北海道のヒグマ問題 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
人と接触するヒグマについて書かれた小冊子で、主に記されているのは著者の提唱するヒグマ対策と、まちがったヒグマ対策に対する批判である。 ・素人がヒグマの棲息域に入る際は鉈とホイッスルを持つべき。鉈は言うまでもなく武器としてだが、ヒグマが襲ってくる際は、人に抱きついて爪や牙で攻撃してくる超接近戦となるので、リーチの長い武器は役立たない。クマ避けスプレーというのも効果が薄いらしい。当てられたところで効果が出るまで少し時間があるらしく、攻撃をやめないとのこと。その「少しの時間」というのは人間が殺されるに充分な時間である。 ホイッスルは棲息域を移動する時、定期的に吹くといいらしい。「ラジオをかけながら」「鈴を持ち歩く」はダメで、理由は音が流れっぱなしで人間側も辺りの物音に注意がいかなくなる、風が強い日や川の近くなどだと音量的に無意味である、など。遭遇したクマに話しかけるのはいいらしい。 ・人里に現れるヒグマに対しては、電気柵、有刺鉄線の設置が有効らしい。 また、最近の出没についても理由があるらしく、以前は人里に降りてきたヒグマは銃で撃っていたのだが、殺した場合は当然として、怪我を負った場合もそのヒグマは人里に現れることはない。そしてそのヒグマの子どもも、基本的には親熊の棲息域から出ることはなくなる。ちなみに音だけでは効果がなく、あくまでも「大きな音の鳴る銃器で痛みを与える」ことが重要とのこと。 2000年以降、出没が増えたのは「罠を設置して、それに捕まったヒグマを銃殺する」という方法をとっているからとのこと。これは、罠にかからなかったヒグマは棲息域をさらに広げ、また罠を仕掛けるも、そこでもかからなかったヒグマが…というように、どんどん移動範囲が広がるため、との由。 ・熊対策への批判としては、個体調査への批判が舌鋒鋭い。熊の首にバンドをつけて大きな箱をぶら下げるのだが、野生の熊に負担を与えるわりに、ほぼ意味がないとのこと。たしかに新たな知見が得られることもあるらしいが、それはわざわざ電気発信機をつけなくても可能なこと、とのこと。要するに「楽に調査できるからクマに負担を与えてもいいだろう」という傲慢さに対する批判である。 薄い小冊子のわりに内容はあるのだが、いかんせん編集が雑である。おそらく推敲などされてなく、句読点の打ち方さえ明確に間違っている。「本気で襲いくる熊には。クマ避けスプレーは無意味である。」などといった文章が平気で出てくる。 ほかにも助動詞が統一されていなかったり(ひとつの文章内で、ですます調かと思えば、である調に突然変わる)、唐突な英語表記が出てきたり、おそろく編集はしていない。もしくは事務のバイトみたいなのを雇ってチェックしたのではないだろうか。
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