1,800円以上の注文で送料無料

貴婦人Aの蘇生 新装版 の商品レビュー

4.5

2件のお客様レビュー

  1. 5つ

    1

  2. 4つ

    1

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2024/12/01

窒息しそうなほど切ない気持ちになった。 生きることの健気さや悲しさを感じるたびに、切なさが喚起された。 切ない場面は、数えきれないほど散りばめられている。 しかも、そのほとんどが実に醜い描写の場面だ。 例えば、痩せた老女の洗練されていない仕草。 太った中年男のむさ苦しい容姿。 野...

窒息しそうなほど切ない気持ちになった。 生きることの健気さや悲しさを感じるたびに、切なさが喚起された。 切ない場面は、数えきれないほど散りばめられている。 しかも、そのほとんどが実に醜い描写の場面だ。 例えば、痩せた老女の洗練されていない仕草。 太った中年男のむさ苦しい容姿。 野性動物の剥製が手荒く扱われて傷む様。 不思議なもので、醜ければ醜いほど、切なくなった。 その切なさは、同情や憐れみとも微妙に異なる。 むしろ慈しみに近い。 人間の愚かさや弱さが愛しくなる。 また、この作品には嘘も多い。 けれども、読み進めるにつれて、嘘はどうでも良くなる。 事実よりも大切な物があるかもしれない、と思うようになり、それを優先する時間があっても良い気がしてくる。 醜さや嘘を越えて、もしくは虚構の中にいて、登場人物が初めて気づく感情というものがあった。 それが決して悪くはなく、むしろ心の成長、脱皮にも思えた。 事実がもっとも重要とは限らないのだと感じた。 2016年2月9日読了

Posted byブクログ

2024/01/31
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

小川洋子の文章は、基本的にクールに硬質に淡々と続く(解説 藤森照信) その小川洋子の文章が素敵。 結末は「博士の愛した数式」とか「ことり」とか読んでいるとそうなるなーと思うけれど、どの作品も悲しみよりも優しさが残る感じが好き。

Posted byブクログ