山梔 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
矢川澄子が講談社文芸文庫版で解説を、さらに山尾悠子がこの文庫で解説を寄せている。 少し前に皆川博子「辺境図書館」で知り読みたいと思っていたが、よく考えたら、高原英里「少女領域」で言及されていた。 本書読後に「少女領域」を読んだら、詳細なあらすじもあったので、再読の際は併読を>未来の自分へ。 さらに個人的なメモだが、UAと浅井健一がフロントマンとして組んだバンドAJICOの命名元でもあるらしい。 AJICOは2021年に再開して、2024年にアルバムを出したし、「山梔」初出は1923年なので2023年は阿字子100年記念年でもあったのだ。 家父長制、折檻、家族の甘美さと地獄、創作への耽溺、少女から大人へ、など切り口がたくさんあるが、 何よりも文体が素晴らしかった。 地の文が華麗、唯美、艶やか。 さらに会話の言葉遣いが面白い。 自分を「私」と言わない阿字子の台詞の妙。 母も姉妹も台詞にリフレインが多く、たどたどしいというか甘ったるいというか、実にいい。 が、描かれるのは強烈な悲劇なのだ。 野溝は1897年生まれなので、1899年生まれの川端康成と数歳違い。吉屋信子は1896年生まれ。 川端、吉屋の少女小説の裏側には、無数の阿字子がいたのだろうなぁ。
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一貫して切迫していて胸がつまる、家父長制から逃れようとするのに誰よりも自分自身を縛り付けていて涙。。 『八本脚の蝶』を彷彿とさせる雰囲気。 いきすぎた感傷も詩もない、これは叫び。 英雄譚ではなく何かが好転するわけでもなく、心の底から共感したとして、決して微笑むことができるわけ...
一貫して切迫していて胸がつまる、家父長制から逃れようとするのに誰よりも自分自身を縛り付けていて涙。。 『八本脚の蝶』を彷彿とさせる雰囲気。 いきすぎた感傷も詩もない、これは叫び。 英雄譚ではなく何かが好転するわけでもなく、心の底から共感したとして、決して微笑むことができるわけでもなく、ただずーーっと胸が裂かれる。 自分が大きくなること、周りが当然のように離れてゆくことに対する恐怖よくわかる 「ことばのいらない国」へ本当にゆけたらいい
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