北朝天皇 研究の最前線 の商品レビュー
最近何度も言っているが、室町時代研究が熱い。両統迭立の時代から南北朝時代にかけては皇位継承を巡って天皇家の対立が続いた時代であり、大きくは持明院統と大覚寺統、さらに北朝内では崇光流と後光厳流とが正統を巡って争った。 本書は、北朝天皇、光厳、光明、崇光、後光厳、後円融、後小松、...
最近何度も言っているが、室町時代研究が熱い。両統迭立の時代から南北朝時代にかけては皇位継承を巡って天皇家の対立が続いた時代であり、大きくは持明院統と大覚寺統、さらに北朝内では崇光流と後光厳流とが正統を巡って争った。 本書は、北朝天皇、光厳、光明、崇光、後光厳、後円融、後小松、称光そして後花園の8名の天皇を取り上げ、また義満、義持、義教等室町殿との関わりに焦点を当てていく。 特に興味深かったのは、 〇第六章「北朝は、室町幕府の”傀儡政権”だったのか?」 本章では、北朝と幕府の関係を巡る研究動向が紹介される。北朝の政治構造や訴訟制度の解明などの研究成果により、佐藤進一の権限吸収論、室町殿がいわゆる王権をもって頂点に位置する政権とみる公武統一政権論、これに対し天皇の国家的支配権はなお維持されており、朝廷と幕府は「統一」しないとする公武政権論が主張されてきたことなど。 〇第八章「二十余年、関白に在職した”北朝の柱石”」 二条良基 二条良基と言えば文化人として著名だが、実は関白として「天子御作法」を授け、朝議の遂行に情熱を傾けたことが紹介される。 〇第十二章「なぜ後世になって王統問題が再燃するのか?」 明治期の南北朝正閏論争のことは承知していたが、問題化した政治的思惑は別として、その背景には歴史研究・歴史教育に関する学者間の認識の相違(しかもそれは時代思潮に影響されていた)があったことが理解できた。 天皇位を巡る厳しい争いのあった時代、参考文献を基にさらに理解を深めたい。
Posted by
- 1