中継地にて の商品レビュー
この「回送電車」の中にはとても静かな時間が流れている。 感染病や紛争、自然災害もなにもなかったかのように。 もちろんこれらの文章が書かれた2010年以降には実にいろいろなことがあったが、「言葉との対話」による静謐な時間も間違いなくあったことを思い起こさせてくれる。 「静かに息...
この「回送電車」の中にはとても静かな時間が流れている。 感染病や紛争、自然災害もなにもなかったかのように。 もちろんこれらの文章が書かれた2010年以降には実にいろいろなことがあったが、「言葉との対話」による静謐な時間も間違いなくあったことを思い起こさせてくれる。 「静かに息を吸い、細く息を吐きつづけているうち、ひとつの世界がふっとあらわれ、また消える。同時に、このはかない世界を支えている現実の固い手応えが感じられる」散文に触れることのかけがえのなさに改めて思いをいたす。 そろそろ長編小説を書いてくれないかなあ…。 こんな時代だからこそ、『なずな』や『いつか王子駅で』みたいな作品を読みたいんですけど。
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堀江敏幸の書くものから、ぼくはいつも「声」を聞いてきたように思う。それは堀江自身の「声」でもあり、彼が読み取る/聞き取る作家たちのさまざまな「声」であり、あるいは彼が体感したできごとにまつわる「声」だ。堀江の芯の強い文体(つまり唯一無二の「声」)にいざなわれて読み進めると、主義主...
堀江敏幸の書くものから、ぼくはいつも「声」を聞いてきたように思う。それは堀江自身の「声」でもあり、彼が読み取る/聞き取る作家たちのさまざまな「声」であり、あるいは彼が体感したできごとにまつわる「声」だ。堀江の芯の強い文体(つまり唯一無二の「声」)にいざなわれて読み進めると、主義主張を実に聞えよがしに語る大きな「声」に惑わされたりしておらず、むしろそうしたノイズの洪水からこぼれ落ちるようにして届く「声」をていねいに拾っていることがわかる。悪く言えばいつもながら地味なのだが、この耳の良さもまた唯一無二の境地だ
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注文に応じて生み出された52篇の小さくて大きな世界。変わったことも変わらないことも実感する、回送電車11年ぶりの発車オーライ
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