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書架の探偵、貸出中 の商品レビュー

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2024/01/04
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推理作家E・A・スミスの復生体[リクローン]である「私」は、他2名のリクローンと共に突如他の図書館へ移される。新しい街でチャンドラという少女に借りだされ、彼女の母親から「失踪した夫を探してほしい」と依頼された「私」は、海上で消えたというその男の行方を追って冒険家のリクローン、オードリーを連れて船に乗り込むが……。ジーン・ウルフの遺作となった、『書架の探偵』の続篇。 作者が亡くなって未完というのが無念。原文は長篇として整備する前の文章なようで、伏線なのか矛盾点なのか判断がつかない箇所に訳註がついている。展開も飛び飛びで、特に後半、前作からのびっくりガジェットである星間移動ドアが再登場して刑事となんやかんやするあたりから頭がこんがらがった。 引き続き語り手を務める「私」はだいぶ人間味が増していて、チャンドラがうろちょろするなかでオードリーとベッドに入る機会を窺ったり、氷河から蘇った美少女に性欲を感じたりするようになっている。登場する女性リクローンたちも料理研究家、ロマンス小説家、海洋冒険家と個性の違いが魅力的で、ざっくばらんな話し方をする彼女たちに推理作家らしいもったいぶった話し方しかできない「私」がコンプレックスを抱くのが面白い。 ただ、事件にスミスの著書が絡んでいた前作に比べ、今回は人間の探偵を雇う余裕がないから推理作家のリクローンを借りたという設定になっていて、「私」が選ばれた必然性が薄い。でも本当だったら結末で明かされる繋がりがあったのかも。 もうジーン・ウルフの新作は読めないと思うととても寂しいけれど、私にはまだまだ読んでない作品がたくさんあるし、本書も含めて彼の作品は一度読んだだけでは読みきれない謎がたくさん隠されているから再読もしがいがあるはずだ。最後まで楽しい問題を書き残していってくれてありがとう、ジーン・ウルフ。

Posted byブクログ