなのだが、今のところ読書の相性が良くない。『なぜ世界は存在しないのか』は難し過ぎたし、逆に複数のインタビュー内容が掲載されるようなオムニバス本は浅過ぎる。バリバリの哲学者ゆえ、論文調なら読み難いが、インタビュアーがいると途端に思考の深みが削ぎ落とされて、...

マルクス・ガブリエルは好きなのだが、今のところ読書の相性が良くない。『なぜ世界は存在しないのか』は難し過ぎたし、逆に複数のインタビュー内容が掲載されるようなオムニバス本は浅過ぎる。バリバリの哲学者ゆえ、論文調なら読み難いが、インタビュアーがいると途端に思考の深みが削ぎ落とされて、薄味になるのだ。更にオムニバスだとページ数も少なくなる。本書は、インタビュー形式だが、ガブリエル一人を取り扱う本であり、これならいけるか、と読書を開始。 結果、私にとっては、オムニバス寄り。何だろうな、哲学的思索に触れるならばインタビューでは辿り着けない、聞き手側の経験による出口側の限界というのがあるかも知れない。大衆の代表のように言葉を引き出そうとすれば、自ずと表面的な部分、見た目で判断するような中身になる。学問のルッキズムみたいに。 ー 個と全体についてのこうした思考を経て、ガブリエルは、「倫理資本主義」を育む土壌として日本には可能性があると見る。すなわち、他者の意向にいつも思いをめぐらせる「日本流読心術」と、「ジャパニーズ・カット」のネットワークが、大いに有効だと説くのだ。日本こそ、新時代の資本主義に適性がある、自信を持てという励ましにも聞こえてくる。 ガブリエルが資本主義を幾つかの換言にて捉えようとしたのが、印象的だ。資本主義は「無政府主義に近いシステム」だとか、「単に相互扶助のシステム」だとか。搾取の構造と資本の自己増殖による弱肉強食の構図さえ抑えれば、確かに相互扶助制度には違いない。これを昇華させたものが倫理資本主義というならば、目指す所はそこだという気はする。 しかし、それと社会主義の違いはごく僅かな部分であり、現状と等しく、一国のみ構造を変えるのは難しい。世界共通のコモン税を、脱炭素でもタックスヘイブン規制でも、機能させる所からだろうか。

Posted byブクログ

2024/01/25

「倫理資本主義」利潤ばかり追求して一部の人びとしか潤わない社会ではなく、企業が市場経済で派生する倫理問題を解決する。そこに本当の利益は存在して万人が共有する社会となる。金銭のみを追求する利潤優先は市場も疲弊していく、倫理を改善してこそ資本主義の醸成へと向かう。著者マルクス・ガブリ...

「倫理資本主義」利潤ばかり追求して一部の人びとしか潤わない社会ではなく、企業が市場経済で派生する倫理問題を解決する。そこに本当の利益は存在して万人が共有する社会となる。金銭のみを追求する利潤優先は市場も疲弊していく、倫理を改善してこそ資本主義の醸成へと向かう。著者マルクス・ガブリエルはリップサービスなのか、日本をこの倫理資本主義という概念を試す最適な場所だと述べているが、非正規労働者や男女格差など世界と比較して劣悪だと感じる人びとは少なくないはず。まだまだ日本は倫理面で途上国であり、一部の大企業の戯言でごまかさないように願うばかりなり。

Posted byブクログ