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チリンのすず の商品レビュー

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2024/01/25

アンパンマンなどの作者さんで知られる、やなせたかしさんのほのぼのとした絵本、と一見みえる作品ですが 描かれているのは、はっきりと暴力と“報復”の話です 暴れものの狼のウオーに、お母さんを殺されてしまった、ひとりぼっちの羊の子チリンが、仇をとるために当の狼ウオーに弟子入りをし、狼に...

アンパンマンなどの作者さんで知られる、やなせたかしさんのほのぼのとした絵本、と一見みえる作品ですが 描かれているのは、はっきりと暴力と“報復”の話です 暴れものの狼のウオーに、お母さんを殺されてしまった、ひとりぼっちの羊の子チリンが、仇をとるために当の狼ウオーに弟子入りをし、狼に鍛えられ育てられる、という話です 狼がチリンの慕う演技を真に受けてとても喜ぶところ チリンが強くなるための修行にはげみ、羊とも狼ともつかない不気味な姿に変わってしまうところ そしてついに復讐を果たした時に、狼ウオーが告げた言葉… 全編が辛くやるせない出来事ばかりで、救いは全くない話です でもこの話が伝えているのは、何かを憎む気持ちを否定することではなく 何かを憎む気持ちを一番に生きることは、己を怪物に変えてしまうこと、復讐を果たしても、そこに残るのはひとりぼっちの怪物だけ 憎む気持ちは、大きな代償を支払わなければいけないのだと、それをする覚悟はあるのかと、訴えているのだと思うのです ウオーといた頃の怪物のような姿のチリンは、見方によってはとても幸せそうに見えたことや、復讐を果たしたチリンがウオーを失ったことを泣いていることも、全部悲しくてたまらないのです チリンはどうすれば良かったのか? ウオーと一緒のままでいれば良かったのか? それとも、ウオーとは接しないまま、小さな子羊のままでいれば良かったのだろうか? あるいは復讐を果たせた事は、ある意味幸せだったと解釈するのが良いのだろうか… 本を閉じる前の巻末にある、チリンの小さな頃の姿があまりにも悲しい作品です

Posted byブクログ