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紅雀 の商品レビュー

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5件のお客様レビュー

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2024/09/17

 一九三〇年発表の少女小説。お話の展開は、本作発表以前に書かれた数多くの少女小説のお約束ごとを忠実になぞるように進んでいく。意外さには正直乏しいのだけれど、最後のほうのアイテムの使い方は洒落ている。主人公だけでなく、この手の物語で大定番な意地悪な同級生も含め、ほぼすべての登場人物...

 一九三〇年発表の少女小説。お話の展開は、本作発表以前に書かれた数多くの少女小説のお約束ごとを忠実になぞるように進んでいく。意外さには正直乏しいのだけれど、最後のほうのアイテムの使い方は洒落ている。主人公だけでなく、この手の物語で大定番な意地悪な同級生も含め、ほぼすべての登場人物たちが成長していくのがよい。読後感は爽やか。

Posted byブクログ

2024/01/12

大正から昭和初期に活躍された吉屋信子さん。 少女小説の草分けでしょうか。 まさに昭和の乙女の本棚的小説。 文庫化再販です。 そして、このカバーの美しい少女。乙女の本棚の谷崎潤一郎「秘密」のマツオヒロミさんですね。 この絵の少女が、主人公まゆみ。 凛として、育ちが良くて、賢くて、そ...

大正から昭和初期に活躍された吉屋信子さん。 少女小説の草分けでしょうか。 まさに昭和の乙女の本棚的小説。 文庫化再販です。 そして、このカバーの美しい少女。乙女の本棚の谷崎潤一郎「秘密」のマツオヒロミさんですね。 この絵の少女が、主人公まゆみ。 凛として、育ちが良くて、賢くて、そのもの。 勝気な少女まゆみ。 大連で父を亡くし、病弱な母と弟と三人で東京へ向かっていた。その汽車の中で、母も亡くなってしまう。 偶然乗り合わせた女性(男爵家家庭教師)に引き取られることとなる。 小公女を彷彿させる悲運の少女。 美しく賢く、気位は高すぎる。 幸運にも男爵家で暮らせることになるが、ただ甘えている生活が自分で許せず、つい強気の態度をとってしまう。そんな自分が許せず、弟を託し家出。紅雀のブローチから、生い立ちがわかり、 いろんな方向からハッピーエンド。 解説は、柚月麻子さん。田辺聖子さんの吉屋信子愛を語っている。 特にこの紅雀は戦時中の少女達のオアシスだったとのこと。 2023年が没後50年でかなりの作品が再販されたようです。

Posted byブクログ

2023/12/06

巻末の解説を読んで、物語の価値に改めて気付かされた。 受け売りになってしまうが記してみる。 この時代においてロマンチストかつ自我を持った女性が、そして身分や裕福さにとらわれない価値観を持った親子が、これほど生き生きと描かれることがどれほど少女たちによって魅力的だっただろうか。ま...

巻末の解説を読んで、物語の価値に改めて気付かされた。 受け売りになってしまうが記してみる。 この時代においてロマンチストかつ自我を持った女性が、そして身分や裕福さにとらわれない価値観を持った親子が、これほど生き生きと描かれることがどれほど少女たちによって魅力的だっただろうか。また、メインでないポジションに「一般的な少女たち」が共感しやすい篤子というキャラクターを描き、終盤には彼女がストーリーの鍵を握ることとなる。 そして、何より作者吉屋信子の育った環境とも近しい人物がいるとなると、当時の少女たちが少女雑誌に熱狂し、作家という仕事に憧れたというのも頷ける。 こういった背景を知って読むとより面白いと感じた。

Posted byブクログ

2023/12/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

前にも読んだことのある作品だけど、文庫本になったので購入。 主人公のまゆみの、いわゆる可愛げのない性格は、当時の少女小説のヒロインとしては異質なのだろうけど、自我を強く持ち感傷に流されない性質は、令和の今読んでも清々しい。 これが連載当時も大人気だったということは、当時の乙女たちも、まゆみのような女の子に憧れがあったのか、共感するところがあったのか。 最後は、まゆみが子爵の血を引く令嬢だったとわかり、世話をしてくれていた男爵家の若き当主と婚約したらしいハッピーエンドで終わってますが…。 この小説から10年もすれば戦争に突入していて、敗戦後は華族の身分は消えて、多くが没落したのだよなぁと知る、未来の人間としては少し切ない。 でもまゆみの気性なら、戦中戦後の困難も、家族を支えて逞しく乗りきってゆきそうな気がします。

Posted byブクログ

2023/10/29

両親を亡くした薄幸の兄妹、手を差し伸べる家庭教師、居候先のお嬢様、意地悪な同級生と名作劇場にありがちな登場人物と設定だけど、元々が雑誌連載の小説なだけ、1章が長過ぎず短過ぎず目が疲れず読めた。べったべったな展開ですがまゆみ兄妹が苦労の果てに幸せ(側から見たら十分恵まれている環境で...

両親を亡くした薄幸の兄妹、手を差し伸べる家庭教師、居候先のお嬢様、意地悪な同級生と名作劇場にありがちな登場人物と設定だけど、元々が雑誌連載の小説なだけ、1章が長過ぎず短過ぎず目が疲れず読めた。べったべったな展開ですがまゆみ兄妹が苦労の果てに幸せ(側から見たら十分恵まれている環境ですが)になるのか気になってついつい電車でも読み耽りました。ラストは資産運用に失敗した名家出身と判明し、おまけにご都合良く叔母が出てきて元の鞘に収まりましたで終了。娯楽に溢れている令和の世でも十分楽しめたから戦時中や戦後まもない女学生にとっては、正に親兄弟より推ししか勝たないと拝むくらい命の源だったのでしょうね。今年は古き良き本が復刊相次いでるのでお財布は辛いですが嬉しい悲鳴です

Posted byブクログ