チリンのすず の商品レビュー
2024年11月26日(火)朝学 5年A組 読む前に、やなせたかしの絵本を4冊見せてから、「今日読みたい本の作者の絵本です」と話すと、「アンパンマンを描いた人や!」「知ってる絵本!」と子どもたちから次々と声が上がりました。 『やさしいライオン』は知ってる子もいましたが(去年読んだ...
2024年11月26日(火)朝学 5年A組 読む前に、やなせたかしの絵本を4冊見せてから、「今日読みたい本の作者の絵本です」と話すと、「アンパンマンを描いた人や!」「知ってる絵本!」と子どもたちから次々と声が上がりました。 『やさしいライオン』は知ってる子もいましたが(去年読んだクラスの子たち)、あまり知られていないものを選んだことを伝え、この本を読み始めました。 このお話は、読み進めていくと、「あれ?」と感じるところが多々あります。 狼に襲われたとき、チリン(主人公の子羊)がお母さんのお腹の下にいて助かっており、聞いていた子どもから「狼に食べられへんだんや」と声が上がりました。 また、声とはなりませんが、「子羊が、食べられるかもしれない狼の所へ弟子になりにいくかな?」「すずが鳴るたびに恐ろしがられるようになってる」「弟子にしてもらったのに、狼を殺してしまう」など、疑問を持ったりしながら聞いていたようでした。 死ぬ前の狼の、「いつかこんな日がくるかと思っていた。おまえで、よかった」という言葉を、子どもたちはどう受け止めたでしょうか。 切ない思いが残る絵本ですが、やなせたかしの違った世界を知って、作者自身に関心を持ってもらえたら...と思います。 (読み手:H)
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アンパンマンなどの作者さんで知られる、やなせたかしさんのほのぼのとした絵本、と一見みえる作品ですが 描かれているのは、はっきりと暴力と“報復”の話です 暴れものの狼のウオーに、お母さんを殺されてしまった、ひとりぼっちの羊の子チリンが、仇をとるために当の狼ウオーに弟子入りをし、狼に...
アンパンマンなどの作者さんで知られる、やなせたかしさんのほのぼのとした絵本、と一見みえる作品ですが 描かれているのは、はっきりと暴力と“報復”の話です 暴れものの狼のウオーに、お母さんを殺されてしまった、ひとりぼっちの羊の子チリンが、仇をとるために当の狼ウオーに弟子入りをし、狼に鍛えられ育てられる、という話です 狼がチリンの慕う演技を真に受けてとても喜ぶところ チリンが強くなるための修行にはげみ、羊とも狼ともつかない不気味な姿に変わってしまうところ そしてついに復讐を果たした時に、狼ウオーが告げた言葉… 全編が辛くやるせない出来事ばかりで、救いは全くない話です でもこの話が伝えているのは、何かを憎む気持ちを否定することではなく 何かを憎む気持ちを一番に生きることは、己を怪物に変えてしまうこと、復讐を果たしても、そこに残るのはひとりぼっちの怪物だけ 憎む気持ちは、大きな代償を支払わなければいけないのだと、それをする覚悟はあるのかと、訴えているのだと思うのです ウオーといた頃の怪物のような姿のチリンは、見方によってはとても幸せそうに見えたことや、復讐を果たしたチリンがウオーを失ったことを泣いていることも、全部悲しくてたまらないのです チリンはどうすれば良かったのか? ウオーと一緒のままでいれば良かったのか? それとも、ウオーとは接しないまま、小さな子羊のままでいれば良かったのだろうか? あるいは復讐を果たせた事は、ある意味幸せだったと解釈するのが良いのだろうか… 本を閉じる前の巻末にある、チリンの小さな頃の姿があまりにも悲しい作品です
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