現代ロシア政治 の商品レビュー
定期的に基礎に振り返る一環として、新版で発刊された本書を読んでみた。全体として教科書的であまり頭に入ってこない内容ではあるが、執筆者によっては、論文形式でテーマもはっきりして興味深く読むことができた。そうした観点から個人的に面白かった章は、松嵜先生の第2章、長谷川先生の第3章、油...
定期的に基礎に振り返る一環として、新版で発刊された本書を読んでみた。全体として教科書的であまり頭に入ってこない内容ではあるが、執筆者によっては、論文形式でテーマもはっきりして興味深く読むことができた。そうした観点から個人的に面白かった章は、松嵜先生の第2章、長谷川先生の第3章、油本先生の第5章、大串先生の第6章、安達先生の第7章、長島先生の第9章であった。 第6章の議会政治において、露下院が第4期頃から「ラバースタンプ」の様相を呈していたとされるが、2022年の大統領への請願の事例から、議会に執行権力内の対立が持ち込まれる可能性を論じているのは興味深い。ただし、同事例はある意味で異例な気もするので、議会の特性として使用していいかは若干疑問。また、ロシア・ウクライナ戦争に至る道に関するコラムで、クリミアとドンバスに主体性を持たせる立場をとる意見はどうしても共感できなかった。第6章が面白かっただけに残念。 以下、備考 ・【p.23】ペレストロイカの一環でゴルバチョフは議会制民主主義とソ連の大統領制を導入し、最高意思決定機関を共産党の政治局から大統領府に移転 ・【p.31】1991年8月に、ソ連政府要人らによる「八月政変」生起。これを契機に各共和国はゴルバチョフが進めた連邦条約をやめ、離脱独立路線へ ・【p.37】1992年初頭からの急速な市場経済化を目指して断行された「ショック療法」は財相や首相臨時代行を務めたガイダルが主導 ・1991年5月に露共和国大統領を、7月に大統領を補佐する共和国大統領府を設置。また、1990年12月のソ連安全保障会議の創設に倣い、1991年4月に露共和国安全保障会議が設置。初代書記はスコーコフ ・【p.38】1993年9月、エリツィン大統領が議会との主導権争いの末、議会機能を停止する大統領令に署名。これに対し、ハズブラートフ議長とルツコイ副大統領が議会に籠城して対抗したところ、エリツィンが軍に議会への攻撃を指示(十月事件) ・1993年12月12日、国民投票を経て新たに制定された露連邦憲法は、執行権力を大統領と政府議長(首相)で分掌する半大統領制を採用 ・【p.42】エリツィン政権は、総じて中央地方関係だけでなく、大統領−連邦政府−議会関係の不安定性が際立つ。支配の不在により各種アクター間の競争性が観察される状態といえる。 ・プーチンは、地方分権化に特徴づけられるエリツィン時代の中央地方関係を抜本的に見直し、憲法体制の安定化を図る。例えば、7つの連邦管区を定め、各管区に「お目付け役」の連邦管区大統領全権代表(だいたいシロヴィキ)が派遣 ・【p.44】2004年9月のベスラン学校占領事件を受け、連邦構成主体首長(地方知事)の選出方法が大統領による事実上の任命制が導入 ・【p.58】1993年以降の大統領・議会・連邦政府の関係 ・【p.65】憲法改正手続きпересмотр(改正:一度もない)、поправка(修正:08年、14年、20年に実施)、изменение(変更) ・【p.97〜】2003〜2007年の第4期下院から所謂「ゼロ読会」が開始 ・【p.114】2007年に「国家コーポレーション」という特殊法人が相次いで設立。形式上は非商業組織だが、営利組織を子会社に抱えて実質的にビジネスをする国策会社。株式会社でないため、民法典による規定が当てはまらず、会社法が定める法人のような説明責任は要求されず。国家コーポレーションの総裁は大統領が任命。ex. ロクテク、ロスアトム ・【p.115】「5人組」は、ロスネフチのセーチン、ロステクのチェメーゾフ、アエロフロートのイワノフ、ロシア鉄道のヤクーニン、ガスプロムのミレル ・【p.118】露の企業と国家との関係は「罰の保留状態」
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