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私は命の縷々々々々々 の商品レビュー

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2023/12/10

倫理的生活環模倣技術によって様々な生物の生殖の在り方や生活環を人間に取り入れ、また人間は責任の主体であるため絶滅をしない義務がある。とされている近未来での学園が舞台。主人公はドウケツエビの生態を持っているが、選択すること、にたいして悩んでいた。 それぞれの人間が様々な生物の生態で...

倫理的生活環模倣技術によって様々な生物の生殖の在り方や生活環を人間に取り入れ、また人間は責任の主体であるため絶滅をしない義務がある。とされている近未来での学園が舞台。主人公はドウケツエビの生態を持っているが、選択すること、にたいして悩んでいた。 それぞれの人間が様々な生物の生態でもって産まれ、幼少の頃は親にあたる人物に育てられ、子どもの時期になると等しく学園へ入学し卒業とともに生活環(生殖)を選択する。学園生活のなかで出逢った先輩を中心に、友人、先生を通して自分を見つめていく。 義務や責任といったもの、また生まれてきた、生きていることにたいして何者かでなければならないという重荷をすっとはずしてくれる。次の世代につなげていく、ということに関しても、それを選択しないという選択をすることにも優しく肯定してくれるようで気持ちが楽になる。 思弁SFと謳っているように読んでいて漠然と難しいという気持ちになるけれど、それと同じように漠然と一緒だという安心感もある。 読んでいて思い出した感覚。高校生の頃にうっすらとこの状態がずっと続けば良いのにと思っていた。小学校、中学校よりも庇護の対象であることが薄くなり、だからといってまだ責任や義務の度合いが高くない年齢。ちょうど中間にいるこの時期が延々と続けば良いのにと。 たぶん私も、美術部にいた子や間(アイ)と同じだろうなあと思うし、大人になった今では倫理科の先生の気持ちが分かる気がしている。 話と繋がっている部分でいえば制服がとても魅力的。本当にこういう制服があったらさぞかし素敵だろうなあと。思弁服(ミミクチュール)といわれるこの制服は、最初はシンプルなつくりなのだけれど、それぞれの思考や環境によって徐々に形作られていく。この思弁服もまた物語のなかで大事な役割をはたしていく。 p138からp147までの場面がとても好き。私自身が初夏の草木やその周りの青々しい匂いがすごく苦手(むせ返るほどの生命を感じて)というのを読んでいて思い出したりもして、なのになぜか好きな場面。 帯に恋愛と書いてあるけれど、私はいわゆる「恋愛」みたいなものを強く感じなくて、じゃあここで書かれている人々の感情はなに?と言われるとちょっと困るのだけど。言葉にして伝えるのが難しくはあるけれど、そこも含めてとても素敵な本だった。

Posted byブクログ