自己家畜化する日本人 の商品レビュー

池田清彦(著者)

2024/07/01

「家畜化」が否定的なニュアンスで語られるが、「野生化」を考えてみると、それはトマスホッブズの「万人の万人に対する闘争」状態であり、法に従い、教育を受け、労働を提供し、食を得て繁殖をする、という理性的なサイクルの状態が「家畜化」であると言える。18世紀末、人間は他のどんな動物よりもはるかに家畜化された種であるとドイツの人類学者であるヨハン・フリードリヒ・ブルーメンバッハが提唱したが、それはつまり、人間が最も「理性的」である事を示す。

それでは、「家畜化」の否定的な面とは何なのだろうか。著者は「現行の教育制度が強固に残っている限りは、日本人の自己家畜化の促進は避けられそうもない」と述べる。現行の教育制度が問題だと言っているが、これはつまり「従順すぎる」という事に尽きる。家畜と野生の両極で捉えるのではなく、家畜と支配という両極で捉えた場合に、否定的な側面が生まれていくという事だ。「自己家畜化」には「自己飼い主化」という存在も同時に発生する。この関係性に否定的な面が存在するというのが著者の言いたい事だっただろう。「飼い主に対して、従順すぎる」というニュアンスを込めて「家畜化」を否定的に表現している。

既得権益がはびこっていて、そこに自らも参加しているならば、制度や体制に対して従順になるのは処世術とも言える。都知事選で何かが変わるのか、変わらないとすれば、その事は「家畜化」の証左ではないか。その「家畜化」が良いニュアンスか、悪いニュアンスかは、個人の置かれた状況や損得による、というわけだ。大勢としての合理性が損なわれた時に、大衆が力を合わせて何か行動を起こせるのかが重要であり、非合理性に対して大衆が無力なのならば、そこはじわじわとガスが充満する収容所と言えなくもない。

ー　人の自己家畜化に影響を及ぼす可能性がある技術として、AIと並んで考えられるのは、ゲノム編集技術。2020年にノーベル化学賞を受賞したゲノム編集技術CAS9 はハンチントン病のような遺伝性の難治性脳疾患やアルツハイマー型認知症といった長期にわたり、病勢が進行するような脳疾患に対する新たな治療薬として実用化される可能性がある。

オオカミが犬化する事により、形態が多様化して、本来の生息環境では適応できない形態にも改変することができ、年に1回の出産から、周年繁殖に変わった。身体においても、人間は家畜化していく。相互に「都合の良いもの」になっていくのが家畜化ならば、そのバランスを如何にコントロールするかという事が課題だ。

2023/11/09

現代の日本人はシステムや権力に従順で、逆らわないことや意見を抱かず、社会のシステムに乗って生きることが最も心地良く安定した人生になるとのこと。確かに選挙の投票率は低く、政治的関心は薄い。目先の生活に直結する批判しか出来ず、国家や社会の将来について考える人は少ない。

むしろ何か意見を持つと、意識高い系と変な目で見られる兆候もある。そして大多数が求める（もとい、理解できる）低俗な娯楽や言動だけが賛同される。ユーチューブやSNSで日々発信されている大部分の内容が、筆者にはそのように見えるのだろう。

このような状態を精神的な自己家畜化が極まった状態と称し、自己家畜したヒトで溢れるこの国は「バラエティ番組」とのこと。なかなか痛烈な言葉で指摘している。我々はローマ時代の「パンと見せ物を求める」堕落した群衆と同じなのだろうか。

情報を取捨選択し、自分の言葉で考え意見をまとめ、仲間と議論するというシンプルな取り組みを続けることが大事だと思う。

なかなか歯切れの良い言葉で批判しているが、この本では散々煽っておいた挙げ句突然終わるので、星3の評価とさせて頂いた。

2023/10/02

日本人が家畜化はちょっと違和感。日本人は元来家畜寄りな人種と思う。家畜の反対は野獣。野獣派より家畜派のほうが多いはず。著者の主張を参考に考えたいので読みたい

#自己家畜化する日本人
#池田清彦
23/10/2出版

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